ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

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新学期に向けて③

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 難しい話が始まる。
 まずは弁護士の紹介だけど、合計三名紹介された。
 ウーヴァ公爵家のお抱え弁護士だって。
 白髪頭の高齢の男性は、ゴーン・ボスザ伯爵。穏やかそうだけど凄腕弁護士だって。そうは見えない、優しいおじいさんみたいだけど。でもって、次は中年の男性、こったが怖い弁護士みたいだけど、スティール・ボスザさん。ゴーンさんの娘婿さんだって。もう一人はきりっ、とした女性。わあ、キャリアウーマン、みたいな感じで格好いい。ヒルダ・フット子爵夫人。なんとアンジェリカ様のお友達だって。

「後、私めの事務所に所属する弁護士、補佐人フル稼働しこの案件に対処いたします」

 わあ、大事だあ。
 相手が相手だからね。
 私はおとなしく座るだけ。
 
「ボスザ伯爵には、ウィンティア嬢についても継続してもらうわ」

「へ? 私?」

「そうよ、何を言っているの? 我がウーヴァ公爵もかむと言ったでしょう」

「確かに」

 キャサリンの事ね。

「でも」

 ちら、と生物学上の母親を見る。
 下手したらキャサリンは社会的抹消されるが、いいのかな?

「ウィンティア、心配してくれてるの?」

「まあ、あれでもお腹を痛めた娘でしょうから」

 ふいに、私の手を握っていたアンジェリカ様が力を入れる。

「なんて優しい子なのっ」

 メキメキッ。

「あいたたたたたっ」

「アンジェリカ、落ち着きなさい」

 はい、落ち着きました。

「確かに、キャサリンは私がお腹を痛めた娘よ。でもね、最近とても疲れるの、絶望するの」

 ぽつり、と生物学上の母親が溢す。
 キャサリンに対して絶対的な味方であるはずなのに。
 生物学上の母親は、ぽつりぽつりと溢す。
 テヘロンでの騒ぎの後から、必死にキャサリンの再教育が始まったが、結果はあれだ。
 なら、切り捨てたらいいじゃないのかな? って思ったけど、あんなの野にはなったら、世間様のいい迷惑だし、更なるめんどくさい事になる。誰かに迷惑をかける。それだけは避けたい。それにセーレ商会を守りたい。勤めてくれている従業員、その家族、契約農家、工房とかなりの人達の生活を守る義務がローザ伯爵にはある。
 キャサリンを簡単に切り捨てられないのには、様々な理由がある。まず、キャサリンがお茶会でうまい具合に宣伝した結果、セーレ商会の品々、ティアラ・シリーズや期間限定商品の人気に火がつき、爆売れしたことだ。しかも、他国のご婦人達にまで取り入り大盛況だ。これに関しては凄いと思うよ。
 なので、セーレ商会としても、ローザ伯爵としても、世間的にみたら、甚だしく後見しているキャサリンを簡単に切り捨てられない。
 だけど、トラブルにならない訳ではない。いい例がディミア嬢ね。しかも、私が馬車から飛び降りた事で、セシリア・ウーヴァ女公爵を怒らせたと、現在つま弾きされてしまっている。これでは宣伝もへったくれもない、

「このままなら、セーレ商会の行く末が暗雲。それに、テヘロンでの誓約もあったわ」

 それはキャサリンの再教育を生涯行う事だ。
 これはよほどの大罪を犯さない限り、キャサリンをローザ伯爵家が切り離してはならないと言うのも含まれていた。一生、キャサリンの尻拭いって。
 わあ、きっつう。

「それに関してだけど、先日、テヘロンから連絡が来たの。このままにしていたら、いずれウィンティアの人生を再び踏みにじるような事態になるから、と」
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