92 / 338
ガーデンパーティー⑨
しおりを挟む
オムライスが運ばれてくる。
美味しそう。
リーナ嬢はなにやら魚の様だ。
ランチタイムの時間があるから、食べましょうかね。
食べながら、次の質問を。
これが肝になるはず。
「それで、アデレーナ嬢の評判は?」
魅了による事例八の当事者はアデレーナだ。魅了の力を使い、ナタリアとヴァレリーが被害者に名前が上がる。なんとか防げるものなら、なんとかしないと。もしかしたら、私のように、被害者の名前が変わる可能性もある。なら、簡単なのは、アデレーナが魅了を使っているからと告発して、魅了封じを施せればいいのだが。
この告発が問題。
一時、嫌がらせ目的で関係ない令嬢が槍玉に上がり、その家にも影響して大変な事が立て続けて起きた。故に告発したからといって、もし、間違いならば、告発者にもペナルティがある。悪意で告発したなら、罰をしっかりある。
慎重にならないと。下手に告発して、ウィンティアが罰を受けるような事態は避けないと。
「そうね」
悩む仕草のリーナ嬢が、ふと、視線が流れる。思わず、私も振り返る。
「私、ここでお食事するの初めてっ、嬉しいわっ」
「アディが喜んでくれるなら、予約したかいがあるよ」
昨日の真っ赤なドレスの女子生徒が、制服姿でやって来た。ま、当然か、学業中なんだし。
アディってのは、アデレーナの愛称なんだね。
ただ、問題は昨日、チョコレートを確保出来ず、責められた男子生徒とは違う生徒と一緒だと言うこと。しかも、腕なんか組んでる。え、ダメでしょ、ここ、中学校よ。腕、組んでいいのは、婚約していないと、ダメのはず。
「ローザさん」
リーナ嬢が呼ぶ。慌てて視線を戻す。
「こちらを見なさい。いいわね、私を見て、食事をなさい」
振り返るなってことね。
私はオムライスとリーナ嬢の方を向く。
どうやら、私達の隣、衝立の向こうのテーブルに着いたようだ。
「わぁっ、高いわぁっ」
「心配いらないよ。好きなのを頼むといいさ」
「ありがとうっ、嬉しいっ」
なんて会話が聞こえてきた。
で、一番高いコース選んでる。ランチで5700ルルだよ。私の通常お昼の学食10回以上の額だ。
「昨日のガーデンパーティーはどうだった?」
「もうっ、それがぁっ」
可愛らしい声だけど、なんだか、キャサリンを彷彿とさせて、イライラする。
せっかくのオムライスが。
聞いていると文句ばっかりだ。昨日までチョコレートを取り損ねた男子生徒とか、クラスメートとかね。
聞いていて気持ちよくはない。
本当にナタリアの妹なの? 十歳のヴァレリーの方が、もっと落ち着いているよ。
アイスティーとデザートはシフォンケーキと果物、生クリームのおしゃれなプレート。
食べながら、リーナ嬢をちらり、とても綺麗な動作で食べている。これがテーブルマナーなんだね。
「どうなさったの?」
「いえ、綺麗に召し上がっているなって」
「侯爵令嬢として、恥ずかしくない程度に学ばなくてはなりませんからね。私にはごく当たり前の、必要な技術ですわ」
そりゃそうだわな。上級貴族は、下級貴族の標になるように、小さな頃からマナーは最低限は叩き込まれるんだろうなあ。
「そう、ですか。私はマナーもなにも出来ませんから」
「貴女だって、学べば出来ますわよ。当人のやる気もありますもの」
「……………マナー教師には、いい思い出はありませんから」
そう。幼いウィンティアに着いたマナー教師。カップを持つ手が悪いからと、細い鞭を振りかざし、何度も殴打し、頭から熱い紅茶をかけた。
今でも、ウィンティアが拒絶反応を起こす存在。
「そう。何かマナーで困ったあったら、私でよければ相談に乗るわ。そもそもマナーなんて、誰かの真似なんだから、肩を張ってやったらつかれちゃうわ」
リーナ嬢は流れるような動きで紅茶を一口。
マナーは、真似かあ。そんな風に、幼いウィンティアに接してくれたら、良かったのに。
「マナー教師が、リーナ嬢なら、良かったのに」
「あら。光栄だわ」
ふふふ、とリーナ嬢は微笑んだ。
すべてを食べて席を立つ。
午後の授業があるからね。
気にはなる隣の席は、賑やかだ。運ばれてくる料理にいちいち大袈裟に反応していた。また、私が集中して聞いていたからかもしれないけど。
総合してのイメージは、キャサリンに近い感じだけど、なんだか、わざとらしいと言うか、あざといって言うか。キャサリンはどちらかと言うと、人の話を聞かない天然ご都合主義だ。このアデレーナは、わざとらしさの中に、悪意を感じる。
リーナ嬢に続き、横を通る時にちらっと顔を確認。
昨日、後ろ姿しか見てなかったから。
全然、ナタリア達と似てない。
ストレートの金髪はキラキラ。で、耳の上で一部髪をリボンで結んでいる。なんだか、子供っぽく、アイドルがするような髪型。顔立ちは確かに、女の私でも可愛らしいと思える。白い肌に鮮やかな真っ赤な目は、くりくり、としている。姿や仕草は子リスのような感じ。
可愛らしい少女だけど、だけど、なんだろう。
毒々しい感じを受ける。
ナタリア達は、癖っ毛の濃い茶色の髪。目も茶色で、少し切れ長感のある目をしている。全体的に優しいオーラがあるというか、親しみ易い感があるが、アデレーナには全く感じない。
本当に、ナタリアの妹なんだろうか、疑うレベルに似てない。
もしかしたら、ナタリア達が父親似、アデレーナが母親似になったのかな。ナタリア達の母親は自分にそっくりのお気に入りの次女だけ連れて行ったって話だし。
リーナ嬢に無言で促されて、私はレストランを出た。
アデレーナとナタリア達が似てない理由は後日分かるが、まだ先の話だ。
美味しそう。
リーナ嬢はなにやら魚の様だ。
ランチタイムの時間があるから、食べましょうかね。
食べながら、次の質問を。
これが肝になるはず。
「それで、アデレーナ嬢の評判は?」
魅了による事例八の当事者はアデレーナだ。魅了の力を使い、ナタリアとヴァレリーが被害者に名前が上がる。なんとか防げるものなら、なんとかしないと。もしかしたら、私のように、被害者の名前が変わる可能性もある。なら、簡単なのは、アデレーナが魅了を使っているからと告発して、魅了封じを施せればいいのだが。
この告発が問題。
一時、嫌がらせ目的で関係ない令嬢が槍玉に上がり、その家にも影響して大変な事が立て続けて起きた。故に告発したからといって、もし、間違いならば、告発者にもペナルティがある。悪意で告発したなら、罰をしっかりある。
慎重にならないと。下手に告発して、ウィンティアが罰を受けるような事態は避けないと。
「そうね」
悩む仕草のリーナ嬢が、ふと、視線が流れる。思わず、私も振り返る。
「私、ここでお食事するの初めてっ、嬉しいわっ」
「アディが喜んでくれるなら、予約したかいがあるよ」
昨日の真っ赤なドレスの女子生徒が、制服姿でやって来た。ま、当然か、学業中なんだし。
アディってのは、アデレーナの愛称なんだね。
ただ、問題は昨日、チョコレートを確保出来ず、責められた男子生徒とは違う生徒と一緒だと言うこと。しかも、腕なんか組んでる。え、ダメでしょ、ここ、中学校よ。腕、組んでいいのは、婚約していないと、ダメのはず。
「ローザさん」
リーナ嬢が呼ぶ。慌てて視線を戻す。
「こちらを見なさい。いいわね、私を見て、食事をなさい」
振り返るなってことね。
私はオムライスとリーナ嬢の方を向く。
どうやら、私達の隣、衝立の向こうのテーブルに着いたようだ。
「わぁっ、高いわぁっ」
「心配いらないよ。好きなのを頼むといいさ」
「ありがとうっ、嬉しいっ」
なんて会話が聞こえてきた。
で、一番高いコース選んでる。ランチで5700ルルだよ。私の通常お昼の学食10回以上の額だ。
「昨日のガーデンパーティーはどうだった?」
「もうっ、それがぁっ」
可愛らしい声だけど、なんだか、キャサリンを彷彿とさせて、イライラする。
せっかくのオムライスが。
聞いていると文句ばっかりだ。昨日までチョコレートを取り損ねた男子生徒とか、クラスメートとかね。
聞いていて気持ちよくはない。
本当にナタリアの妹なの? 十歳のヴァレリーの方が、もっと落ち着いているよ。
アイスティーとデザートはシフォンケーキと果物、生クリームのおしゃれなプレート。
食べながら、リーナ嬢をちらり、とても綺麗な動作で食べている。これがテーブルマナーなんだね。
「どうなさったの?」
「いえ、綺麗に召し上がっているなって」
「侯爵令嬢として、恥ずかしくない程度に学ばなくてはなりませんからね。私にはごく当たり前の、必要な技術ですわ」
そりゃそうだわな。上級貴族は、下級貴族の標になるように、小さな頃からマナーは最低限は叩き込まれるんだろうなあ。
「そう、ですか。私はマナーもなにも出来ませんから」
「貴女だって、学べば出来ますわよ。当人のやる気もありますもの」
「……………マナー教師には、いい思い出はありませんから」
そう。幼いウィンティアに着いたマナー教師。カップを持つ手が悪いからと、細い鞭を振りかざし、何度も殴打し、頭から熱い紅茶をかけた。
今でも、ウィンティアが拒絶反応を起こす存在。
「そう。何かマナーで困ったあったら、私でよければ相談に乗るわ。そもそもマナーなんて、誰かの真似なんだから、肩を張ってやったらつかれちゃうわ」
リーナ嬢は流れるような動きで紅茶を一口。
マナーは、真似かあ。そんな風に、幼いウィンティアに接してくれたら、良かったのに。
「マナー教師が、リーナ嬢なら、良かったのに」
「あら。光栄だわ」
ふふふ、とリーナ嬢は微笑んだ。
すべてを食べて席を立つ。
午後の授業があるからね。
気にはなる隣の席は、賑やかだ。運ばれてくる料理にいちいち大袈裟に反応していた。また、私が集中して聞いていたからかもしれないけど。
総合してのイメージは、キャサリンに近い感じだけど、なんだか、わざとらしいと言うか、あざといって言うか。キャサリンはどちらかと言うと、人の話を聞かない天然ご都合主義だ。このアデレーナは、わざとらしさの中に、悪意を感じる。
リーナ嬢に続き、横を通る時にちらっと顔を確認。
昨日、後ろ姿しか見てなかったから。
全然、ナタリア達と似てない。
ストレートの金髪はキラキラ。で、耳の上で一部髪をリボンで結んでいる。なんだか、子供っぽく、アイドルがするような髪型。顔立ちは確かに、女の私でも可愛らしいと思える。白い肌に鮮やかな真っ赤な目は、くりくり、としている。姿や仕草は子リスのような感じ。
可愛らしい少女だけど、だけど、なんだろう。
毒々しい感じを受ける。
ナタリア達は、癖っ毛の濃い茶色の髪。目も茶色で、少し切れ長感のある目をしている。全体的に優しいオーラがあるというか、親しみ易い感があるが、アデレーナには全く感じない。
本当に、ナタリアの妹なんだろうか、疑うレベルに似てない。
もしかしたら、ナタリア達が父親似、アデレーナが母親似になったのかな。ナタリア達の母親は自分にそっくりのお気に入りの次女だけ連れて行ったって話だし。
リーナ嬢に無言で促されて、私はレストランを出た。
アデレーナとナタリア達が似てない理由は後日分かるが、まだ先の話だ。
85
お気に入りに追加
545
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
捨てられた侯爵夫人の二度目の人生は皇帝の末の娘でした。
クロユキ
恋愛
「俺と離婚して欲しい、君の妹が俺の子を身籠った」
パルリス侯爵家に嫁いだソフィア・ルモア伯爵令嬢は結婚生活一年目でソフィアの夫、アレック・パルリス侯爵に離婚を告げられた。結婚をして一度も寝床を共にした事がないソフィアは白いまま離婚を言われた。
夫の良き妻として尽くして来たと思っていたソフィアは悲しみのあまり自害をする事になる……
誤字、脱字があります。不定期ですがよろしくお願いします。
天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される
雪野ゆきの
ファンタジー
記憶を失った少女は森に倒れていたところをを拾われ、特殊部隊の隊長ブレイクの娘になった。
スペックは高いけどポンコツ気味の幼女と、娘を溺愛するチートパパの話。
※誤字報告、感想などありがとうございます!
書籍はレジーナブックス様より2021年12月1日に発売されました!
電子書籍も出ました。
文庫版が2024年7月5日に発売されました!
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる