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テヘロン大使館①

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「やあ、お邪魔するよ」

 侍女からアサーヴ殿下の訪室が告げられ、すぐにアサーヴ殿下がやってきた。
 キラキラと輝く銀髪を肩に流し、緩く結っている。顔立ちも綺麗だし、立ち姿も素晴らしい。まとめると、とってもイケメンさん。さんなんて付けたら、不敬なんだけどね。アサーヴ殿下はテヘロン王国の第二王子様、スュテーシュルラ様と同じ母親から生まれた兄妹。
 私は立ち上がり、ぺこり、とご挨拶。
 隣にいるスティーシュルラ様を見習って、テヘロン式にね。両手を胸に当てて、膝を折り、頭を下げるのがテヘロン式。

「お兄様、お帰りなさいませ」

「ただいまステラ。ウィンティア嬢、少し話はいいかい?」

「はい、アサーヴ殿下」

 私、ウィンティア・ローザは、現在テヘロン大使館に保護されている。
 あの日。
 ウーヴァ公爵家から戻った後、むすくれた顔で帰った。代理の寮母にとりあえず説明したが、聞き入れて貰えず、いきなりムチ打ちだ。虐待の記憶でこの体でまともな抵抗なんて出きるわけない。
 だけど。

 ウィンティアを守らないと。

 私は咄嗟に代理の寮母に向かって、ごみ箱を投げ、爪を立て、必死の抵抗。
 うまく行きはしなかったけど。
 私は何度かムチ打ちを受けて踞っていたが、その後地下に入れられた。明かりもほとんど指さない暗い寒い地下。冷静になるまで時間を要したが、地下にある物をかき集めた。おそらく非常用品の品々があり、毛布を引っ張りだし、暖をとった。乾パンやドライフルーツもあり、空腹を凌ぐ。
 あのペルク侯爵令嬢と、寮管生に色々言われたけど、痛みとショックが大きくあまりその時はそこまで思えなかった。よくよく考えたら、自分勝手で、逆恨みで、自分で自分の首を絞めたようなものだ。私が見つからなければ言いと思って地下から連れ出したようだけど、考えが浅すぎる。中学生だよ? 自分がなにやったか分からないわけ?
 私はあまり痛みのショックもあったが、出きるだけ冷静に冷静に考えた。おそらく週明けには、誰かが気がつくはずだからと。それまで耐えるしかない。まあ。一人は慣れてるしね。
 だけど、運悪く私は発熱してしまった。多分風邪だと思うけど。ムチ打ちからの熱ではない。だって100回も叩かれてないんだもん。確かに数回叩かれたけど、実際はそうでない。新聞では代理の寮母が100回叩いたってされてるけど、実際は違うんだよね。あの代理の寮母は、途中で叩くふりして、足元の床や近くのソファーを叩いて音だしていたんだよね。
 雨の中、私は熱でだるいからだを引きずられて、狭い門の外から突き飛ばされた。拍子で靴が片方脱げてしまった。私はあの日のワンピースとポシェットのみ。人通りのない学園裏道で、踞っていたから、偶然通りかかった馬車に見つけられたのだ。
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