ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

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未来の一つ⑧

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「もしかして、こちらのご令嬢がお前の『ミルクティーの君』か?」

「はい?」

 なにそれ?

「あ、あのグレン伯爵、彼女はですね」

 慌てて何か弁解しようとするレオナルド・キーファー。ちょっと待って、まさかこの人、私の事をそんなふうに回りに言ってたの? ウィンティアの年齢的に公表は控えているし、何より保留の関係なのに。じとめでレオナルド・キーファーを見る。

「あいでっ」

 突然、グレン伯爵と呼ばれた五十過ぎた男性が悶絶。
 小柄なご婦人なギリギリと足を踏んでる、ヒールでね。

「ごめんなさいね、デリカシーのない主人で。デートのお邪魔なんで無粋ですわよ、あ、な、た」

 ギリギリ。

「痛いっ、痛いっ、骨が折れるっ」

 ギリギリ、容赦ないね、このご婦人。

「この手の話をするのは女の特権ですのよ。むさい還暦間際親父は引っ込みなさいね、あ、な、た」

「はいはいっ、ごめんなさいっ」

 やっと解放されてる。

「あ、いてて。だって堅物レオナルドが女の子連れてたら、そうじゃないかと、あいだだだだっ」

「おほほほほほっ、ごめんなさい」

 次は耳をギリギリつれられてる。完全にかかあ天下だ。

「レオナルド・キーファー様、お詫びにこちらのご令嬢を我が家にご招待したいのですが?」

 え? 我が家って? このギリギリ容赦ないご婦人のおうちに?
 どうしたものか? このご婦人、悪いかたではないようだけど。
 ちら、とレオナルド・キーファーを見ると、こそっと耳打ちされる。
 あ、それならいいかな?
 私は了承。

「でしたら、私の後見であるウーヴァ公爵を通していただけたら」
 
 ルルディ王国の貴族でトップにたつウーヴァ公爵なら、誰が有益で、誰が害意を持って私やレオナルド・キーファーに接するか判断できるだろうしね。

「承知しました。ではその様に。改めましてご挨拶を」

 すっ、と自然にカーテシーをするご婦人。仕草がとても綺麗だ。耳をギリギリされていた男性も一礼、あら、格好いい。

「グレン伯爵家当主ゴードン・グラフと申します。こちらは、妻のキスティです」

 丁寧にご挨拶してくる、さっきまで耳ギリギリされてたに。

「初めまして、ローザ伯爵家次女、ウィンティア・ローザです」

 私もカーテシー。これでいいはず。だって昨日ナタリアと練習したもん。
 そこで、グレン伯爵とはお別れして、馬車に乗り込む。
 さて。

「キーファー様、『ミルクティーの君』ってどういう事ですか?」
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