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未来の一つ④

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 現実に引き戻される。
 目の前に前のめりのアンジェリカ様。

「ウィンティアさん、妊活って何?」

 アンジェリカ様の食い付きがいい。

「えっと、妊娠活動ですよ、赤ちゃんを迎え入れる為の活動です」

 そんな感じよね。
 す、と立ち上がるアンジェリカ様。何々? 隣に座り、ぐわし、と肩を掴まれる。

「く・わ・し・く、教えてくれるかしら?」

 ひーっ。こわっ。

「まず、母体の、お母さんとなる女性の体調管理? えっと、アンジェリカ様のタイムスケジュールは?」

 詳しく分からないけど、まずは母体でしょ。

「タイムスケジュール?」

「何時起きて、常日頃何を食べてるか、です」

 お仕事されているから、多少は不規則だろうけど。

「この一週間でいいかしら、朝は」

 アンジェリカ様が記憶を引っ張り出す。
 聞きながら、私は唖然とする。

「そんな食生活で、どうやってそのメロンパンを維持しているんですか?」

「メロンパン?」

「あ、失礼」

 こほん。

「まずは、三食きちんと食べること。バランスのいい食事で、早寝早起きですよ」

 そう。知識不足の私ですらそう言いたくなる食生活だ。
 アンジェリカ様は朝は紅茶一杯。お昼はこのアンジーで軽くサンドイッチ、もしくは忙しくて抜く。公爵令嬢としてお茶会にも参加あるが、あまり口にしないそうだ。お茶とお菓子をちょっとね。でもって、夜は遅くまで書類整理、ウーヴァ公爵家のお仕事、夜会への出席、寝るのは深夜。夕飯はまともに食べたり、ワイン一杯だけとつまみをちょっとだけ。で、朝早く起きて、しっかりお風呂に入って支度して、紅茶一杯。
 で、どうしたら、そのメロンパンを維持しているの? 絶対生理不順じゃない?

「でも、今までトラブルにならなかったわ」

「アンジェリカ様、はっきり言いますが、三十過ぎたらがたっと来ますよ」

 ガーンッ

 効果音が聞こえた。

「今はアンジェリカ様は若いからなんとかやっているだけですよ。いいですか? まずは赤ちゃんを迎えたくても為に母体を大事にすること。つまりアンジェリカ様のお身体を大事にすることです」

「……………ウィンティアさん、おいくつ?」

「普通に考えたらそんな生活してたら、身体おかしくなりますよ。まずは栄養管理と、早寝早起きですよっ。それからしっかり月のものの確認、旦那様の絶対的な協力、妊活はすぐに実を結びませんよっ」

 びし、と言ってしまった。あ、いけない失礼だよね。

「分かったわ、ジョナサンとお母様に協力してもらうわ」

 あ、良かった。もしかしたら、あのマリアンナって子が救えるかな。

「これでもし妊娠しなかったらウィンティアさん、貴女がデェビュタント後に私の養女になってもらうわ。そしてユミル学園高等部を卒業したら、レオナルドと結婚よ」

 私は噴き出す。

「け、結婚っ」

「そうよ、何を言ってるの。貴女はレオナルドの婚約者なのよ」

「いや、あの、保留……………」

「諦めなさい、逃さなくてよ。それに、私、貴女が気にいっているんだから」

 パチリ、とアンジェリカ様がウィンクした。
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