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嘘つき⑨

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 ミッションクリアはいいけど、私の中でもやもやしたものが沸き上がる。
 何でこの人、ウーヴァ公爵家の皆様が、無事を願っているか分かってない所だ。
 ウーヴァ公爵に引き取られて10年。何が起きて、どんな関係にあったか私には知り合い得ないが、昨日聞いた感じだと、親身に寄り添っていたように感じる。
 それを分からないままにしていいものか?

「ウィンティア嬢、どうされました?」

「あ、いえ」

 黙ってしまったのを、心配したみたい。
 ご、誤魔化そう。

「えっと、キーファー様、ちょっとお聞きしたい事がありまして」

 へな、と眉を下げてる。本当に情けない顔の大型犬だよ。

「私との婚約を決断したのは、あの時『助けて』と、言った事が原因ですか?」

 そう。
 ウィンティア・ローザとの婚約。ルルディ王国貴族の頂点に立つウーヴァ公爵家の子息が、何故に色々問題を抱えたウィンティアを望んだのか、だ。
 あの時の接触で、レオナルド・キーファーに責任感が沸いての婚約したしか思えない。まあ、ウィンティアはかわいいけどさ。もっと条件のいい令嬢がいたはずなのに。

「責任を感じていらっしゃるのなら、どうか気になさらないでください」

 穏便に、穏便に、婚約解消方向に。
 この人と関わり続けたら、ずっとキャサリンが絡んでくるのが、とにかくめんどくさい。おそらくキャサリンにはゲームの内容が断片的にあるんだと思う。昨日の騒ぎでも、それを匂わせる発言をしていた。
 自分は、ローザ伯爵家の唯一の跡取りだと。
 つまり、ウィンティアにはローザ伯爵家を継ぐ権利は資格がないって事を、がっちり含ませていた。
 ゲームでは、ウィンティアは現ローザ伯爵、ジョージ・ローザの妹、ティアラ・ローザの娘になっていた。ティアラ・ローザは駆け落ちて、ウィンティアを産んだが育てられないとローザ伯爵家に置いていった。仕方なく、ローザ伯爵家の次女として届けた。これはゲームの設定で、実際は違う。ウィンティアはちゃんとローザ伯爵家次女なのだ。だいだいそのティアラ・ローザは生物学上の両親が結婚する前に病死している。
 キャサリンは、それが分かってない。おそらく自分に都合のよいゲームの設定だけを信じているだけ。現実を見ていない、テヘロンで診断された夢と現実の区別がつかない重度の妄想癖ってやつね。
 最大の問題は、新ゲスルートに入るためのイベントとして、レオナルド・キーファーを奪い、ウィンティアを自殺に追い込もうとすることだ。
 流れは変わって来ているが、あのキャサリンが新ゲスルートのキャラクターだと思われるアサーヴ殿下を落とすために、何を仕掛けてくるか予測がつかないから。
 一番いいのは、レオナルド・キーファーと婚約解消し、キャサリンはウーヴァ公爵に絞めて貰うのが一番だと思っている。
 まずは、穏便に、穏便に進める。ナタリア達の件が済まないといけないから。それまでは穏便に、穏便に、ね。

「いいえ、ウィンティア嬢、私が貴女を望んだのは、あの時の事ではありません」
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