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閑話 続・あるご令嬢 

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「で、何を聞かれたんだ?」

「アデレーナ・グラーフ様の事ですわ。ほら、一度うちのお茶会にいらっしゃったでしょう?」

 途端に眉を上げる母親。

「お母様、ご存知でしょう? 招待状の管理はお母様なんですから」

「そうね」

 貴族の茶会や夜会で招く側の招待状の管理は、女主人が行う。貴族夫人は、社交界に繰り出し、相手の情報収集し、送る相手を厳選する。

「送る相手を間違ったと今では反省しているわ」

 母親はお茶を一口、その当時の説明を始める。

「ザーデク子爵の件で、アデレーナ嬢の母親、ゾーヤ・グラーフ伯爵令嬢には、同情する声が多かったし、なりより、私自身がゾーヤ嬢とは同級生なのよ。彼女を元気つけようと思って招待状を送ってのだけどね。もちろんお子さん達全員同伴の招待状だったのだけど」

 はあ、とため息をつく母親。
 連れてきたのはアデレーナのみ。そして、いくら籍を抜いたとは言え、元夫が亡くなり間が空いてない時期に、鮮やかなドレスでやって来た。色もデザインも抑えている様子もなく、嬉々として来ては、自慢の娘、アデレーナを紹介。
 その際、リーナはアデレーナに挨拶をしたが、直ぐに別の仲良しグループの話に加わった。
 下の兄が渋い顔をする。

「ああ、あのあからさまなやつな。俺が次男だと分かった瞬間に、興味が失せましたって顔した」

 下の兄が挨拶をした時、爛々とした目で見ていたゾーヤとアデレーナだったが、次男と分かった瞬間に、あからさまに豹変した。その後、合流した上の兄が挨拶した時に絡んできた為、上の兄も覚えていたようで肩をすくめている。
 
「そうね。そうだったわね。で、そこで他のお子さんはって話になったのよ。返って来たのは、さあ? ですもの呆れたわ。母親としての自覚も責任感もないんだって。その後の別のパーティーで、色々暴露されてから、どこにも呼ばれないけど、遅かれ早かれ、社交界から爪弾きされていたはずよ」

 なるほど、とリーナは頭の中にメモする。

「お母様からして、アデレーナ嬢はどんな令嬢?」

「そうねえ」

 ため息を吐き出す母親。

「見た目は大変よろしい、ですが、あれはすでに雌豹のような感じね。格好の獲物を狙っているようでした。リーナと同い年の娘とはとても思えない程に。見た目は可憐な少女でも、中見は熟れていると言うか、まるで毒婦でした」

 母親はカップを置く。

「リーナ。何故、そのウィンティア嬢がアデレーナ嬢の事を聞きたいと言われたからと言っても、自分が実際聞いたもの、見たものだけを教えなさい。私の今の意見は所存他人の意見。ウィンティア嬢に、アデレーナ嬢に対する先入観を持たせる可能性があるわ」

「それはいけないことなの?」

「私もたった一回した会ったことはないのよ? もしもよ、ゾーヤが娘アデレーナの将来を憂いて、娘の婚約者を探していた、必死に繋ぎ、パトロンを見つけようとしていた、アデレーナ嬢もそれに応えようとした、とも取られるからよ」

「なるほど」

 リーナは頭の中で整理する。

「分かりました。そのようにします。もし、母親のグラーフ伯爵令嬢に関して聞かれたら、どこにも呼ばれないで通しますわ」

 リーナの言葉に満足そうに頷く両親。

「さ、そうと決まったらシミュレーションですわっ」

「「「「シミュレーション?」」」」

「ウィンティア嬢の役は、お兄様ね、あ、どこに行かれますのっ」

「この年でままごとはちょっと…………」

「俺、パス」

「逃しませんわっ」

 地方でしっかり鍛えられたリーナの華麗な足技が炸裂。足をくいって引っ掻けて、仲良し兄二人が転倒する。

「今日は寝かせませんわよっ」

「「ひーっ」」
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