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嘘つき③

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 レオナルド・キーファー。
 二十歳、ルルディ王国第二王子レオンハルト殿下の護衛騎士。背は高く、茶色の髪に青い目、バランスの取れた総合的イケメン。
 そう、総合的イケメンなんだが………………

「ウィンティア嬢っ、ご無事でっ、ご無事で良かったっ」

 そうは言ってるが、まるであれだ、何て言うか……………そうっ、叱られる前の大型犬みたいな。しかも少し痩せてる。頬が痩けてるもん。ダメじゃん、身体が資本なのに。
 私が何て言うかびくびくしてる感じ。

「申し訳ありません、私が、あの日っ」

 謝罪が始まった。
 玄関先でやめて。
 はぁ、とため息をつく。びくりと震える大型犬。

「ここではなんなので、中にどうぞ」

 と、ローザ伯爵家内に入る。
 今日はいつも使用している応接間。
 はらはら、と見守るローザ伯爵家使用人達。
 ん? 視線を辿ると、いまだに呆然と佇んでいるレオナルド・キーファー。
 何やってんの?

「入ってもいいんですか?」

 だって。ああ、この人、関係ないのにテヘロン大使館に保護された件に、深く罪の意識を抱いているんだろうな、と思った。だけど、いろいろ話して確認しないといけないことがある。玄関先ではあんまりだし。
 なんだか、あのセシリア・ウーヴァ女公爵の甥なの? すごくびくびくしてる。
 よし、渇を入れないと。

「起こられる前の大型犬みたいな顔しないっ。さっさと来るっ」

 びくうっ、となる二十歳の成人男性。
 私はすたこらいつもの応接間に。勝手に座る。
 おずおずとはいってくるレオナルド・キーファー。その後ろにウーヴァ公爵家の使用人が付いてる。私の監視かな?

「お座り下さい」

「は、はい」

 びくびく気味の大型犬。
 座ったのを確認。

「ウィンティア嬢、その、あの日」

 まだ謝ろうとしている。

「もう、結構です」

 びくうっとなる大型犬。

「あの日の件は貴方に一切非はないはずです。なので謝罪は必要ありません。これ以上謝らないでください」
 
「しかし」

「例えあの日、貴方が時間通りに帰って来たとしても、至る結果は一緒です。お忙しい中、探していただいた事には感謝しています。すぐに存在を明かさずご心配をおかけしました」

「ウィンティア嬢がご無事なら、私はそれだけで十分ですから」

 そう言って、少し顔を上げるレオナルド・キーファー。あら、渇になったかな? お、いい感じかな?

「ウィンティア嬢」

 上げた顔、青い目が、いつもと違う。
 えっ、何? 淀んだよう感じを受ける。違う、ぐらぐらと迷いの目。
 あら? もしかしたら、これが、セシリア・ウーヴァ女公爵が言ってた「死んだ魚の目」か?
 それがウィンティアの記憶をつつく。
 何処かで、何処かで見た事がある。
 何処かで、何処かで。
 この目、何処かで見た事がある。
 右の眉上のキズが痛みだした。
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