ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

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テヘロン大使館⑨

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 アサーヴ殿下がユミル学園での保護者説明会から帰って来た。
 すでに遅い時間なので、私にはホットミルクを出してくれた。うーん、上げ膳据え膳、テヘロン大使館の皆さんから甘やかされて、ダメ人間になりそう。
 私は、テヘロン王国で何やらトラブル起こしたキャサリン・ローザの妹なのに、皆さん親切だ。
 ステラ様にもお世話になってる。本来なら夏休みの宿題があるんだけど、夏休み前にこうなってしまい、手にはいってない。なので、ステラ様とソードさんの課題を見せてもらい勉強している。
 ソードさんとも簡単なテヘロン語で話している。とても中学一年生とは思えなかったけど、なんと今年十六歳で、ステラ様の護衛の為に留学したって。ユミル学園中等部の留学生枠は狭く、突破できたのはステラ様とソードさんだけだって。
 
「ウィンティア嬢、体調はどうだい?」

「問題ありません。テヘロンの皆様が優しくて、甘えてばかりです」

「そう」

 安心したようなアサーヴ殿下。

「もう、遅い時間だから手短にな」

「はい」

 保護者説明会は大荒れだったそうだ。
 新聞には私の名前は臥されたけど、分かる人には分かる。
 で、アサーヴ殿下は私を、名前は伏せて保護していると言って、懐中時計と片方の靴を提示。
 何故今ごろ? なんて質問が当然飛んだ。
 そこで私を更なる被害者にするアピール。
 保護して熱を出して、落ち着いてもムチ打ちされたせいで、やっと落ち着いて話せたのが最近だと答えたみたい。そこまで酷く怯えてますよってね。

「ただ君が捜索に当たっている教職員達に対して、申し訳ないと言う気持ちがあることは伝えておいた。捜索はこれで打ちきりになる。君の担当教官は、倒れそうだったよ」

 マクガレル先生だ。心配かけてしまった。
 申し訳ない。
 アサーヴ殿下の話は続く。こんな時間まで話していたんだから、きっと色々あったと思うけど、私の事だけね。

「君は夏休みの間はテヘロン大使館で保護をする事になった。ローザ伯爵家には帰りたくないだろう?」

「はい」

「だからと言ってこのまま寮には返せない。まだ、代理の寮母や、学園の生徒に対する待遇改善策が納得できないからね」

 学園の生徒の待遇。テヘロン王国からの留学生のね。

「ローザ伯爵は君との面会を希望されたが断った。ただ、ナタリアと言うメイドだけは、この大使館の入館許可を出した。数日以内には来るはずだ」

「ありがとうございます」

 ナタリアに会える。心配かけたから、謝らないと。

「そのメイドを介して、学友やローザ伯爵と連絡を取るといい。ただし、荷物や手紙類は中身を一度監査させてもらうよ」

「はい」

 仕方ない、ここはテヘロン大使館。ルルディ王国内の外国になる。

「では、ウィンティア嬢。もう遅いから休みなさい。後日、ゆっくり話そう」

「ありがとうございます」

 忙しい大使なのに、気を使ってもらってありがたい。
 アサーヴ殿下をお見送りして、私は床に着く。毎日、ステラ様がお布団かけてくれる。いいのかなあ? 王女様がお布団かけてくれるのって。
 当のステラ様が、気にしない気にしないだって。
 いいのかなあ?
 あ、眠気が、ぐー。
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