ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

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ガーデンパーティー⑧

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 次の日。
 ランチタイムだ。
 私はリーナ嬢と食堂に。
 ユミル学園は大きな学校だから、相応に大きな食堂が幾つかある。ほとんどがカウンターに並んで、食事を指定して受け取るスタイルだ。
 だけど、ちゃんとしたレストランスタイルもある。リーナ嬢は当然レストランスタイルを利用している。もちろん、料金も高い。
 いつも賑やかな食堂とは違い、静かなレストラン。
 奥まった席にリーナ嬢は選び着席する。
 学園内のレストランに、ちゃんとしたウエイトレスさんがいる。
 メニューを見ると、やっぱり高め。学食の値段ではないが、仕方ないもんね。マナーが心配なので、オムライスにしよう。これならスプーンでいける。前菜に、ドリンクとデザートまで付いてる。ちょっとしたコースじゃん。

「それで、ローザさん」

「はい」

 早速っ。

「食べながらで申し訳ないのだけど、貴女の質問に答える形でいいかしら?」

「は、はい。お願いします」

 私は姿勢を正す。ランチタイムの時間制限があるからね。

「昨日の赤いドレスの女子生徒は、アデレーナ・グラーフ伯爵で間違いないですか?」

「そうね」

 リーナ嬢は私の質問に丁寧に答えてくれる。
 やはり、あの赤いドレスの女子生徒は、ナタリアの妹、元アデレーナ・サーデク。貴族クラスの一般科に在籍している。

「彼女の性格は、私が言及出来ないわ。挨拶した事しかないの」

 結構わがままな雰囲気だったけど。

「グラーフ伯爵の社交界の立場はどうですか?」

「そうねえ」

 前菜が運ばれてくる。
 色とりどりの野菜、酢漬けされた白身魚、小さなキッシュ。ぱくっ。
 上品に口に運ぶリーナ嬢。やっぱり貴族のご令嬢だなあ。

「ローザさんは、グラーフ伯爵のご令嬢、つまり、アデレーナさんのお母様はご存知?」

「直接はしりません。人から聞いただけです」

「そう。私もそうよ。家族が話しているのを聞いただけだから、それをどう判断するか、ローザさん次第」

 なんだか、本当にリーナ嬢は中学一年生なのかな? すごく大人っぽい。いや、そうならなくてはいけなかったのかな。

「はっきりいって立場は悪いわ。家族の話を聞き齧っただけでもね。まだ、幼い子供達を残して、夫の名誉を守らず、子爵家も守らず、お気に入りの次女だけ連れて逃げた薄情な令嬢だと言われているわ」

 そこはレオナルド・キーファーの情報と同じだ。

「ただね、こんな風に言われるようになる前は、同情する声もあったそうよ」

「えっ?」

 そっと口元をフキンで拭うリーナ嬢。流れるような動きだ。

「グラーフ伯爵令嬢は騎士である夫を、不名誉な亡くなり方で失った。その亡くなった夫を責めるような話が出ていたわ。残される家族を省みないような男だと、ね。そんな男に嫁がされた気の毒な女性だと」

 そんな。

「流れが変わったのは、ある夜会だそうよ。もちろん私は出席はしていないのだけど、両親が参加されていたのよ」

 そこで、ナタリア達の母親、ゾーヤ・グラーフ伯爵令嬢は、別の貴族男性のパートナーと参加。夫が亡くなり、実の弟、ナタリア達にしたら叔父様夫婦が亡くなり、まだ一年も経ってないのに。本来なら黒とか暗色の衣装に、装飾品は控えて、付けても小さな真珠のみなのに。
 パートナーの男性と対になるような、派手な衣装と装飾品で登場。始終イチャイチャしていたそうだ。
 
「そこに知り合いがきつく責めたそうよ。喪に服さず、恥を知れと」

 そうだわなあ。

「更に、残していった子供達は着の身着のままになり、サーデク家が人手に渡るように仕向けていたと暴露したのよ」

 ナタリア達が路頭に迷うのが分からなかった、なんていわせないと、その人は夜会でゾーヤ・グラーフ伯爵令嬢に事実を突きつけた。

「それで、立場が悪くなった?」

「ええ、そうね。お母様にお聞きしたけど、あの一件でどこのお茶会も夜会もお呼びがかからないのは事実よ」

 そっかあ、やっぱり立場が悪いんだない。
 なら、なんで娘であるアデレーナは、あんな態度だったんだろう? 自分だけも、きちんとした態度をしないと、後々大変じゃないの?
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