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閑話 あるご令嬢
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「お父様っ、お母様っ、どうしましょうっ。私、頼られてしまいましたわっ」
「落ち着きなさいリーナ」
書斎にいたフォード侯爵当主の父親が、相変わらず騒がしい娘を諭すように言う。
今日はユミル学園で、ガーデンパーティーだからと、メイド達にめかし込まれた娘。
「淑女はそんな大きな声は出さないものよ」
侯爵夫人である母親は自らの手で、職務をこなす夫の為にお茶を淹れている。
興奮した娘は慣れた手付きのメイド達により、髪を戻されて、化粧をおとされていく。
「でもでもっ、私には一大事ですわっ。取り繕いましたけどっ、明日のランチどうしたらっ」
「落ち着きなさいリーナ。せめて、自分の部屋で着替えてから来なさい」
着飾った娘はメイドに連行されていく。なんだなんだと兄二人もやって来た。侯爵夫人は慣れた手付きで人数分のお茶を淹れる。
しばらくして、部屋着に着替えた娘、リーナがやってくる。
「で、どうしたらいいですか?」
「まずは事情説明しなさい。落ち着きなさい」
「はいっ」
ぐびぃっ、とお茶を一気飲み。
それを見て呆れる両親と兄二人。
リーナは二年前まで転地療養で地方にいた。で、うまくいったが、結果、逞しく、それは逞しく成長した。
同年代の少女達と、それっぽくお花で輪をつくって、なんておとなしい事は数えるほど。近所の子供達と裸足で走り回り、夏は川にダイブし、素手で魚を掴み取り。それは令嬢らしからぬ程、逞しく無事に成長。
久しぶりに再会した両親は、すっかり健康になった娘の姿に喜んだが、両親のためにと、両手な魚を持って帰って来た姿に愕然とした。貴族の令嬢でなく、療養地の地元の子供ならまだしも、リーナは侯爵令嬢だ。
こりゃいかんと、やっと、連れて帰り、淑女教育、勉強を詰め込んでユミル学園へ。まさか準特進に入れるとは思えず、教育担当した家庭教師達を招いて感謝の晩餐会を開いたくらいだ。
家庭教師達は口を揃える。
リーナ嬢は素直で、教えをきちんと守るし、機転も聞くし、覚えもいいからだと。なにより、幼いながらも気遣いができる。まだ活発で、それが所々出るけど、このリーナ嬢の性格を潰してはならない、と。
そうだなあ、って、両親と兄二人は思ったが、たまにこうやって令嬢らしからぬ所がでる。
救いは、侯爵家内でしか、この姿を出さない。
お茶で一息ついたリーナは、かくかく然々と、ガーデンパーティーでの話を説明。
「「「「常識ある貴族令嬢?」」」」
「はいっ」
「とびきりのワインを空けようっ」
素手で魚を掴んでいた娘がっ、と目頭を抑える父親。
「今晩はリーナの好きなメニューにしましょう。シェフに、豪勢にするようにとっ」
裸足で真っ黒に日焼けして走り回っていた娘が、まさか同級生からそのように言われて、高揚が隠せない母親がメインに指示。
「マナー講師に御礼状では?」
感慨深く言うのは上の兄。
「その子、大丈夫なのか? 猫かぶったお前に騙されてないか?」
リーナは下の兄の言葉にぷりぷり。
「失礼ですわっ」
「それでリーナ、そのお前の猫、じゃない、よそ行き顔に騙されて聞きたいことあると言ってくれたご令嬢はどこの誰だ?」
「お父様、言い換えているようで言い換えられていませんわよ。ウィンティア・ローザ伯爵令嬢ですわ」
両親が口の中で、名前を繰り返す。
「とってもかわいらしい方よ。おでこのキズがあるけど、気にならないくらいに」
リーナがあーでこーでと説明する。
「ローザは、まさか、セーレ商会の?」
確認するように父親が聞く。
「そうですわ」
娘の返事に、両親は顔を見合わせる。
「あなたっ」
「まさかと思ったが」
普段平然を通す両親の声のトーンが変わる。
「どうなさったの?」
様子がおかしい両親に、兄二人も視線を寄せる。
父親は自分を落ち着かせようと、お茶を一口。
「リーナ、そのウィンティア嬢の家事情は知っているか?」
「詳しくは知りませんけど、あまりうまくいってはないようですわね。わざわざ寮にいらっしゃいますし、最近まで遠方にいらっしゃったようですから」
「そうか。なら、リーナ、そのウィンティア嬢に過去を根掘り葉掘り聞いてならないぞ」
「その様な無粋な事は致しませんわ。それくらい弁えていますわ」
リーナはウィンティアの右眉の上にあるキズを見た時点、そしてメトロノームで殴られたと言った時にわずかに動揺していた様子を感じ取っていた。
「そうか、ならいい」
ほっとした両親。
家庭教師達の言うように、リーナのこの察する力や気遣いの出来るを大事にしようと実感した。
「落ち着きなさいリーナ」
書斎にいたフォード侯爵当主の父親が、相変わらず騒がしい娘を諭すように言う。
今日はユミル学園で、ガーデンパーティーだからと、メイド達にめかし込まれた娘。
「淑女はそんな大きな声は出さないものよ」
侯爵夫人である母親は自らの手で、職務をこなす夫の為にお茶を淹れている。
興奮した娘は慣れた手付きのメイド達により、髪を戻されて、化粧をおとされていく。
「でもでもっ、私には一大事ですわっ。取り繕いましたけどっ、明日のランチどうしたらっ」
「落ち着きなさいリーナ。せめて、自分の部屋で着替えてから来なさい」
着飾った娘はメイドに連行されていく。なんだなんだと兄二人もやって来た。侯爵夫人は慣れた手付きで人数分のお茶を淹れる。
しばらくして、部屋着に着替えた娘、リーナがやってくる。
「で、どうしたらいいですか?」
「まずは事情説明しなさい。落ち着きなさい」
「はいっ」
ぐびぃっ、とお茶を一気飲み。
それを見て呆れる両親と兄二人。
リーナは二年前まで転地療養で地方にいた。で、うまくいったが、結果、逞しく、それは逞しく成長した。
同年代の少女達と、それっぽくお花で輪をつくって、なんておとなしい事は数えるほど。近所の子供達と裸足で走り回り、夏は川にダイブし、素手で魚を掴み取り。それは令嬢らしからぬ程、逞しく無事に成長。
久しぶりに再会した両親は、すっかり健康になった娘の姿に喜んだが、両親のためにと、両手な魚を持って帰って来た姿に愕然とした。貴族の令嬢でなく、療養地の地元の子供ならまだしも、リーナは侯爵令嬢だ。
こりゃいかんと、やっと、連れて帰り、淑女教育、勉強を詰め込んでユミル学園へ。まさか準特進に入れるとは思えず、教育担当した家庭教師達を招いて感謝の晩餐会を開いたくらいだ。
家庭教師達は口を揃える。
リーナ嬢は素直で、教えをきちんと守るし、機転も聞くし、覚えもいいからだと。なにより、幼いながらも気遣いができる。まだ活発で、それが所々出るけど、このリーナ嬢の性格を潰してはならない、と。
そうだなあ、って、両親と兄二人は思ったが、たまにこうやって令嬢らしからぬ所がでる。
救いは、侯爵家内でしか、この姿を出さない。
お茶で一息ついたリーナは、かくかく然々と、ガーデンパーティーでの話を説明。
「「「「常識ある貴族令嬢?」」」」
「はいっ」
「とびきりのワインを空けようっ」
素手で魚を掴んでいた娘がっ、と目頭を抑える父親。
「今晩はリーナの好きなメニューにしましょう。シェフに、豪勢にするようにとっ」
裸足で真っ黒に日焼けして走り回っていた娘が、まさか同級生からそのように言われて、高揚が隠せない母親がメインに指示。
「マナー講師に御礼状では?」
感慨深く言うのは上の兄。
「その子、大丈夫なのか? 猫かぶったお前に騙されてないか?」
リーナは下の兄の言葉にぷりぷり。
「失礼ですわっ」
「それでリーナ、そのお前の猫、じゃない、よそ行き顔に騙されて聞きたいことあると言ってくれたご令嬢はどこの誰だ?」
「お父様、言い換えているようで言い換えられていませんわよ。ウィンティア・ローザ伯爵令嬢ですわ」
両親が口の中で、名前を繰り返す。
「とってもかわいらしい方よ。おでこのキズがあるけど、気にならないくらいに」
リーナがあーでこーでと説明する。
「ローザは、まさか、セーレ商会の?」
確認するように父親が聞く。
「そうですわ」
娘の返事に、両親は顔を見合わせる。
「あなたっ」
「まさかと思ったが」
普段平然を通す両親の声のトーンが変わる。
「どうなさったの?」
様子がおかしい両親に、兄二人も視線を寄せる。
父親は自分を落ち着かせようと、お茶を一口。
「リーナ、そのウィンティア嬢の家事情は知っているか?」
「詳しくは知りませんけど、あまりうまくいってはないようですわね。わざわざ寮にいらっしゃいますし、最近まで遠方にいらっしゃったようですから」
「そうか。なら、リーナ、そのウィンティア嬢に過去を根掘り葉掘り聞いてならないぞ」
「その様な無粋な事は致しませんわ。それくらい弁えていますわ」
リーナはウィンティアの右眉の上にあるキズを見た時点、そしてメトロノームで殴られたと言った時にわずかに動揺していた様子を感じ取っていた。
「そうか、ならいい」
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