ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

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未来の一つ⑤

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 アンジーから数日後。再来週には学園の寮に戻る。あれから、クラス委員長のロッティさんが母親と一緒に会いに来てくれた。無事を確認してから、教室で待っていると言ってくれた。嬉しい。
 リメイクの済んだ元アンジェリカ様のドレスが来た。明日、ウーヴァ公爵が組んだレオナルド・キーファーとのデートだ。
 ナタリアが丁寧に髪を手入れしてくれた。ヴァレリーは、なぜかぶすー、としてる。

「お嬢様、あいつとデートするんですか?」

「こらヴァレリー」

 ナタリアが、め、する。

「仕方ないよ。ウーヴァ公爵には逆らえないし。今後の事を考えたらね」

 アデレーナを叩き、キャサリンをどうにかするには、ウーヴァ公爵の力がいる。
 それに、そのうち、収まる所に収まる。ルルディ王国の天下にいるウーヴァ公爵のアンジェリカ様の次の跡取り候補のレオナルド・キーファー。そのうち、条件のいいご令嬢が出てくるはず。

「何時かそうなるよ」

「そうでしょうか? キーファー様はお嬢様にぞっこんな気がしますよ」

 と、ナタリアが丁寧に髪をとかしてくれる。

「ぞっこんって。年齢的にいけないような気がするよ。向こうは二十歳の男性よ」

「私はお嬢様が十二歳であるのかたまに疑問です」

 く、ナタリア鋭い。確かに二十歳の山岸まどかだけどさ。

「当たらずさわらず、やって来るよ」

 ものすごく嫌われたら、いけないからね。

 次の日。
 レオナルド・キーファーが直接迎えに来た。ニコニコしてる。幻覚かな? 垂れ耳とぶんぶん尻尾が見える。
 私はしっかりナタリアにより準備されて、玄関に向かう。

「ウィンティア嬢、お会いしたかったです」

「先週会いましたよね?」

「長かったです」

 へ、へー。ま、きっとウィンティアがかわいいからだね。
 さ、行きましょ、て事になるが、来ました、存在自体が迷惑女がっ。

「レオナルド様ーっ」

 白いふりふりドレスと揃いの帽子のキャサリンが駆け寄ってきた。
 見た目がお人形さんなので、似合うよ、だけどさ。

「嬉しいですわっ。私、レオナルド様とゆっくりお話したかったんですっ」

 ば、とレオナルド・キーファーの腕に飛び付こうとしたが、あっさり避けられてる。

「さあ、ウィンティア嬢参りましょう。貴女と過ごす貴重な時間を無駄にしたくありません」

 完全にキャサリンを無視している。
 
「レオナルド様、私、ぜひレオナルド様と行きたいお店がありますのよ」

 キャサリンが再びレオナルド・キーファーに飛び付こうとするが、避けられ、私は手をレオナルド・キーファーに取られ、するすると馬車に誘導される。
 そして、ぱたん、とドアが閉められる。
 キャサリン? 外で喚いている。

「レオナルド様っ、私、まだここにおりますわっ」

「出せ」

 一言冷たく言って、私には笑顔を向ける。

「ウィンティア嬢、本日は叔母の見立てのコースですが、何かご希望ありますか?」

「いえ、特には、おまかせします」

 この変わりように、私はちょっと着いていけなかった。
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