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準備②
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あまり立ち入らない居間で、私は生物学上の両親と向き合う形でソファーに座る。
さて、まずは。
「今回の件、色々とご迷惑をおかけしました」
一応、行方不明の私を探し回ったみたいだしね。ナタリアの話では、保護者説明会前に、生物学上の母親が倒れたのも聞いたしね。それからちょっとテヘロンでの騒ぎでは、気の毒かなって思う節がある。キャサリンの暴走を止められなかった事もあるが、流産し、二度と子供が望めない身体になってしまった。当時まだ三十代半ばの生物学上の母親にはきつい結果になっているしね。
だからと言って幼いウィンティアにやらかしたことはまだ許せないけど。
「ウィンティアが無事ならいいんだよ、テヘロン大使館の皆様には、感謝しかないね」
と、ほっとした顔をしている生物学上の父親。
「倒れた、とお聞きしましたが、もう宜しいんですか?」
おそらく私の件で倒れた生物学上の母親は、びっくりした顔をする。
「ええっ、大丈夫よっ、なんともないわっ」
何故か目頭を押さえているけど。一応義理で聞いたのだけど。
ナタリアがお茶を運んでくれる。
「で、ウィンティア、話とはなんだい?」
「キャサリンは敷地外ですか?」
ちら、と生物学上の父親が目配せすると、メイド長が頷いている。
「では、ナタリア以外は人払いを」
「分かった。下がりなさい」
「はい、旦那様」
メイド長は居間から出ていく。ドアが閉まったのを確認。
「私からの話は、お願いになります」
「なんだい? 言ってごらん」
「ナタリアの父親の件はご存知ですよね?」
「もちろん、ナタリア自身から聞いているよ」
「その名誉を回復するための裁判を起こしたいんです。ローザ伯爵には、ナタリアの後見になって欲しいんです」
「さ、裁判?」
顔を見合わせる生物学上の両親。
「こちらをご覧ください」
私はリュックからテヘロンの『影』の皆さんが調べてくれた資料を取り出す。
生物学上の両親は、その資料に目を通し始める。さすが商会を抱えているだけのことはある、スピードが違う。そして顔が険しくなる。
「これは、本当なのかい?」
「テヘロンの『影』の皆さんが嘘をつくわけないです」
「そうか、そうだな」
生物学上の両親は、考え込む。
「ウィンティア、ナタリア」
「「はい」」
生物学上の父親が改まる。
「おそらく、お前達が考えている以上に大がかりなる。うちクラスの後見では太刀打ち出来ないよ」
「えっ?」
なんで?
「まずは、すでに処理されてしまった案件ではあるが、一番のネックは、警らの中枢にいる人物を相手にする、つまり警ら全部を敵に回す事になる」
警らってのは、ここで言う警察の事ね。
「つまりナタリアの父親の件では、どうしようもないと?」
私はお腹の底が冷えていく。せっかく、どうにかなりそうな突破口なのに。
「だが、このアデレーナ嬢の件だけで切り崩せば、ゾーヤ・グラーフ伯爵令嬢は、もう二度と表舞台には立てないし、罪にも問えるし、慰謝料を取れるよ」
出生の書類偽造をネタにつつくわけだ。
でも。
「なんとかナタリアの父親の件は、ならないんですか?」
どうにかしたい。なんとしてもキリール・ザーデクの件をどうにかしないと、事例八で被害者にならんだナタリアとヴァレリーを助けたい。
「すまない。うちクラスではどうしようもないんだよ」
そんな、私は肩を落とす。
「お嬢様、ありがとうございます。もう十分です」
「ナタリア…………」
そうは言ってるが、ナタリア半泣きだよ。
なんとかならないのかな?
コンコンコン
ドアがノックされる。
誰だろう? キャサリンから騒がしいからすぐに分かるけど。
『失礼、話に加えさせてもらえないかしら?』
あ、この声っ。
レオナルド・キーファーの後見人、セシリア・ウーヴァ女公爵だっ。
さて、まずは。
「今回の件、色々とご迷惑をおかけしました」
一応、行方不明の私を探し回ったみたいだしね。ナタリアの話では、保護者説明会前に、生物学上の母親が倒れたのも聞いたしね。それからちょっとテヘロンでの騒ぎでは、気の毒かなって思う節がある。キャサリンの暴走を止められなかった事もあるが、流産し、二度と子供が望めない身体になってしまった。当時まだ三十代半ばの生物学上の母親にはきつい結果になっているしね。
だからと言って幼いウィンティアにやらかしたことはまだ許せないけど。
「ウィンティアが無事ならいいんだよ、テヘロン大使館の皆様には、感謝しかないね」
と、ほっとした顔をしている生物学上の父親。
「倒れた、とお聞きしましたが、もう宜しいんですか?」
おそらく私の件で倒れた生物学上の母親は、びっくりした顔をする。
「ええっ、大丈夫よっ、なんともないわっ」
何故か目頭を押さえているけど。一応義理で聞いたのだけど。
ナタリアがお茶を運んでくれる。
「で、ウィンティア、話とはなんだい?」
「キャサリンは敷地外ですか?」
ちら、と生物学上の父親が目配せすると、メイド長が頷いている。
「では、ナタリア以外は人払いを」
「分かった。下がりなさい」
「はい、旦那様」
メイド長は居間から出ていく。ドアが閉まったのを確認。
「私からの話は、お願いになります」
「なんだい? 言ってごらん」
「ナタリアの父親の件はご存知ですよね?」
「もちろん、ナタリア自身から聞いているよ」
「その名誉を回復するための裁判を起こしたいんです。ローザ伯爵には、ナタリアの後見になって欲しいんです」
「さ、裁判?」
顔を見合わせる生物学上の両親。
「こちらをご覧ください」
私はリュックからテヘロンの『影』の皆さんが調べてくれた資料を取り出す。
生物学上の両親は、その資料に目を通し始める。さすが商会を抱えているだけのことはある、スピードが違う。そして顔が険しくなる。
「これは、本当なのかい?」
「テヘロンの『影』の皆さんが嘘をつくわけないです」
「そうか、そうだな」
生物学上の両親は、考え込む。
「ウィンティア、ナタリア」
「「はい」」
生物学上の父親が改まる。
「おそらく、お前達が考えている以上に大がかりなる。うちクラスの後見では太刀打ち出来ないよ」
「えっ?」
なんで?
「まずは、すでに処理されてしまった案件ではあるが、一番のネックは、警らの中枢にいる人物を相手にする、つまり警ら全部を敵に回す事になる」
警らってのは、ここで言う警察の事ね。
「つまりナタリアの父親の件では、どうしようもないと?」
私はお腹の底が冷えていく。せっかく、どうにかなりそうな突破口なのに。
「だが、このアデレーナ嬢の件だけで切り崩せば、ゾーヤ・グラーフ伯爵令嬢は、もう二度と表舞台には立てないし、罪にも問えるし、慰謝料を取れるよ」
出生の書類偽造をネタにつつくわけだ。
でも。
「なんとかナタリアの父親の件は、ならないんですか?」
どうにかしたい。なんとしてもキリール・ザーデクの件をどうにかしないと、事例八で被害者にならんだナタリアとヴァレリーを助けたい。
「すまない。うちクラスではどうしようもないんだよ」
そんな、私は肩を落とす。
「お嬢様、ありがとうございます。もう十分です」
「ナタリア…………」
そうは言ってるが、ナタリア半泣きだよ。
なんとかならないのかな?
コンコンコン
ドアがノックされる。
誰だろう? キャサリンから騒がしいからすぐに分かるけど。
『失礼、話に加えさせてもらえないかしら?』
あ、この声っ。
レオナルド・キーファーの後見人、セシリア・ウーヴァ女公爵だっ。
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