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ガーデンパーティー②

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 やっぱり、大人の男性の手だね。ナタリアの手とは全然違う。
 でも、いいのかなあ? 保留婚約者と手を繋ぐような事って。ローザ伯爵家の庭だし、いいのかなあ? 職場ではよく患者さんと手を繋いで歩いたなあ。
 この保留婚約者は違う、なんだか、恥ずかしい。

「歩くの早いですか?」

 心配そうに聞いてくる保留婚約者。
 
「あ、はい、大丈夫です」

 なんだか、恥ずかしい。これ、恥ずかしい。保留婚約者に手を引かれて歩くの、恥ずかしい。慣れないから恥ずかしいっ。庭で良かっ………………

 ぎゃーっ、庭掃除しているヴァレリーがーっ。

 びっくりしているじゃんっ。

「ウィンティア嬢、どうされました?」

「あ、いえ、何でも」

 呆然と見ているヴァレリーの前で、一旦停止。えっ、ほら、発車しましょう

「そう言えば、君はよく掃除してますね」

 びく、と震えるヴァレリー。

「え、ええ、よく働いてくれてます」

 咄嗟に答えるのは私。

「君、名前は?」
 
「………ヴァレリー、ヴァレリー・サーデクです」

 ぴくり、と私の手を乗せていた手が震える。

「キーリク・サーデク殿のご子息、ですね?」

 えっ? 嘘っ、なんで知ってるのっ? だって、同じ騎士って言っても畑違いだし、年だって離れてるし。いや、現役の騎士が、酒場で頭を打って死亡なんて、ショッキングな事件、知らない訳ないか。
 当のヴァレリーは真っ青だ。

「あの、キーファー様、ヴァレリーはとっても真面目で………」

 私は何かを言わないと焦る。

「そうでしょうね。サーデク殿もとても真面目な方でしたし」

「えっ、まさか、ご存知なんですか?」

「知ってるも何も、新人時代の教官騎士ですよ」

 世間って狭い。
 父親をどうにか言われないと分かり、ヴァレリーも落ち着いたみたい。

「我々もあの事件は腑に落ちないままです」

「なら、どうして訴えないのですか?」

 疑問に思っているのなら。
 保留婚約者が困った顔。

「我々は同僚とは言え、他人ですからね。聞き入れて貰えません」

 そうなんだ。
 ヴァレリーはがっくり。
 いまでも騎士の中でも、キーリク・サーデクの件は疑問のままみたい。だけど、すでに処理された事件はどうしようもないって。
 ぺこり、してからヴァレリーは箒片手に帰って行った。
 で、散歩再開。

「ウィンティア嬢」

「はい」

「貴女の専属メイドですが」

「ナタリアがどうしました」

「キーリク・サーデクのご息女ですよね」

 やっぱり。ばれてるなら仕方ない。

「はい。そうです。いつ頃から?」

「割りと早い時期に。彼女をザーイク殿の葬儀の時に見かけていました。ちょうど、母親に扇で叩かれている所でした」

 確か、自分そっくりのアデレーナだけ連れて、サーデク子爵の籍を抜いってやつね。

「すぐに、別の人が彼女達を保護していたのを見て、少し安心したんですが」

「ナタリアは一生懸命ないい子なんです」

 だって、本当だもんね。

「ふふふ」

 何やら苦笑い。

「彼女を信頼されているんですね。羨ましい」

「え? なんで?」

「私には、まだ、距離置いているでしょう?」

 うっ。それは、だってさ。
 私自身、男性には苦手意識がある。
 どうしようかな、正直に言うか。

「私、男性に苦手意識があります。特に大人の方は」

 いろいろあったのよ。
 それを聞いて、さ、と顔色を帰る保留婚約者。

「失礼、ウィンティア嬢、嫌な質問でしたね」

「あ、いえ、事実ですし」

 ふう、と、私の息を吐き出す。

「あのキーファー様」

「はい」

「キーリク・サーデク様の件、詳しい知っていますか?」
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