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舞台は整う①

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 アンジェリカ様のルルディ王国貴族間のパワーバランスについての抗議は終わる。
 頭パンクしそう。
 今日は上位貴族、公爵、侯爵、辺境伯についてだけど、ほとんど正室派だった。やっぱり外交や国内の公務をきちんとこなすエリザベス妃殿下を押すわな。モニカ妃殿下は、父親があの先代シルヴァスタ国王というメリットとエリザベス妃殿下より先に男児を生んだ事しかないから。
 ただ、いくつもの情報操作や箝口令により、判断材料がないのが、伯爵以下の家だそうだ。男爵、子爵、伯爵ね。でも半数は中立派で、これは次の王太子が誰になるかで動くようだ。下手に先走ると、もしモニカ妃殿下とロナウド殿下の立場が悪くなったら、自分の家にも火の粉が降りかかるから慎重になってる。
 圧倒的に正室派だ。

「疲れたでしょう、さ、お菓子を召し上がれ」

 と、アンジェリカ様がクッキーのお皿を示してくれるのでポリポリ。

「もうすぐお母様もお戻りになるわ」

 セシリア・ウーヴァ女公爵はもともと本日は、親しい方のお茶会にご招待されて、午後からお出かけしている。

「それから貴女の事を話すわ」

「私?」

「そうよ。貴女のお姉さんの事よ」

「キャサリンですか」

 モニカ妃殿下が強烈で忘れてた。
 お茶とお菓子を頂いて、お手洗いもかりて、待つとセシリア・ウーヴァ女公爵が帰って来た。お洒落で品のあるなレースがあしらわれたワンピース姿で現れた。

「お帰りなさいませ、お母様」

「戻りました。ローザ夫人、ウィンティア嬢お待たせしたわね」

「「いいえ」」

 セシリア・ウーヴァ女公爵は一人掛けのソファーに座る。
 ちら、とアンジェリカ様に目配せすると、目で返事あり。

「では、今からキャサリン・ローザに対する話をしましょう」

 ちら、と生物学上の母親を見ると、無表情だ。

「しばらくキャサリン・ローザは好きにさせます。今後の事を考えて、ローザ夫人よろしくて?」

「はい。キャサリンがデビュタントを済ませた時に話はしています」

 なにそれ?

「デビュタントを終えた後、主人はあることをキャサリンに制約させたのよ。あの子の物欲は凄まじいでしょう? 貴女がコクーン修道院に再び保護された後はまだ、デビュタント前許せる範囲だったのだけど。主人は予感がしていたのよ。だから、誓約書を作った」

 それは、年間キャサリンに使用することが許される額を提示した誓約書。もちろん、日常品や学費、文房具。たまにお友達とカフェに行くだけの毎月のお小遣いは別。また、どうしても必要なもの、例えばお友達へのお祝いの品や、あまりないが急に呼ばれたお茶会で、手持ちの衣装に+する小物とかは申請し、通ればよし。そしてワンシーズン使用する、お茶会と夜会の数着の衣装は、母親監修で準備される。なので、キャサリンが個人的なお買い物できる額だ。
 もし、オーバーしたら、学園卒業後にローザ伯爵に返却なんだって。

「セーレ商会を継ぐと、キャサリンは口によくしていたわ。なら、きちんとした金銭管理が出来るようにと、主人は考えたの。だけど」

「うまく行ってないわけですね」

 ため息をもらす生物学上の母親。

「年間予算を二週間で使いきったの」

 どんだけ?

「ローザ夫人、よろしいかしら?」

 黙って聞いていたセシリア・ウーヴァ女公爵が声を出す。

「はい。公爵閣下」

「その予算オーバーして購入したものと、予算内で購入したものそしてローザ伯爵家が準備した必要なものは分けてあるかしら?」

「はい、公爵閣下。領収書や購入日時は全てファイリングしてあります。その日同行したメイドやフットマンにも日誌を書かせています」

 一応彼らはキャサリンに予算が、と匂わせているが、あれは聞きやしない。

「よろしい。それは続けてちょうだい。いずれ証拠として必要になるわ。それまでローザ伯爵のお財布が痛いでしょうが」

「問題ございません。それで揺らぐローザ伯爵ではありません」

 生物学上の母親の答えに、セシリア・ウーヴァ女公爵は満足そうだ。
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