ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
上 下
113 / 338

行方不明⑧

しおりを挟む
 メイド服に身を包んだ少女が叫んでいる。
 ナタリアだ。学園に呼ばれたローザ伯爵当主と共に来て、そのまま捜索に加わっていた。
 広大は森だが、キズを負ったウィンティアの状況から遠くにいないはずと思われたが、一向に見つからない。
 捜索打ちきりと耳にしたナタリアは、必死に訴えている。
 ランプを、と叫ぶナタリアがレオナルドの姿を捉える。

「……………貴方のせいですっ、貴方のせいでお嬢様がっ、お嬢様がっ」

 ナタリアの言葉が鋭利は刃物となり、レオナルドを抉る。

「貴方がっ、ちゃんとしないからっ、ウィンティアお嬢様がっ、何が誠実ですかっ」

 ふざけないでくださいっ。

 ナタリアが血を吐くように叫び、崩れ落ちて泣き出す。
 捜索が開始されて、もう八時間以上経過している。
 ディミアの証言で、西門付近で見つかったのは、片方の靴だけ。
 口に出さないが、誰もがその可能性を頭に浮かべる。

 誰かに連れ去られた、と。

「ナタリア」

 ローザ伯爵当主がナタリアの肩に触れる。

「私がここに残るからお前は帰りなさい。ウィンティアは私が見つけて連れて帰るから。ウィンティアはお前のお茶しか受け付けないのだから、温かいお茶を淹れて待っているんだ。いいね」

 泣き崩れるナタリアを、ローザ伯爵当主は別のメイドに託す。
 ちらり、とローザ伯爵当主はレオナルドを見ると、軽く会釈する。

「キーファー様、わざわざご足労ありがとうございます」

「いえ、私は何も…………」

「来ていただいたのですが、このような状況です。失礼します」

「は、はい」
 
 背中を向けるローザ伯爵当主を見送り、頭の中が、ぐらぐらするレオナルドは吸い込まれるように、森に脚を向けたが、止められる。ウーヴァ公爵家で、自分専属の執事だ。

「レオナルド様、ご当主がお戻りになるように、と」

 反論しようとしたレオナルドの言葉を遮る。

「ご当主がお戻りになるように、と。レオナルド様、貴方まで遭難します。お戻りください。必ず見つけ出します、さあ」

 想像以上の力で、執事により馬車に押し込めれたレオナルド。執事はそれを見送り、情報確認の為に現場に止まった。
『影』まで使ったのだから、見つかるはずと思ったが。

 数日経っても、ウィンティアの行方が分からなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

伯爵令嬢が婚約破棄され、兄の騎士団長が激怒した。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

処理中です...