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ウーヴァ公爵の事情⑤

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 流れは変わって来ているとは思っていたけど、なんで、レオナルド・キーファーが?

「どういう事ですか?」

 セシリア・ウーヴァ女公爵は生物学上の両親に視線を投げる。

「クラーラ夫人は体調が優れない様子。伯爵、奥様をベッドに。そして貴女、新しいお茶を頂けるかしら?」

 つまり、生物学上の両親と、ナタリアに出ていきなさいって事ね。
 生物学上の父親は、母親を抱えて退室、ナタリアも心配そうに私を見るが下がっていく。
 確認してから着席するセシリア・ウーヴァ女公爵。

「ウィンティア嬢、これから話す内容は秘密よ」

「はい」

「レオナルドは第二王子レオンハルト殿下の護衛騎士であることは知っているわね」

「はい」

「これには事情があるのよ」

 なんだろう?
 
「実はね、レオンハルト殿下が暗殺の可能性が高くなって、まあ、王族である以上、大なり小なりその危険と隣り合わせなのは致し方ないのだけどね」

 そ、そうなの? 
 でも、暗殺って、穏やかじゃない。

「レオンハルト殿下をもしもの時に守るために、その為に、レオナルドは選ばれたわ」

 ふう、と息を付くセシリア・ウーヴァ女公爵。

「レオンハルト殿下の影武者としてね。必要時殿下を逃し、暗殺者の注意をそらすためのね。レオンハルト殿下とレオナルドは再従兄弟になるのよ。運が良かった事に、二人は面差しが似てるし、髪の色も一緒。レオナルドには公爵家でマナーを学ばせたし、レオンハルト殿下の影武者にうってつけだったの。護衛騎士に抜擢されたのよ」

 なんだ、レオナルド・キーファーが優秀だから選ばれたわけではないんだ。

「本来であればレオナルドの出番なんてないのだけど、事情が変わったのよ。モニカ妃はご存知よね?」

「はい。側室様ですよね」

「そのモニカ妃がレオンハルト殿下の暗殺に関わって来ているの。自分の息子、ロナウド殿下を王太子にするためにね」

「え?」

 だって、まだ、次の王太子決まってないはず。

「まだ、次の王太子は決まっていませんよね?」

「世間にはそう流しているけど、次の王太子は、レオンハルト殿下よ。ロナウド殿下には決してならないわ」

「どうしてですか? 同じ王子なのに」

「ロナウド殿下は、様々な事が欠落しているのよ」

 ため息を吐くセシリア・ウーヴァ女公爵。

「後ろ楯もそうだけど、教養は酷いし、何より人格がダメね」

「そこっ」

「隠しても仕方ないから話すけど、ロナウド殿下は八年前に婚約者候補の令嬢を死なせているの、結果的にはね」

「えっ?」

 死なせてるって。な、なんだからかなり危ない話じゃない? 王子様が、婚約者候補を死なせるって、穏やかな話レベルではない。

「ペルク侯爵は当然ご存知よね」

「はい」

 くるくる巻き髪のディミア嬢。

「そのペルク侯爵の三女、カタリナ様が、ロナウド殿下の候補の一人だったわ、でもね」

 視線を落とすセシリア・ウーヴァ女公爵。

「あの日、カタリナ嬢はダンスレッスンで足を挫いたのよ。本来であれば、カタリナ嬢をエスコートして馬車まで無事に送り届けるのが礼儀なのだけど、足をかばって歩いていたカタリナ嬢をロナウド殿下は遅いとなじった」

 えっ、最低。ダンスレッスンだって婚約者候補だから受けてただけでしょうに。

「ロナウド殿下はカタリナ嬢を突き飛ばしたの、階段の途中からね」

 嘘でしょ、怪我していた婚約者候補、しかも女の子よね? 突き飛ばしたの? 階段で、分からないわけ?

「カタリナ嬢はその場に駆けつけたメイドや侍従達に医務室に運ばれたのだけど、数時間後に亡くなったの」

 ロナウド殿下が突き飛ばしたせいじゃん。でも、そんなことして、なんで今でも世間では王子様と呼ばれているんだろ。シスター・スロウだってそう思っていたし。

「世間には事故死とされたわ、この話になるまで大変だったわ。詳しくすると時間かかるからはしょるわよ。結果父親のオーガスト殿下はロナウド殿下を王太子指名しないことが内々に決まった。発表したらしたでレオンハルト殿下の身が更に危ないから。それに納得しなかったのがモニカ妃殿下だった。モニカ妃殿下はレオンハルト殿下さえいなければ、なんて思っているでしょう、本当に浅はかな女」

 ……………………えっ? 側室様を浅はかな女って。
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