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ガーデンパーティー⑨
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オムライスが運ばれてくる。
美味しそう。
リーナ嬢はなにやら魚の様だ。
ランチタイムの時間があるから、食べましょうかね。
食べながら、次の質問を。
これが肝になるはず。
「それで、アデレーナ嬢の評判は?」
魅了による事例八の当事者はアデレーナだ。魅了の力を使い、ナタリアとヴァレリーが被害者に名前が上がる。なんとか防げるものなら、なんとかしないと。もしかしたら、私のように、被害者の名前が変わる可能性もある。なら、簡単なのは、アデレーナが魅了を使っているからと告発して、魅了封じを施せればいいのだが。
この告発が問題。
一時、嫌がらせ目的で関係ない令嬢が槍玉に上がり、その家にも影響して大変な事が立て続けて起きた。故に告発したからといって、もし、間違いならば、告発者にもペナルティがある。悪意で告発したなら、罰をしっかりある。
慎重にならないと。下手に告発して、ウィンティアが罰を受けるような事態は避けないと。
「そうね」
悩む仕草のリーナ嬢が、ふと、視線が流れる。思わず、私も振り返る。
「私、ここでお食事するの初めてっ、嬉しいわっ」
「アディが喜んでくれるなら、予約したかいがあるよ」
昨日の真っ赤なドレスの女子生徒が、制服姿でやって来た。ま、当然か、学業中なんだし。
アディってのは、アデレーナの愛称なんだね。
ただ、問題は昨日、チョコレートを確保出来ず、責められた男子生徒とは違う生徒と一緒だと言うこと。しかも、腕なんか組んでる。え、ダメでしょ、ここ、中学校よ。腕、組んでいいのは、婚約していないと、ダメのはず。
「ローザさん」
リーナ嬢が呼ぶ。慌てて視線を戻す。
「こちらを見なさい。いいわね、私を見て、食事をなさい」
振り返るなってことね。
私はオムライスとリーナ嬢の方を向く。
どうやら、私達の隣、衝立の向こうのテーブルに着いたようだ。
「わぁっ、高いわぁっ」
「心配いらないよ。好きなのを頼むといいさ」
「ありがとうっ、嬉しいっ」
なんて会話が聞こえてきた。
で、一番高いコース選んでる。ランチで5700ルルだよ。私の通常お昼の学食10回以上の額だ。
「昨日のガーデンパーティーはどうだった?」
「もうっ、それがぁっ」
可愛らしい声だけど、なんだか、キャサリンを彷彿とさせて、イライラする。
せっかくのオムライスが。
聞いていると文句ばっかりだ。昨日までチョコレートを取り損ねた男子生徒とか、クラスメートとかね。
聞いていて気持ちよくはない。
本当にナタリアの妹なの? 十歳のヴァレリーの方が、もっと落ち着いているよ。
アイスティーとデザートはシフォンケーキと果物、生クリームのおしゃれなプレート。
食べながら、リーナ嬢をちらり、とても綺麗な動作で食べている。これがテーブルマナーなんだね。
「どうなさったの?」
「いえ、綺麗に召し上がっているなって」
「侯爵令嬢として、恥ずかしくない程度に学ばなくてはなりませんからね。私にはごく当たり前の、必要な技術ですわ」
そりゃそうだわな。上級貴族は、下級貴族の標になるように、小さな頃からマナーは最低限は叩き込まれるんだろうなあ。
「そう、ですか。私はマナーもなにも出来ませんから」
「貴女だって、学べば出来ますわよ。当人のやる気もありますもの」
「……………マナー教師には、いい思い出はありませんから」
そう。幼いウィンティアに着いたマナー教師。カップを持つ手が悪いからと、細い鞭を振りかざし、何度も殴打し、頭から熱い紅茶をかけた。
今でも、ウィンティアが拒絶反応を起こす存在。
「そう。何かマナーで困ったあったら、私でよければ相談に乗るわ。そもそもマナーなんて、誰かの真似なんだから、肩を張ってやったらつかれちゃうわ」
リーナ嬢は流れるような動きで紅茶を一口。
マナーは、真似かあ。そんな風に、幼いウィンティアに接してくれたら、良かったのに。
「マナー教師が、リーナ嬢なら、良かったのに」
「あら。光栄だわ」
ふふふ、とリーナ嬢は微笑んだ。
すべてを食べて席を立つ。
午後の授業があるからね。
気にはなる隣の席は、賑やかだ。運ばれてくる料理にいちいち大袈裟に反応していた。また、私が集中して聞いていたからかもしれないけど。
総合してのイメージは、キャサリンに近い感じだけど、なんだか、わざとらしいと言うか、あざといって言うか。キャサリンはどちらかと言うと、人の話を聞かない天然ご都合主義だ。このアデレーナは、わざとらしさの中に、悪意を感じる。
リーナ嬢に続き、横を通る時にちらっと顔を確認。
昨日、後ろ姿しか見てなかったから。
全然、ナタリア達と似てない。
ストレートの金髪はキラキラ。で、耳の上で一部髪をリボンで結んでいる。なんだか、子供っぽく、アイドルがするような髪型。顔立ちは確かに、女の私でも可愛らしいと思える。白い肌に鮮やかな真っ赤な目は、くりくり、としている。姿や仕草は子リスのような感じ。
可愛らしい少女だけど、だけど、なんだろう。
毒々しい感じを受ける。
ナタリア達は、癖っ毛の濃い茶色の髪。目も茶色で、少し切れ長感のある目をしている。全体的に優しいオーラがあるというか、親しみ易い感があるが、アデレーナには全く感じない。
本当に、ナタリアの妹なんだろうか、疑うレベルに似てない。
もしかしたら、ナタリア達が父親似、アデレーナが母親似になったのかな。ナタリア達の母親は自分にそっくりのお気に入りの次女だけ連れて行ったって話だし。
リーナ嬢に無言で促されて、私はレストランを出た。
アデレーナとナタリア達が似てない理由は後日分かるが、まだ先の話だ。
美味しそう。
リーナ嬢はなにやら魚の様だ。
ランチタイムの時間があるから、食べましょうかね。
食べながら、次の質問を。
これが肝になるはず。
「それで、アデレーナ嬢の評判は?」
魅了による事例八の当事者はアデレーナだ。魅了の力を使い、ナタリアとヴァレリーが被害者に名前が上がる。なんとか防げるものなら、なんとかしないと。もしかしたら、私のように、被害者の名前が変わる可能性もある。なら、簡単なのは、アデレーナが魅了を使っているからと告発して、魅了封じを施せればいいのだが。
この告発が問題。
一時、嫌がらせ目的で関係ない令嬢が槍玉に上がり、その家にも影響して大変な事が立て続けて起きた。故に告発したからといって、もし、間違いならば、告発者にもペナルティがある。悪意で告発したなら、罰をしっかりある。
慎重にならないと。下手に告発して、ウィンティアが罰を受けるような事態は避けないと。
「そうね」
悩む仕草のリーナ嬢が、ふと、視線が流れる。思わず、私も振り返る。
「私、ここでお食事するの初めてっ、嬉しいわっ」
「アディが喜んでくれるなら、予約したかいがあるよ」
昨日の真っ赤なドレスの女子生徒が、制服姿でやって来た。ま、当然か、学業中なんだし。
アディってのは、アデレーナの愛称なんだね。
ただ、問題は昨日、チョコレートを確保出来ず、責められた男子生徒とは違う生徒と一緒だと言うこと。しかも、腕なんか組んでる。え、ダメでしょ、ここ、中学校よ。腕、組んでいいのは、婚約していないと、ダメのはず。
「ローザさん」
リーナ嬢が呼ぶ。慌てて視線を戻す。
「こちらを見なさい。いいわね、私を見て、食事をなさい」
振り返るなってことね。
私はオムライスとリーナ嬢の方を向く。
どうやら、私達の隣、衝立の向こうのテーブルに着いたようだ。
「わぁっ、高いわぁっ」
「心配いらないよ。好きなのを頼むといいさ」
「ありがとうっ、嬉しいっ」
なんて会話が聞こえてきた。
で、一番高いコース選んでる。ランチで5700ルルだよ。私の通常お昼の学食10回以上の額だ。
「昨日のガーデンパーティーはどうだった?」
「もうっ、それがぁっ」
可愛らしい声だけど、なんだか、キャサリンを彷彿とさせて、イライラする。
せっかくのオムライスが。
聞いていると文句ばっかりだ。昨日までチョコレートを取り損ねた男子生徒とか、クラスメートとかね。
聞いていて気持ちよくはない。
本当にナタリアの妹なの? 十歳のヴァレリーの方が、もっと落ち着いているよ。
アイスティーとデザートはシフォンケーキと果物、生クリームのおしゃれなプレート。
食べながら、リーナ嬢をちらり、とても綺麗な動作で食べている。これがテーブルマナーなんだね。
「どうなさったの?」
「いえ、綺麗に召し上がっているなって」
「侯爵令嬢として、恥ずかしくない程度に学ばなくてはなりませんからね。私にはごく当たり前の、必要な技術ですわ」
そりゃそうだわな。上級貴族は、下級貴族の標になるように、小さな頃からマナーは最低限は叩き込まれるんだろうなあ。
「そう、ですか。私はマナーもなにも出来ませんから」
「貴女だって、学べば出来ますわよ。当人のやる気もありますもの」
「……………マナー教師には、いい思い出はありませんから」
そう。幼いウィンティアに着いたマナー教師。カップを持つ手が悪いからと、細い鞭を振りかざし、何度も殴打し、頭から熱い紅茶をかけた。
今でも、ウィンティアが拒絶反応を起こす存在。
「そう。何かマナーで困ったあったら、私でよければ相談に乗るわ。そもそもマナーなんて、誰かの真似なんだから、肩を張ってやったらつかれちゃうわ」
リーナ嬢は流れるような動きで紅茶を一口。
マナーは、真似かあ。そんな風に、幼いウィンティアに接してくれたら、良かったのに。
「マナー教師が、リーナ嬢なら、良かったのに」
「あら。光栄だわ」
ふふふ、とリーナ嬢は微笑んだ。
すべてを食べて席を立つ。
午後の授業があるからね。
気にはなる隣の席は、賑やかだ。運ばれてくる料理にいちいち大袈裟に反応していた。また、私が集中して聞いていたからかもしれないけど。
総合してのイメージは、キャサリンに近い感じだけど、なんだか、わざとらしいと言うか、あざといって言うか。キャサリンはどちらかと言うと、人の話を聞かない天然ご都合主義だ。このアデレーナは、わざとらしさの中に、悪意を感じる。
リーナ嬢に続き、横を通る時にちらっと顔を確認。
昨日、後ろ姿しか見てなかったから。
全然、ナタリア達と似てない。
ストレートの金髪はキラキラ。で、耳の上で一部髪をリボンで結んでいる。なんだか、子供っぽく、アイドルがするような髪型。顔立ちは確かに、女の私でも可愛らしいと思える。白い肌に鮮やかな真っ赤な目は、くりくり、としている。姿や仕草は子リスのような感じ。
可愛らしい少女だけど、だけど、なんだろう。
毒々しい感じを受ける。
ナタリア達は、癖っ毛の濃い茶色の髪。目も茶色で、少し切れ長感のある目をしている。全体的に優しいオーラがあるというか、親しみ易い感があるが、アデレーナには全く感じない。
本当に、ナタリアの妹なんだろうか、疑うレベルに似てない。
もしかしたら、ナタリア達が父親似、アデレーナが母親似になったのかな。ナタリア達の母親は自分にそっくりのお気に入りの次女だけ連れて行ったって話だし。
リーナ嬢に無言で促されて、私はレストランを出た。
アデレーナとナタリア達が似てない理由は後日分かるが、まだ先の話だ。
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