ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
上 下
203 / 338

未来の一つ④

しおりを挟む
 現実に引き戻される。
 目の前に前のめりのアンジェリカ様。

「ウィンティアさん、妊活って何?」

 アンジェリカ様の食い付きがいい。

「えっと、妊娠活動ですよ、赤ちゃんを迎え入れる為の活動です」

 そんな感じよね。
 す、と立ち上がるアンジェリカ様。何々? 隣に座り、ぐわし、と肩を掴まれる。

「く・わ・し・く、教えてくれるかしら?」

 ひーっ。こわっ。

「まず、母体の、お母さんとなる女性の体調管理? えっと、アンジェリカ様のタイムスケジュールは?」

 詳しく分からないけど、まずは母体でしょ。

「タイムスケジュール?」

「何時起きて、常日頃何を食べてるか、です」

 お仕事されているから、多少は不規則だろうけど。

「この一週間でいいかしら、朝は」

 アンジェリカ様が記憶を引っ張り出す。
 聞きながら、私は唖然とする。

「そんな食生活で、どうやってそのメロンパンを維持しているんですか?」

「メロンパン?」

「あ、失礼」

 こほん。

「まずは、三食きちんと食べること。バランスのいい食事で、早寝早起きですよ」

 そう。知識不足の私ですらそう言いたくなる食生活だ。
 アンジェリカ様は朝は紅茶一杯。お昼はこのアンジーで軽くサンドイッチ、もしくは忙しくて抜く。公爵令嬢としてお茶会にも参加あるが、あまり口にしないそうだ。お茶とお菓子をちょっとね。でもって、夜は遅くまで書類整理、ウーヴァ公爵家のお仕事、夜会への出席、寝るのは深夜。夕飯はまともに食べたり、ワイン一杯だけとつまみをちょっとだけ。で、朝早く起きて、しっかりお風呂に入って支度して、紅茶一杯。
 で、どうしたら、そのメロンパンを維持しているの? 絶対生理不順じゃない?

「でも、今までトラブルにならなかったわ」

「アンジェリカ様、はっきり言いますが、三十過ぎたらがたっと来ますよ」

 ガーンッ

 効果音が聞こえた。

「今はアンジェリカ様は若いからなんとかやっているだけですよ。いいですか? まずは赤ちゃんを迎えたくても為に母体を大事にすること。つまりアンジェリカ様のお身体を大事にすることです」

「……………ウィンティアさん、おいくつ?」

「普通に考えたらそんな生活してたら、身体おかしくなりますよ。まずは栄養管理と、早寝早起きですよっ。それからしっかり月のものの確認、旦那様の絶対的な協力、妊活はすぐに実を結びませんよっ」

 びし、と言ってしまった。あ、いけない失礼だよね。

「分かったわ、ジョナサンとお母様に協力してもらうわ」

 あ、良かった。もしかしたら、あのマリアンナって子が救えるかな。

「これでもし妊娠しなかったらウィンティアさん、貴女がデェビュタント後に私の養女になってもらうわ。そしてユミル学園高等部を卒業したら、レオナルドと結婚よ」

 私は噴き出す。

「け、結婚っ」

「そうよ、何を言ってるの。貴女はレオナルドの婚約者なのよ」

「いや、あの、保留……………」

「諦めなさい、逃さなくてよ。それに、私、貴女が気にいっているんだから」

 パチリ、とアンジェリカ様がウィンクした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

うたた寝している間に運命が変わりました。

gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。

いいえ、望んでいません

わらびもち
恋愛
「お前を愛することはない!」 結婚初日、お決まりの台詞を吐かれ、別邸へと押し込まれた新妻ジュリエッタ。 だが彼女はそんな扱いに傷つくこともない。 なぜなら彼女は―――

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。

アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。 いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。 だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・ 「いつわたしが婚約破棄すると言った?」 私に飽きたんじゃなかったんですか!? …………………………… たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...