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ガーデンパーティー⑦

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 デザートを堪能。うーん、別腹ー。
 小さいからもう一個食べちゃおっかなー。
 なんて思っていると、なにやら小さな言い争いが。

「ごめん、アディ、もうないって」

「もうっ、私はチョコレートがいいって言ったでしょっ。なんでないのよっ」

「すぐになくなったって……………」

「あなたがとろとろしてるからでしょっ」

 なんだなんだ?
 そちらに向くと、かなりの生徒が見ている。
 そこにはおどおどした茶髪の男子生徒と、真っ赤なドレスを纏った金髪の女子生徒。
 チョコレートあったんだ。知らなかった。だけどこちらでは高級品だから、数がなくて、あっという間に完売されたのかな?
 話の内容からして、女子生徒の希望するチョコレートを取り損ねて、責められてるってことね。
 たかが、チョコレートくらいで、って、私は思うけどなあ。幼いなあ。
 なんて思っている間も、真っ赤なドレスの女子生徒は、男子生徒を責め立てる。

「まあ、グラーフ伯爵令嬢だわ」

 眉を寄せて呟くのは、クラスメートの女子生徒。彼女は準特進で最も爵位の高い侯爵家のご令嬢だ。こちらは黄色で白いリボンがあしらわれた可憐なドレスだ。名前はリーナ・フォード侯爵令嬢。あのお見舞いのクッキーを、人気店のものだとしっていたのも彼女だ。
 グラーフ伯爵。
 私の中で、ゆっくりと血が落ちていく。
 ナタリアの母親の実家だ。
 て、ことは、あの真っ赤なドレスの女子生徒、もしかして。

「あの、フォード侯爵令嬢様」

 私は咄嗟に、扇で口元を隠している彼女に声をかける。
 本来は、侯爵令嬢に伯爵令嬢が気軽に声をかけるのは、よろしくないが、ここはある程度の平等が唄われる学園内。失礼のないようにすれば、許される、はず。

「何かしら?」

 ちら、と目だけで、私を見る。

「あの赤いドレスの方をご存知のようですが」

「ええ、存じてますわ」

 それがどうかしたの? みたいな目で見てくる。

「不躾で失礼します。あの赤いドレスの方の事を、教えてもらえませんか?」

 小声で聞く。
 す、と目を細めるリーナ令嬢。

「何故、その様な事を? わたくし、貴女はその様な事には興味がないように受け取っていましたわ」

 つまり、それは、私が貴族社会にいながら、全く関わってないと言うことを彼女は分かっている。
 レオナルド・キーファーの情報から、ナタリア達を捨てた母親、今はグラーフ伯爵令嬢は、貴族社会ではかなり立場は悪い。なら、連れていったお気に入りの娘だって、影響を受けていないかと思っていたが。
 未だに、男子生徒にぐちぐち文句言ってる彼女が、ナタリアの妹、アデレーナではないだろうかと。私と同い年で、グラーフ伯爵令嬢なら、そうでないかって。
 あの赤い本、事例八の魅了の当事者で、ナタリアの妹。内容は全くわからないけど、少しでも情報が欲しい。
 なら、目の前にいる、貴重な情報源を逃せない。

「そう、思われても仕方ないと自覚しています。私情で、理由は直ぐに申し上げる事ができませんが、彼女の人となりを知りたいのです」

「何故、わたくしにお聞きになるのです?」

「貴女が、常識ある貴族令嬢だからです」

 すう、と目を細める。
 あ、嬉しそう。
 そう、彼女は常識がある貴族令嬢だと私は思っている。
 あの入学式の次の日、私に謝罪してきた。
 何でかと思ったら、なんとあのペルク侯爵令嬢と従姉の関係にあり、あの時自分が彼女を止めるべきだったと。
 リーナ嬢が謝るような事じゃないのに。ただ、親戚だけだというだけで、格下の伯爵令嬢、しかも貴族のスタートラインにすらいない私に謝罪してきた。リーナ嬢曰く、上位貴族となると、下位の貴族の模範にならなくてはならない。つまり、礼儀をきちんとしないといけないからって。
 それを聞いて、私は、ああ、貴族って大変なんだなーって思った瞬間だけど。リーナ嬢の様にきちんと謝罪できる人が、常識のある貴族令嬢なんだって思った。

「貴女なら、偏見を持たずに、正解に教えて頂けると思ったからです」

 ふう、と息を付くリーナ嬢。

「そこまで仰るのであれば。でも、ここで話すべきではありませんわ。明日、ランチをご一緒しましょう」

「あ、ありがとうございます」

 良かったっ、情報ゲット出来そうだ。
 ナタリアとヴァレリーをあの犠牲者欄から、なんとか抹しないと。
 リーナ嬢は、優雅に微笑んで去っていく。
 心配そうに聞いていたアンネを誘い、もう一度デザートに向かった。
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