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友達⑥
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何だか、どっと疲れた。
結局、あのリメイクドレスはナタリアが持ってる。わざわざお見送りしてくれたキスティ夫人には、礼儀としてご挨拶した。
もう、会うことはないだろうけど。
何のためのお茶会だったか分からなくなってしまった。こういったお茶会は情報合戦と、社会的な繋がりを欲するためのもの。ただ、呑気にお茶飲んでお菓子食べて終わるようなうちうちのお茶会は、ごく限られている。
まあ、ティアラ・ローザについて少し分かったからいいかな。時々生物学上の両親が、懐かしそうな顔をする理由も分かったしね。
「では失礼します。本日はお招きありがとうございます。オブリィ様の無事のご出産をお祈りします。キスティ夫人、ごきげんよう」
びしばしされたカーテシーでご挨拶。
「こちらこそお出でいただきありがとうございます。無事に産まれて顔見せの会には是非お出でください」
きっと義理ね、義理で言っているだけ。
顔見せ会ってのは、貴族の家で赤ちゃん産まれたら、生後3ヶ月くらいで御披露目するお祝いがある。ちなみに、ウィンティアはやってない。
「ありがとうございます」
義理で返事。
どうせ、呼ばれない。理由はいくつかあるが、最大の理由はキズがあるのはこういった晴れ舞台に相応しくないと、避けられる傾向があるからね。男性ならともかく、女性のキズは嫌がられる。
私は馬車に乗り込み、大人しく背もたれに身体を預ける。
馬車が進みだして直ぐに。
「ウィンティア嬢、先ほどのあれはどういう事でしょうか?」
バトレルさんが咎めるように聞いてくる。私の隣のナタリアが心配そうに見てくる。
「どの事?」
「『私から離れていきますよ』ですよ。貴女はまだレオナルド様を信じられないんですか?」
ああ、その事。
レオナルド・キーファーが他の誰かに心変わりして離れると思っているんだろうね。
実際は私が、山岸まどかがいなくなって、ウィンティアが戻り、その違和感からレオナルド・キーファーが離れる、だ。
誤魔化しが効くわけないけど。
「いずれ、そうなる。そうなれば、新しい相手が私の立場に入れ替わるだけでしょう」
びきっ、とバトレルさんの顔がひきつる。
「だからどうしてそうなるんですか? 何故、レオナルド様のお気持ちを察しないですか?」
「バトレルさん、頭いいのに、バカですね。人の本当の気持ちなんて他人はどうあがいてもわかりっこないでしょ。当人ですら判断つかないときあるのに」
我ながら嫌な言い方。
「ウーヴァ公爵は貴女を、アンジェリカ様の養女の枠まで考えて」
「それは私がレオナルド・キーファー様に、シルヴァスタから生きて帰って来ると言う気持ちを抱かせたからで、私はそれだけの存在価値です。いずれ、シルヴァスタからお役目終えて帰って来たら、私はお払い箱でしょう」
はあ、と私はため息。
自分でハッキリ言葉にすると、先日の公園デートであった穏やかな雰囲気が嘘臭くなってきた。
ウィンティアとの婚約を望んだのだって、あの鉄柵越しの出会いと、ヴァレリーに対する啖呵が原因だし。時間が経てば熱も覚めていくはず。
シルヴァスタに行っていろんな人と会って見聞を広げたら、ウィンティアを忘れるか、足枷に思わない? 私は別にいいけど、そうなればウィンティアの名前にキズがつく。それは嫌だな。
「そうなれば、レオナルド・キーファー様は新しく準備された令嬢と一緒になるか、他の誰かを選ぶでしょう。そうなれば、私は消しても問題ない存在になります。レオナルド・キーファーを大事にしているウーヴァ公爵なら、そうするでしょうし」
実際、そうなるだろう。
レオナルド・キーファーは私、山岸まどかの啖呵が気に入ったみたいだけど、いずれ貴族として生きるなら、私みたいな貴族の常識にかける女は避けるだろうし。
「私は最後には、選ばれないって事です」
知らずに、右眉のキズを触っていた。
すると、バトレルさんはため息。
「ウィンティア嬢の考えている事が分かりません」
「奇遇ですね。私もバトレルさんが今考えている事がわかません」
結局、あのリメイクドレスはナタリアが持ってる。わざわざお見送りしてくれたキスティ夫人には、礼儀としてご挨拶した。
もう、会うことはないだろうけど。
何のためのお茶会だったか分からなくなってしまった。こういったお茶会は情報合戦と、社会的な繋がりを欲するためのもの。ただ、呑気にお茶飲んでお菓子食べて終わるようなうちうちのお茶会は、ごく限られている。
まあ、ティアラ・ローザについて少し分かったからいいかな。時々生物学上の両親が、懐かしそうな顔をする理由も分かったしね。
「では失礼します。本日はお招きありがとうございます。オブリィ様の無事のご出産をお祈りします。キスティ夫人、ごきげんよう」
びしばしされたカーテシーでご挨拶。
「こちらこそお出でいただきありがとうございます。無事に産まれて顔見せの会には是非お出でください」
きっと義理ね、義理で言っているだけ。
顔見せ会ってのは、貴族の家で赤ちゃん産まれたら、生後3ヶ月くらいで御披露目するお祝いがある。ちなみに、ウィンティアはやってない。
「ありがとうございます」
義理で返事。
どうせ、呼ばれない。理由はいくつかあるが、最大の理由はキズがあるのはこういった晴れ舞台に相応しくないと、避けられる傾向があるからね。男性ならともかく、女性のキズは嫌がられる。
私は馬車に乗り込み、大人しく背もたれに身体を預ける。
馬車が進みだして直ぐに。
「ウィンティア嬢、先ほどのあれはどういう事でしょうか?」
バトレルさんが咎めるように聞いてくる。私の隣のナタリアが心配そうに見てくる。
「どの事?」
「『私から離れていきますよ』ですよ。貴女はまだレオナルド様を信じられないんですか?」
ああ、その事。
レオナルド・キーファーが他の誰かに心変わりして離れると思っているんだろうね。
実際は私が、山岸まどかがいなくなって、ウィンティアが戻り、その違和感からレオナルド・キーファーが離れる、だ。
誤魔化しが効くわけないけど。
「いずれ、そうなる。そうなれば、新しい相手が私の立場に入れ替わるだけでしょう」
びきっ、とバトレルさんの顔がひきつる。
「だからどうしてそうなるんですか? 何故、レオナルド様のお気持ちを察しないですか?」
「バトレルさん、頭いいのに、バカですね。人の本当の気持ちなんて他人はどうあがいてもわかりっこないでしょ。当人ですら判断つかないときあるのに」
我ながら嫌な言い方。
「ウーヴァ公爵は貴女を、アンジェリカ様の養女の枠まで考えて」
「それは私がレオナルド・キーファー様に、シルヴァスタから生きて帰って来ると言う気持ちを抱かせたからで、私はそれだけの存在価値です。いずれ、シルヴァスタからお役目終えて帰って来たら、私はお払い箱でしょう」
はあ、と私はため息。
自分でハッキリ言葉にすると、先日の公園デートであった穏やかな雰囲気が嘘臭くなってきた。
ウィンティアとの婚約を望んだのだって、あの鉄柵越しの出会いと、ヴァレリーに対する啖呵が原因だし。時間が経てば熱も覚めていくはず。
シルヴァスタに行っていろんな人と会って見聞を広げたら、ウィンティアを忘れるか、足枷に思わない? 私は別にいいけど、そうなればウィンティアの名前にキズがつく。それは嫌だな。
「そうなれば、レオナルド・キーファー様は新しく準備された令嬢と一緒になるか、他の誰かを選ぶでしょう。そうなれば、私は消しても問題ない存在になります。レオナルド・キーファーを大事にしているウーヴァ公爵なら、そうするでしょうし」
実際、そうなるだろう。
レオナルド・キーファーは私、山岸まどかの啖呵が気に入ったみたいだけど、いずれ貴族として生きるなら、私みたいな貴族の常識にかける女は避けるだろうし。
「私は最後には、選ばれないって事です」
知らずに、右眉のキズを触っていた。
すると、バトレルさんはため息。
「ウィンティア嬢の考えている事が分かりません」
「奇遇ですね。私もバトレルさんが今考えている事がわかません」
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