ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

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テヘロン大使館⑤

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 それからデルダさんとアサーヴ殿下がこしょこしょとお話していた。
 私は微かにお香が香る部屋で、処方されたお薬を飲み、横になる。スティーシュルラ様が豪華に刺繍が施された布団をかけてくれた。
 いいのかな? 王女様がお布団かけてくれたよ。
 お綺麗な顔で、気にしない気にしないってさ。
 私はまだ熱もあり、ぐっすり眠ってしまった。
 次の日。
 ずいぶん体が軽くなっていた。
 だされた食事はパン粥みたいなので、優しい甘さ。新鮮な果物もあり綺麗に平らげた。
 片言でしかテヘロン語は分からないけど、配膳してくれた侍女さんにお礼を伝えると、はじめは驚いていたけど、にこっ、としてくれた。
 お腹も満腹。熱も下がった。ようやく回りを見る余裕が出た。
 雰囲気的にインドっぽい感じなのかな? そんなテイストが入った感じ。侍女さんの着てるのも、サリーっぽいしね。

 これから、どうなるんだろう?

 急に不安が。
 怒りに任せて、テヘロン大使館に保護されることを選んだけど。このまま見つけられないままになるんじゃないかなって。ウーヴァ公爵もローザ伯爵もこれ幸いと私が行方不明だからって死んだって事にしないかなって。
 もしかしたら、私はまだ行方不明って判断されてないかも。あの地下には一週間は拘束だから、そのままにされてないかな? そうなれば、ウーヴァ公爵家もローザ伯爵家も探しはしないわなぁ。
 私、保護された意味がなくなる。
 悶々とする。
 悶々としながら、侍女さんが出してくれた砂糖のまぶしたお菓子をぱくり。食欲ばっちり。
 むっ、これはっ、甘いけど苦いっ、懐かしい苦味っ。
 よくよく見ると、緑っぽいドライフルーツに砂糖が
まぶしてある。これ、ゴーヤじゃない? 苦味はあるけど、なんだか、癖になりそうな美味しさ。パクパク。

『苦味は大丈夫ですか?』

 テヘロン侍女さんが、ゆっくりテヘロン語で聞いてくれる。
 せっかくテヘロン大使館にいるんだもん、片言でもテヘロン語でコミュニケーション取りたい。ちなみに大使館に所属している人は、全員フア語完全マスターしてます。

『ハイ、オイシイデス』

 片言で答える。
 するとテヘロン侍女さんはニコニコ。

『こちらは生姜です。どちらが好きですか?』

『イタダキマス』

 ぱくり。
 あ、ほのかな辛みが。
 うーん、ゴーヤの方が好きかな。

『オイシイデス、ミドリノホウガスキデス』

 お世話してくれる侍女さん、他の侍女さん達もとっても親切だ。
 甘やかされてる感じがするけど、嬉しい。
 ムチ打ちされた後が綺麗になって、体調が戻ったら、テヘロンの衣装を着ましょうねって言ってくれた。
 優しさが染みる。
 私は侍女さん達に甘やかされて、ゴーヤをパクパク。

『ウィンティア様、アサーヴ殿下とスティーシュルラ殿下がお出でになります』

 今日からユミル学園は夏休みに入るからね。
 私は身なりをチェックして、スティーシュルラ様を待った。
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