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準備⑥
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「でも、本当に流れが変わったんですね」
ティーナ・ローザがウィンティアの為に第一線から引いて育てる事にしてから。
元々赤い本では、ティーナ・ローザは療養所に入る前まで、ウィンティアに対するネグレクトに息子夫婦に苦言を呈していた。同時にわがままなキャサリンを唯一注意する人物でもあった。ティーナ・ローザは、ローザ伯爵が抱えるセーレ商会で絶大な信頼があり、多方面の貴族達とのパイプを持っていたので、息子夫婦は無下にできなかった。ティーナ・ローザは商会の仕事をしながら、ウィンティアの様子を見ていたが、それが悪手となった。
キャサリンが自分のわがままに注意する祖母ティーナを嫌った。そして強烈に『魅力』した祖父ジェフリー・ローザに、ティーナの排除をさせた。つまり、療養所に幽閉したのだ。
ティーナ・ローザは、仕事を諦めきれなかったんだろうね。心血注いでいたはずだし。
だけど、ティーナ・ローザが神官の能力を持ち、僅かにこの赤い本の内容を知った。孫娘の一人、ウィンティアがもう一人の孫娘のキャサリンにより、自殺に追い込まれる。だから、あれだけ大事にしていた仕事をやめて、ウィンティアを育てる事にしたんだ。
それにより、流れは変わり、キャサリンの『魅力』発覚が早くなった。ただ、ティーナ・ローザ自身が、毒を盛られるとは思っていなかっただろうけど。
ナタリア達まで影響したんだね。
「それは違うわ」
と、神様が言う。
「ナタリア達の件に関しては、貴女が分岐点なのよ」
「私?」
「そう。ウーヴァ公爵からの支援を受けず、ローザ伯爵に戻ると決めたでしょう」
「はい」
「ウィンティアの為に、ローザ伯爵は新たに専属メイドを雇う事にしました。それに応募したのがナタリアだったのです。もちろん、父親の件はローザ伯爵は知っていましたが、幼い弟を抱えていたナタリアを使えると思ったのでしょう。もしうまく行かなければ、解雇すればいいだけですしね。それにナタリア自身、準特進に在籍していた、もし家庭教師がダメな時にウィンティアの勉強の補佐にもできると」
生物学上の両親はそんな目でナタリア見てたのか。
「雇う側としては、どう使えるか考えるのは当然ですよ。ただ、ナタリアは予想以上にウィンティアの信頼を得た。ローザ伯爵にしてみたら、今はナタリアの存在はなくてはならないものです」
そうなんだ。
「結果、マルティンは養子に出ることはなく、ヴァレリーとの仲も良好になり、今の状況になっています。ですが、これは事例八のアデレーナに対する決定的な事ではありません」
神様が、さ、と手を振る。
出てきたのは、なんとセシリア・ウーヴァ女公爵の姿。
「彼女の立ち位置は知っているでしょう」
「はい」
現在、ルルディ王国の貴族の頂点にいて、王太子オーガスト殿下の唯一の従姉。アサーブ殿下ですら、怒らせたら怖いって言っていた。
私が歯向かったからっと、鋳たくも痒くもないんだろうね。本当に子犬が吠えている、くらいしか見てないんだろうね。
「彼女が味方になれば、ある程度の事は出来ます。それこそ、警らすべてとやり合うとして、彼女以上の存在はありません。分かりますか?」
「はい」
つまり、セシリア・ウーヴァ女公爵がナタリアの後見になれば、キリール・ザーデクの名誉回復が出来る。それが連動し、ゾーヤやティーシモン、グラーフ伯爵、そしてアデレーナをどうにかできる。
「だけど忘れないで。彼女には下手な隠し事や嘘は通じないわ。頼むとしても、かなり、深い部分まで聞かれるはず」
「でも、この赤い本の存在は、知られない方がいいですよね」
「セシリア・ウーヴァは、この本の存在は知っています。ただ、既に発行されているものだけですけどね。このルルディ王国の『魅力』に関する収録集は一般には出回っていません。資料として存在し、ウーヴァ公爵はすべての冊子を持っています」
なら、話してもいいのか? でも、なにこの子、変、って思われないかな?
「全ては貴女の交渉次第ですよ」
目の前にあった赤い本が、ふわ、と神様の元に。
「さあ、頑張って」
ティーナ・ローザがウィンティアの為に第一線から引いて育てる事にしてから。
元々赤い本では、ティーナ・ローザは療養所に入る前まで、ウィンティアに対するネグレクトに息子夫婦に苦言を呈していた。同時にわがままなキャサリンを唯一注意する人物でもあった。ティーナ・ローザは、ローザ伯爵が抱えるセーレ商会で絶大な信頼があり、多方面の貴族達とのパイプを持っていたので、息子夫婦は無下にできなかった。ティーナ・ローザは商会の仕事をしながら、ウィンティアの様子を見ていたが、それが悪手となった。
キャサリンが自分のわがままに注意する祖母ティーナを嫌った。そして強烈に『魅力』した祖父ジェフリー・ローザに、ティーナの排除をさせた。つまり、療養所に幽閉したのだ。
ティーナ・ローザは、仕事を諦めきれなかったんだろうね。心血注いでいたはずだし。
だけど、ティーナ・ローザが神官の能力を持ち、僅かにこの赤い本の内容を知った。孫娘の一人、ウィンティアがもう一人の孫娘のキャサリンにより、自殺に追い込まれる。だから、あれだけ大事にしていた仕事をやめて、ウィンティアを育てる事にしたんだ。
それにより、流れは変わり、キャサリンの『魅力』発覚が早くなった。ただ、ティーナ・ローザ自身が、毒を盛られるとは思っていなかっただろうけど。
ナタリア達まで影響したんだね。
「それは違うわ」
と、神様が言う。
「ナタリア達の件に関しては、貴女が分岐点なのよ」
「私?」
「そう。ウーヴァ公爵からの支援を受けず、ローザ伯爵に戻ると決めたでしょう」
「はい」
「ウィンティアの為に、ローザ伯爵は新たに専属メイドを雇う事にしました。それに応募したのがナタリアだったのです。もちろん、父親の件はローザ伯爵は知っていましたが、幼い弟を抱えていたナタリアを使えると思ったのでしょう。もしうまく行かなければ、解雇すればいいだけですしね。それにナタリア自身、準特進に在籍していた、もし家庭教師がダメな時にウィンティアの勉強の補佐にもできると」
生物学上の両親はそんな目でナタリア見てたのか。
「雇う側としては、どう使えるか考えるのは当然ですよ。ただ、ナタリアは予想以上にウィンティアの信頼を得た。ローザ伯爵にしてみたら、今はナタリアの存在はなくてはならないものです」
そうなんだ。
「結果、マルティンは養子に出ることはなく、ヴァレリーとの仲も良好になり、今の状況になっています。ですが、これは事例八のアデレーナに対する決定的な事ではありません」
神様が、さ、と手を振る。
出てきたのは、なんとセシリア・ウーヴァ女公爵の姿。
「彼女の立ち位置は知っているでしょう」
「はい」
現在、ルルディ王国の貴族の頂点にいて、王太子オーガスト殿下の唯一の従姉。アサーブ殿下ですら、怒らせたら怖いって言っていた。
私が歯向かったからっと、鋳たくも痒くもないんだろうね。本当に子犬が吠えている、くらいしか見てないんだろうね。
「彼女が味方になれば、ある程度の事は出来ます。それこそ、警らすべてとやり合うとして、彼女以上の存在はありません。分かりますか?」
「はい」
つまり、セシリア・ウーヴァ女公爵がナタリアの後見になれば、キリール・ザーデクの名誉回復が出来る。それが連動し、ゾーヤやティーシモン、グラーフ伯爵、そしてアデレーナをどうにかできる。
「だけど忘れないで。彼女には下手な隠し事や嘘は通じないわ。頼むとしても、かなり、深い部分まで聞かれるはず」
「でも、この赤い本の存在は、知られない方がいいですよね」
「セシリア・ウーヴァは、この本の存在は知っています。ただ、既に発行されているものだけですけどね。このルルディ王国の『魅力』に関する収録集は一般には出回っていません。資料として存在し、ウーヴァ公爵はすべての冊子を持っています」
なら、話してもいいのか? でも、なにこの子、変、って思われないかな?
「全ては貴女の交渉次第ですよ」
目の前にあった赤い本が、ふわ、と神様の元に。
「さあ、頑張って」
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