ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
上 下
166 / 338

ウーヴァ公爵の事情⑧

しおりを挟む
 レオナルド・キーファーとの婚約は、結局撤回にはならず、そのまま保留だ。キャサリンについては、私には悪いようにはしないって。口約束だけどね。
 私かレオナルド・キーファーに好い人できたら、穏便に解消するのは変わらない。
 それからお茶を持ってきたナタリアと、生物学上の父親が戻ってきた。簡単だけど、これから流れの確認ね。
 まず、ナタリア達の護衛に、ウーヴァ公爵家から数人派遣することになった。名目上は私の護衛も含まれる。もうあんなトラブルはないだろうけど、護衛を付けることで、レオナルド・キーファーが安心するからって。
 話が早く、付いていくのがやっと。

「この資料を隠し持つ警らの者を引き入れましょう。そして、グラーフ伯爵領の助産婦を洗いだし。もちろん実行犯二名の確保もよ。キリール・ザーデクの人柄を語るに必要な人材、ゾーヤ・グラーフの事を詳しくしる人物、そうね、ティーシモンとの関係を知る学生時代の人間を当たりなさい。キリール子爵に長く使えていたメイドがいるわね、彼女もよ」

 次々に指示を出すセシリア・ウーヴァ女公爵。

「ティーシモン・バズルの亡くなった奥方の家族もこちらがわに引き入れよう。彼女は僕の同僚の娘だからね。やっと授かった赤ん坊の為に苦しんでいた彼女を見ながら、ゾーヤ・グラーフと通じていたなんて、許せないからね」

 目が笑ってないハインリヒ様。

「私はそうね。痛い目に合わせる為に、一度社交界に引っ張り出すわ。光を浴びた後に、目も開けられない暗闇に落とさないとね。それとこのアデレーナって子も、おそらく分かっているはずよ。世間が可哀想だと思われないように、お仕置きしないとね」

 アンジェリカ様、怖っ。
 そう、テヘロンの『影』は、アデレーナについても調べてくれていた。
 アデレーナも世間一般では父親が不名誉な亡くなり方をした、可哀想なご令嬢と思われている。
 実際は違うけどね。
 グラーフ伯爵家の跡取り娘、つまり、ゾーヤ・グラーフの一人娘として、その伴侶の座が欲しいと縁談がひっきりなしだそうだ。元々グラーフ伯爵は領地経営が上手く、かなり資産を持っているから、それ欲しさね。なので、アデレーナの回りには男子の影がひっきりなしだ。あのガーデンパーティーや学内のレストランの男子生徒も、グラーフ伯爵家の婿の座が欲しいだけ。まあ、見た目もかわいいのもあるようで、遊び相手に尽きないそうだ。ただ、母親と違うのは必ずフリーの男子だと言うこと。唯一積極的に接触したのは、リーナ嬢のお兄さんだけ。
 ゾーヤ・グラーフが社交界からほぼ追放されているので、まだ十二のアデレーナはちゃんとしたお茶会とかには出れていない。出れてはいないが、非公式な気軽なお茶会で、どうやら既にあちこちで、キリール・ザーデクの悪口を風潮しているみたい。ちょっとした話だろうが、尾ひれがついて、少しずつ無責任に広がっている。

「彼女には自爆してもらいましょう。自分が流し話のしっぺ返しをその身に分からせないとね」

 わざとキリール・ザーデクの悪口を言わせて、その名誉が回復、アデレーナが不義の子だと知られたら、当然社交界には永久に出られない。
 アンジェリカ様、怖いな。

「ナタリアさん」

「は、はいっ」

 固まっていたナタリアが、どもりながら返事をする。

「貴女とアデレーナは血をわけた姉妹。これが済めば、彼女の立場は悪くなるわ。それでいいのね?」

 確認するように、アンジェリカ様が聞いてくる。
 確かに、私とキャサリンも姉妹だが、もとから関係は破綻している。だけど、ナタリアとアデレーナの関係はどうだったんだろう。ヴァレリーやマルティンを大事にしているナタリア。アデレーナにも情があるんじゃないかな?

「薄情かと思われますが、もう、アデレーナを妹とは思えないんです」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるレフティアの日常は、父親の再婚によって大きく変わることになった。 妾だった継母やその娘である妹は、レフティアのことを疎んでおり、父親はそんな二人を贔屓していた。故にレフティアは、苦しい生活を送ることになったのである。 しかし彼女は、ある時とある事実を知ることになった。 父親が溺愛している妹が、彼と血が繋がっていなかったのである。 レフティアは、その事実を父親に密告した。すると調査が行われて、それが事実であることが判明したのである。 その結果、父親は継母と妹を排斥して、レフティアに愛情を注ぐようになった。 だが、レフティアにとってそんなものは必要なかった。継母や妹ともに自分を虐げていた父親も、彼女にとっては排除するべき対象だったのである。

忌むべき番

藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」 メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。 彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。 ※ 8/4 誤字修正しました。 ※ なろうにも投稿しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...