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新学期に向けて⑩

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「先代シルヴァスタ国王は、自分の持つすべてを使い揉み消し、関係各国各所に根回しに回ったわ。いくら大国の国王とはいえ、相当なダメージだったわ」

 シルヴァスタ国王は、大国だ。ルルディ王国より国土や人口も何倍だし、あちこちに主要産業がある。

「モニカ妃殿下のやったことは、当然死罪に匹敵するものよ。だけどそれだけはなんとか避けたかった先代シルヴァスタ国王は、オーガスト王太子殿下とルルディ王国に対して、かなりの優遇処置をする条令にサインしたわ。そして、その優遇処置と引き換えの一つにモニカ妃殿下を側室に入れたわけ。もちろん、色んな条件付きでの」

 この薬物と既成事実は箝口令が敷かれた。
 先代シルヴァスタ国王は、この件の後、二年後に病気を理由に退位。嘘の病気ね。マラーナ夫人が押し込められている離れに軟禁状態。因みにマラーナ夫人は三年前に亡くなっているそうだ。
 で、条件は。
・エリザベス妃殿下、セーラ殿下、アメリア殿下に害を成さない。
・生活費は本来使われる側室費の半額。ただし、父親、先代シルヴァスタ国王の支援はオッケー。
・形式上側室としたが、自ら側室名乗る事は禁止。もし相手側から聞かれたら、名乗るはオッケー。
・オーガスト殿下のとなりに立ち、公務に立つには、最低限のマナーを得る事、公用語以外にも二ヶ国をマスターすること。これが出来なければ、公務に出ることは許されない。
・もし、モニカ妃殿下が既成事実で懐妊したとしても、その子供の処遇はルルディ王国王家の指示に従うこと。

「他にもあるのよ。もし、モニカ妃殿下が懐妊していなかったなら、セーラ殿下の婚約者に、当時シルヴァスタ王国の第二王子で現在のセーラ殿下の伴侶の。彼に王配としてルルディ王家に入ること、もしエリザベス妃殿下がその後男児を産んで場合は、シルヴァスタの大公として、側室を取らない事なんかね。そして、本来王家が求めて向かい入れた側室ならば、相応の式をしなくてはならないのだけど、国内に発表しただけ。勘のいいものなら訳ありの側室だと分かったはずよ」

 ふう、とアンジェリカ様はため息。

「モニカ妃殿下にしては不満足な側室生活だったと思うわ。今までは先代シルヴァスタ国王の庇護下で我が儘放題だったからね。よく癇癪を起こしていたわ。よくエリザベス妃殿下に突っかったわ『私は男児を産むわ』ってね。その都度ペナルティが発生したわ」

「どうして、突き返さなかったんですか?」

「そう思うわよね。モニカ妃殿下は既成事実で懐妊したのそれがロナウド殿下よ。ペナルティだけど、先代シルヴァスタ国王が自身の不動産と株を動かして得た金銭と、王領で出来た余剰分の穀物を台風被害をあったルルディ王国内の地域に無償提供を続けたわけ。だから下手に返せないわけ。だけどカタリナ様の件もあり、そして今回のレオンハルト殿下の件が重なれば、モニカ妃殿下は側室からだされるわ」

 ああ、レオンハルト殿下のシルヴァスタ王国への留学ね。
 シスター・スロウは正室派と側室派と分かれているって言ったけど。結局、ウーヴァ公爵を筆頭に上位貴族、モニカ妃殿下が簡素に新聞発表しかされなかったのに事情をさっした貴族は正室派。側室派は、モニカ妃殿下がオーガスト王太子殿下に薬物を盛った事なんて知らない下級貴族ばかりだって。
 圧倒的に正室派なんだけど、なぜ側室派が引かないのは、二人の王子の産まれた順番がある。
 ロナウド殿下が産まれた二年後にレオンハルト殿下が産まれた。本来なら第一王子が慣例により王太子になるのだけど。あの問題だらけのモニカ妃殿下から生まれたロナウド殿下は、モニカ妃殿下の悪影響を受けまくり、ザ・傲慢+我が儘+ナルシスト王子に。幼い頃は、ロナウド殿下は、あまり世間に出していなかったから城のなかでやりたい放題。ちゃんとした教育係がついてもまともに受けやしない。しかもモニカ妃殿下まで要らぬ横槍を入れるからすすみやしない。

「オーガスト殿下は、もし、ロナウド殿下に資質があるのであれば、と教育を施したのだけど無駄になったわ。最大の被害者はペルク侯爵だったわ」

 アンジェリカ様はふっと目蓋を伏した。
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