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行方不明③

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 時は遡り。


「ウィンティア・ローザは、土曜日から罰として地下の反省室にいます」

 足をくじいて療養している寮母の代理は、四角四面の返答をする。
 ウィンティア・ローザの所在を確認しにきたダグラスは、眉を寄せる。

「地下の反省室? 彼処は昔、暴れて手に付かない生徒、体力のある男子生徒にのみ緊急時に使われるものでしょう? 今はほとんど使われていないはず」

 地下の反省室は、その昔、血の気の多い男子学生を一時的に入れた。頭を冷やさせる為に短時間で。各寮にあるが、現在は使われず倉庫として使われている。

「土曜日から? 二日も? ウィンティア・ローザはそんな問題を起こすような生徒ではない。それに何故、担任であるマクガレル先生に一報がないんですか?」

 徐々に固くなるダグラスの言葉に、代理の寮母はわずかに怯む。

「か、彼女は無断外泊の上に、門限を大幅に越えて戻って来ました。私、規則に則り対応したままです。担任には、寮管生が伝達に行ったはずです」

「それがないから、私がここにきているんですよ。無断外泊? 当人はそれを認めたんですか? 理由はなんですか? ああ、理由はどうでもいい、ウィンティア・ローザを今すぐ地下から出してください」

「それは出来ません。規則ではあと五日の反省室拘束とあります」

 代理の寮母の言葉に、ダグラスは言葉に詰まるが、次の瞬間形相が変わる。

「地下の反省室に一週間? 何をあなたは言っているんだ? もともと地下の反省室の使用はもう何十年も前に拘束での使用は禁止されている」

 地を這うような声に代理の寮母は更に怯む。だが、ぐ、と息をのみ、反撃するように言い返す。

「しかし、ウィンティア・ローザは、まったく反省の色がなく、仕置き中にも抵抗したんですっ。引っ掻いてきたんですっ」

「仕置き?」

「そうですっ。引っ掻いてっ」

「生徒に暴力を振るったんですかっ」

 倍の声量で返されて、代理の寮母は後ずさる。

「なんて事をしたんだっ。学園では体罰は厳禁とされているんだぞっ。あなたは一体いつの規則を言っているんだっ」

 ダグラスの声量が変わらないが、顔色が悪くなる。その様子に代理の寮母は混乱を始める。

「しかし、渡された規則の本では……………」

「そんなことはどうだっていいっ。今すぐ地下の鍵を出すんだっ」

「ここは、女子寮で…………」

「鍵を出せっ」

 代理の寮母はダグラスの怒声に負け、鍵を仕舞っていた棚を開ける。
 本来なら、ずらりと並んでいる筈の鍵の列に、一つの空白がある。

 地下の反省室の鍵だけが、なくなっていた。
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