ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

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嘘つき⑧

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 なんでいるのよ。
 今日は一日中部屋から出ないように言われてなかったっけ? 今日は生物学上の両親はそれぞれのお仕事で、家を空けている。なので、執事長とメイド長が留守を預かっている。
 そう、行って朝出掛けていったけど、やっぱり出てきたよ。もう、手錠して監禁しないとダメなレベルじゃないのこれ? 監視役のメイドは何やってるのよ。
 ぷりっぷりのレースのドレスを翻したキャサリンは、見ただけなら可憐な少女が頬を染めて駆け寄ってます、と言った感じだ。
 ここ、一応、私の部屋な訳よ。
 勝手に許可なく入ってくる無神経さが理解できない。
 ため息以前に、呆れる。
 キャサリンが、レオナルド・キーファーにたどり着く前に、立ちはだかるのは、従者の人だ。いつもレオナルド・キーファーに付いてくる人。ナタリアがゴシップ紙の記者に絡まれていた所を助けてくれた人ね。あのウーヴァ公爵のいぶし銀の執事さんほどではないが、ザ・執事です、と言った感じの人ね。年は三十くらいかな?

「あらっ、レオナルド様のお付きの方ね、お久しぶりですわぁっ」

「バトレル、御退室願え」

 聞いたことないほど冷たい声に、私はちょっと震える。だって、こんなに穏やかな感じの強いレオナルド・キーファーから出るとは思っていなかったから。どちらかと言うと、どこにでも良い顔する、波風立てない様にしている、そんなイメージなのに。
 あ、これ、もしかしたら、怒っているのかな?
 膝を付いていたレオナルド・キーファーは立ち上がり、腕をかざして、私の視界を遮る。

「きゃっ、レオナルド様ぁっ、どうなさったのっ、私ですわぁっ、お分かりにならないんですかぁっ」

 本当にキャサリンの声は耳に触る。
 きゃあ、きゃあ、とわざとらしい悲鳴を上げて連れ出されていく、どうやら近くのメイドに引き渡されたようだ。
 はあ、本当に騒がしい。
 私は額を押さえる。

「ウィンティア嬢、痛みますか?」

 と、いつもの様子に戻って、私の顔を覗き込んでくる。
 か、顔が近いって。

「だ、大丈夫ですので。近いですって」

 私には、男性免疫はないんだよ。
 レオナルド・キーファーは首をかしげる。

「私は貴女にとって大型犬のようなものでは?」

 あ、根に持ってるっ。
 だってぐずぐずしてたからつい言ったけど、すごく失礼だよねあれ。

「あれは、その失礼しました。すみません」

 謝らないといけないよね。ちょっと近いって。肩を押そうとして、手をそっと握られる。やめてって、恥ずかしいから。

「ウィンティア嬢、私は貴女の犬です」

 言葉が悪い。穏やかに言ってるけど、ダメなやつ。

「あれはですね」

 言い訳しようとして、私はレオナルド・キーファーの顔を見る。
 ……………………………………あ、これ、開き直ってない?
 
「私は貴女との約束を果たすために、このルルディ王国に帰って参ります。少しだけ先伸ばしになることをお許しください」

 ……………………………………ミッションクリアだ。
 なんだか変な感じになったけど、結果よければすべてよし。

「はい」

 多分、この返事に間違いなかったはず。
 ふわあ、とレオナルド・キーファーが笑顔になる。わあ、年相応の青年の顔だあ。
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