ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
上 下
214 / 338

友達⑤

しおりを挟む
 身構えていたけど、キスティ夫人との話しは穏やかに過ぎていった。
 キスティ夫人から見てのティアラ・ローザに関してはオブリィ嬢より深く分からなかった。
 ただ。

「娘は、貴女がティアラ嬢に似ていると言うけど、私にしたらティーナ様の面影が強いわ」

「祖母の、ですか」

「ええ」

 キスティ夫人はカップを置く。

「同じ親であるもの。ティアラ嬢が亡くなった時の辛さ、理不尽に訴えられたときの歯痒さ、裁判に真っ向から立ち向かう時の毅然とした姿。忘れなれないわ」

 思い出すように話すキスティ夫人。

「ウィンティア嬢の為にあれだけ心血を注いでいた第一線から退いて。結局、あんな結果に。私ね、後悔しているの」

 何に?
 まるで、ウィンティアのせいで、ティーナ・ローザが第一線から退いてしまったと含ませているのに、かちん、としていた。

「何故、ティーナ様と連絡を取り続けなかったか。何故、裁判が終わった後、オブリィが学園を卒業した後も交友していなかったか」

 そうすれば何だったんだろう。
 ティーナ・ローザの毒殺が防げたんだろうか? ウィンティアが二どめのコクーン修道院に保護される事を防げたのだろか。
 あ、違う、この人、謝って、後悔から解放されて、楽になりたいだけだ。
 あ、かちん、としてきた。

「そんなの結果論ですよね。もう祖母は生き返りませんし、私のキズは一生消えないんですから」

 すう、と部屋の空気が凍りつく。

「ふふっ、そうね。全く持ってそうだわ」

 笑うキスティ夫人。だけど、笑っているように見えない。

「ウィンティア嬢、何故、その様に判断されたんですか?」

「キスティ夫人が勝手に後悔して、謝って、楽になりたいだけだと思ったからです」

 私は素直に言葉を放つ。

「そうね、そう取るわよね」

 キスティ夫人が静かに言う。まるで違うんだよ、と伝えたいみたいだけど。私の言葉は確信をついていると思う。

「あのキスティ夫人の罪悪感を払拭したいだけで私が呼ばれたのであれば、もうここで話す必要ってないですよね? オブリィ様も退席されましたし。直接祖母に謝りたいなら墓前に行ってください。後、やはりこのお洋服はお返しします。オブリィ様の赤ちゃん、女の子の可能性だってありますから」

 我ながら、短気だな。
 でも、これ以上はここにだらだらいる必要はない気がする。ティアラ・ローザの事が多少分かったしね、これでいいや。

「そうね、お客様がお帰りよ。そのドレスは貰って頂戴。でもね、ウィンティア嬢、余計なお世話だと思って。私だからいいけど、余所のお茶会でそう言った態度は許さないわよ」

 貴族のお茶会は情報合戦だ。
 ちょっとした事で相手を陥れ、不利な状況を噂し、搾取し、孤立される。

「ご忠告感謝します。ですが、私はこれ以上評判は下がりませんし、もともと一人ですので」

 皮肉よ、皮肉。
 ウィンティアには貴族女性として致命的、顔にキズがあり、コクーン修道院に二度も保護された経歴がある。知らない人にしたら格好の噂の種だ。

「あら? 先日の彼は?」

「彼? ああ、あの人は」

 レオナルド・キーファーね。
 うーん、最近よく、分からなくなる。対応がね。悪い人ではないが、深く付き合うと、結局絆されるだけだし。何より私はいずれウィンティアの中からいなくなる。その時の違和感で、レオナルド・キーファーが離れる可能性が高い。それに内側のウィンティアに対して何度もレオナルド・キーファーについて交信しても、一切の応答がない。
 もしかしたら、ウィンティア、レオナルド・キーファーがタイプじゃないのかもって、思い始めている。
 で、結局、どうなるか、だ。

「いずれは私から離れていきますよ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

交換された花嫁

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」 お姉さんなんだから…お姉さんなんだから… 我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。 「お姉様の婚約者頂戴」 妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。 「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」 流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。 結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。 そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

魔法のせいだから許して?

ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。 どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。 ──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。 しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり…… 魔法のせいなら許せる? 基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。

婚約破棄? 五年かかりますけど。

冬吹せいら
恋愛
娼婦に惚れたから、婚約破棄? 我が国の規則を……ご存じないのですか?

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

処理中です...