ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには？

未来の一つ①

　世界が白い。
　まさか。

「分岐点ですね」

　来ました白いドレスの神様が。

「な、何の分岐点ですか？」

「ふふふ」

　と、笑う神様。
　手を払うと出ました赤い本。
　それから勝手にページが開く。

　事例九　サーナ・タチ
　被害者　マリアンナ・ウーヴァ　享年十七　死因　刺殺

「ウーヴァ？」

　嘘でしょ？　事例九ってことは、アデレーナの後の事例のはず。まさか。

「アンジェリカ様の娘？」

「いいえ。彼女はシルヴァスタの大公に嫁いだセーラ元王女の孫娘」

　？

「アンジェリカには子供が出来なった。だから、又従兄弟のセーラ元王女の第三子、マーカスを養子として迎えたのです。そしてその娘がマリアンナです」

　そうなんだ。あら、でも、被害者の名前がずいぶん薄い。て、事は？

「流れが変わったのです。貴女の一言で」

「まさか、『妊活』？」

「そうです」

　手を払うと、先ほどのアンジェリカ様と、金髪の背の高い優しそうな男性が。

「彼がアンジェリカ・ウーヴァの婿、ジョナサン・ウーヴァです。外交官として現在カルメンに滞在しています。夫婦間は良好、なのでアンジェリカは子が出来ない悩みも、寄り添ってくれるジョナサンのおかげで立ち直っています」

「なるほど。で、この事例九は、アンジェリカ様に子供が出来れば、回避出来る？　他に被害者は出ませんよね？」

「死者はね」

　被害者はいるにはいるんだ。

「あの神様、以前から気になっていたのですが。アデレーナの件でもそうですが、もしここでアデレーナを阻止したら、ダニエル・フォードとの間に産まれてくる五人の子供達はどうなるんですか？　産まれてこれない？」

「いいえ。産まれる時期や場所は違っても、いずれは産まれます。このマリアンナもです」

　良かった、産まれてくるはずの命がなくなるなんて嫌だし。
　私はサーナ・タチの名前に触れるが、いつもなら胸像的なのが出ない。

「まだ、この事例九のサーナ・タチの母親すら産まれていませんからね。ちょっとめんどくさいシステムでしょ」

　神様が面倒くさいって。

「私の拙い知識が役立つならいいですが。あ、神様、もう一つ」

「はい、なんでしょう？」

「神様は『七色のお姫様　ゲスな恋をあなたと』やり込んでますよね？　キャサリンの新ゲスルートのキャラクターの一人はアサーヴ殿下ですよね？　他の二人は？」

　そう、キャサリンにゲームの知識が中途半端にあると確信したのが、アサーヴ殿下のあの一言だ。

「ええ、そうです。ですが、あれはあくまでゲーム。現実ではありません。実際そうでしょう。貴女が思っているように、キャサリンには中途半端なゲームの知識があります。それをキャサリンは自分に言いように解釈しているだけ」

　やっぱり。
　キャサリンにはゲームの知識があるが、中途半端にプラスされてあの人の話を聞かない、都合の悪い事は抜け落ちる性格が混ざり、ああなってるんだ。
　いい例がテヘロンでの騒ぎだ。
　本来ならローザ伯爵連座で斬首されてもおかしくない状況だったのに。

「なら、後の二人は存在しない？」

「ええ、ヒントになる人物はいますが、ほとんどシナリオライターが描いたほぼオリジナルキャラクターです。酷似しているのが、テヘロン王国のアサーヴだけ」

「なら、キャサリンの狙いはアサーヴ殿下になるんですね」

「そうですね。新ゲスルートに入り、アサーヴを攻略すると、テヘロン王国の王妃になり、国母となるのです」

　……………………………やっぱり。ゲスだゲスだと思っていたが。
　ゲーム内でウィンティアを自殺に追い込んでレオナルド・キーファー奪い、結婚式まで挙げてるのに。
　だけど、分からない点が。

「確か、アサーヴ殿下は第二王子で、第一王子がいますよね？」

　そう。アサーヴ殿下は王位継承権があるが、あくまでも第二のはず。