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準備⑤
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「末っ子のマルティンは、ナタリアの判断で養子に出されました。マルティンとヴァレリーを抱えて働くのはかなり厳しく、稼ぎのよい勤め先もなく、食べさせていけないのを分かっていたからです。それにまだ、幼いし、両親の愛情が必要だと判断し、短期間身を寄せていた父親の知り合いが、養子先を探しだして」
さ、て、神様が手を振る。
映像が出る。
よく分かっていないマルティンは、女性からくまのぬいぐるみを渡されて笑顔だ。そして、一緒にいた男性もニコニコしている。
「養子先の夫婦は真面目で勤勉な商人の夫婦でした。ただ、子供がおらず、マルティンを喜んで迎え入れました。彼らはマルティンを大事に育て、立派に育て上げたのです。そして、父親が死に際に、ナタリアとヴァレリーの話をしています」
「マルティンはどうしたんですか?」
まさか、アデレーナに仕返しとか?
「いいえ、すでにアデレーナはその時には処分されています」
「処分」
物騒。
「ナタリア達が短期間身を寄せていた知人は、仕事でカルメン王国に数年滞在したんです。カルメン王国に一緒に行かないかと言ったが、ナタリアはそこまでお世話になれないと断っています。ナタリア達を案じた知人マルティンの養子先を探しだしたのです。結果、マルティンだけは被害を逃れました」
そうなんだ。マルティンだけ。せめてもの救いだったんだね。
「どうやって、アデレーナの件が明らかになったんですか?」
「証言をするはずの元騎士が教会で懺悔してしたでしょう?」
「はい」
「本来教会での懺悔内容は秘匿され外部に漏れません。ただ、特例があります」
「殺人」
「そうです。教会での懺悔内容は、三十年保管後破棄されますが、殺人の場合は公開されます」
「公開? まさか、一般に?」
「そうです。元騎士はそれが狙いでした。確かに自分かが手を汚した。でも、幼い子供がいたキリール・ザーデクに対して申し訳ない気持ち。自分達の欲で殺害を指示したあの二人が、何食わぬ顔して再婚し、社交界ででしゃばっているのに、憤りを感じていたからです。教会での懺悔は必ず残ります。もし、自分の身に何かあってもね」
まさか。
「口封じではありません。彼は裏路地に引き込まれて、暴行されていた少女を助け、その際にナイフで刺し殺されてしまったのです」
だから、行方が分からなくなったんだ。
「すでに時効が成立している案件でしたが、ティーシモンとゾーヤの二人はバズル伯爵家から追放されました、二人の間に生まれた息子によってね」
自業自得。
「で、再調査でアデレーナの素行問題が出ました。やっと『魅力』持ちだと判断されました。アデレーナはフォード侯爵の嫡男に嫁いでいたのです」
フォード? まさか、リーナ嬢のフォード侯爵?
「そうです、リーナ・フォードの上の兄、ダニエル・フォードです。アデレーナはキャサリン程強い『魅力』はありませんでしたが、言葉巧みにダニエルにすり寄り、少しずつ邪魔者達を遠ざけました。そして、ダニエル・フォードは徐々に婚約者と仲違いし、婚約解消しました。そして、アデレーナ・グラーフと結婚」
破棄ではなく、解消ね。うまく立ち回ったとことか。
「それでも納得できなかったのが、妹のリーナです。これがアデレーナにしては最大の障壁になりました。アデレーナは『魅力』し引き入れたメイドに、リーナの飲み物に毒をいれさせました」
「まさかっ」
あのリーナ嬢までっ。
「体調不良を起こす薬ですが、リーナには喘息の既往があり、病状が再度出てしまい、転地療養をすることになりました。それでリーナは療養先でカルメンの貴族に見初められ、喘息の持病があることを含めてリーナはその貴族に望まれて嫁ぎました」
良かった。
「それ以外にも、アデレーナは独身の貴族男性と隠れて関係を持ち、子供まで生んでいます。ダニエルの子供だと偽って」
母親と同じことしてる。アデレーナは『魅力』を使い若く見目がよろしい男性に貢がせ、かしずかせた。取っ替え引っ替えね。
ダニエル・フォードとの間の子供は五人。
「アデレーナの生んだ五人の子供。長男と三女はダニエルの子供ですが、それ以外は他の男性との子供。すでに長男、次男、長女は結婚し、長男には生まれ手間もない子供がいました。フォード侯爵はダニエルとリーナの父親は、息子ダニエルの次には曾孫に爵位を譲る事を決めました。そしてその補佐に孫の父親であるダニエルの長男をつけました。ダニエルの長男は優秀で、人柄もよく、当主教育もすんでいたからです。いずれ孫が補佐が必要なくなれば、侯爵家から離れる予定にしましたが、少なくとも二十年以上は侯爵で安定した生活ができ、かなりの手切れ金を渡すことにしました」
リーナのお父さんも悩んだろうなあ。
優秀って言うけど、きっとその孫が一生懸命頑張った来たのを見ていたろうし。
「次男と長女は潔く身を引きました。フォード侯爵から離れ、平民となりました。伴侶も理解のある人で、離れることはなかった。もちろん、今までの自身の子供だと疑わなかったダニエルも、いまから他人なんて言わせないと言って、自身の不動産の一部を彼らに譲渡し、それを受け入れる事を条件つけて、彼らを見送りました。次女と三女は大学生でしたが、文官として身を立て、三女は商会に事務として勤めました。二人ともダニエルから不動産の一部を受け、平民として生きました」
そうなんだ。
「で、アデレーナはどうなったんです?」
「キャサリンと同じですよ。まあキャサリンより強い力はなくとも、長く『魅力』を使い、人々を操っていたアデレーナは、同じように顔を半分焼かれ『魅力耐性』の道具にされました。三年ほどしかいきれなかった。犯罪者墓地にいれらています」
キャサリンと違うのは、埋葬されたって事ね。
「あの神様、アデレーナの『魅力』はいつ発動しますか? 既に発動しています?」
ガーデンパーティーや、学園内のレストランで別々の男子生徒といたし、何やら貢がせると言うか使い走りにしていたし。
「既に発動していますが、かなり弱い『魅力』ですね。今の状況でアデレーナが『魅力』持ちだと告白しても、判断は微妙ですね」
うーん。『魅力』持ちと告発して、微妙判定となれば、告発したウィンティアにペナルティが出そう。どうしたものか。
さ、て、神様が手を振る。
映像が出る。
よく分かっていないマルティンは、女性からくまのぬいぐるみを渡されて笑顔だ。そして、一緒にいた男性もニコニコしている。
「養子先の夫婦は真面目で勤勉な商人の夫婦でした。ただ、子供がおらず、マルティンを喜んで迎え入れました。彼らはマルティンを大事に育て、立派に育て上げたのです。そして、父親が死に際に、ナタリアとヴァレリーの話をしています」
「マルティンはどうしたんですか?」
まさか、アデレーナに仕返しとか?
「いいえ、すでにアデレーナはその時には処分されています」
「処分」
物騒。
「ナタリア達が短期間身を寄せていた知人は、仕事でカルメン王国に数年滞在したんです。カルメン王国に一緒に行かないかと言ったが、ナタリアはそこまでお世話になれないと断っています。ナタリア達を案じた知人マルティンの養子先を探しだしたのです。結果、マルティンだけは被害を逃れました」
そうなんだ。マルティンだけ。せめてもの救いだったんだね。
「どうやって、アデレーナの件が明らかになったんですか?」
「証言をするはずの元騎士が教会で懺悔してしたでしょう?」
「はい」
「本来教会での懺悔内容は秘匿され外部に漏れません。ただ、特例があります」
「殺人」
「そうです。教会での懺悔内容は、三十年保管後破棄されますが、殺人の場合は公開されます」
「公開? まさか、一般に?」
「そうです。元騎士はそれが狙いでした。確かに自分かが手を汚した。でも、幼い子供がいたキリール・ザーデクに対して申し訳ない気持ち。自分達の欲で殺害を指示したあの二人が、何食わぬ顔して再婚し、社交界ででしゃばっているのに、憤りを感じていたからです。教会での懺悔は必ず残ります。もし、自分の身に何かあってもね」
まさか。
「口封じではありません。彼は裏路地に引き込まれて、暴行されていた少女を助け、その際にナイフで刺し殺されてしまったのです」
だから、行方が分からなくなったんだ。
「すでに時効が成立している案件でしたが、ティーシモンとゾーヤの二人はバズル伯爵家から追放されました、二人の間に生まれた息子によってね」
自業自得。
「で、再調査でアデレーナの素行問題が出ました。やっと『魅力』持ちだと判断されました。アデレーナはフォード侯爵の嫡男に嫁いでいたのです」
フォード? まさか、リーナ嬢のフォード侯爵?
「そうです、リーナ・フォードの上の兄、ダニエル・フォードです。アデレーナはキャサリン程強い『魅力』はありませんでしたが、言葉巧みにダニエルにすり寄り、少しずつ邪魔者達を遠ざけました。そして、ダニエル・フォードは徐々に婚約者と仲違いし、婚約解消しました。そして、アデレーナ・グラーフと結婚」
破棄ではなく、解消ね。うまく立ち回ったとことか。
「それでも納得できなかったのが、妹のリーナです。これがアデレーナにしては最大の障壁になりました。アデレーナは『魅力』し引き入れたメイドに、リーナの飲み物に毒をいれさせました」
「まさかっ」
あのリーナ嬢までっ。
「体調不良を起こす薬ですが、リーナには喘息の既往があり、病状が再度出てしまい、転地療養をすることになりました。それでリーナは療養先でカルメンの貴族に見初められ、喘息の持病があることを含めてリーナはその貴族に望まれて嫁ぎました」
良かった。
「それ以外にも、アデレーナは独身の貴族男性と隠れて関係を持ち、子供まで生んでいます。ダニエルの子供だと偽って」
母親と同じことしてる。アデレーナは『魅力』を使い若く見目がよろしい男性に貢がせ、かしずかせた。取っ替え引っ替えね。
ダニエル・フォードとの間の子供は五人。
「アデレーナの生んだ五人の子供。長男と三女はダニエルの子供ですが、それ以外は他の男性との子供。すでに長男、次男、長女は結婚し、長男には生まれ手間もない子供がいました。フォード侯爵はダニエルとリーナの父親は、息子ダニエルの次には曾孫に爵位を譲る事を決めました。そしてその補佐に孫の父親であるダニエルの長男をつけました。ダニエルの長男は優秀で、人柄もよく、当主教育もすんでいたからです。いずれ孫が補佐が必要なくなれば、侯爵家から離れる予定にしましたが、少なくとも二十年以上は侯爵で安定した生活ができ、かなりの手切れ金を渡すことにしました」
リーナのお父さんも悩んだろうなあ。
優秀って言うけど、きっとその孫が一生懸命頑張った来たのを見ていたろうし。
「次男と長女は潔く身を引きました。フォード侯爵から離れ、平民となりました。伴侶も理解のある人で、離れることはなかった。もちろん、今までの自身の子供だと疑わなかったダニエルも、いまから他人なんて言わせないと言って、自身の不動産の一部を彼らに譲渡し、それを受け入れる事を条件つけて、彼らを見送りました。次女と三女は大学生でしたが、文官として身を立て、三女は商会に事務として勤めました。二人ともダニエルから不動産の一部を受け、平民として生きました」
そうなんだ。
「で、アデレーナはどうなったんです?」
「キャサリンと同じですよ。まあキャサリンより強い力はなくとも、長く『魅力』を使い、人々を操っていたアデレーナは、同じように顔を半分焼かれ『魅力耐性』の道具にされました。三年ほどしかいきれなかった。犯罪者墓地にいれらています」
キャサリンと違うのは、埋葬されたって事ね。
「あの神様、アデレーナの『魅力』はいつ発動しますか? 既に発動しています?」
ガーデンパーティーや、学園内のレストランで別々の男子生徒といたし、何やら貢がせると言うか使い走りにしていたし。
「既に発動していますが、かなり弱い『魅力』ですね。今の状況でアデレーナが『魅力』持ちだと告白しても、判断は微妙ですね」
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