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学園生活スタート⑧
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時間通りにアンジェリカ・ウーヴァ公爵令嬢がいらっしゃる。大所帯で。
運び込まれる箱。あれにドレスが入っているんだろけど、数が多いなあ。
「あら、ウィンティア嬢、お久しぶりね」
「はい。ウーヴァ公爵令嬢様」
ぺこり。
「アンジェリカでいいのよ。早速で悪いけど、気に入ったドレスを選んでちょうだい。少し手直しするわ。もう、時間ギリギリだから、ちゃっちゃとやりましょう」
「あの、アンジェリカ様、お気遣いは光栄なのですが、私では、その足りない部分が…………」
特に背丈。アンジェリカ嬢と私は約二十センチ、でもってスタイル抜群ときたもんだ。私が来たら、ぶっかぶかだ。
「ふふっ、心配ないわよ。つてがあってね、そう言ったリメイク専門の工房に言えば、二週間もすれば出来上がるのよ」
「でも、私、あんまりお金持ってなくて…………」
「? 何を言ってるの? ローザ伯爵が出すに決まっているじゃない」
一応親だからかな。
「ウィンティア、心配いない。仕立てるよりずっと安くなるから」
「はぁ」
でもなあ。次々に出てくるドレスが、キラキラしてまぶしい。
バタバタ
あ、この足音はっ。
生物学上の両親の顔が、うげえ、と歪む。
バタンッ
はい、ノックなし。マナー違反女キャサリン登場。
今日もどっかに出掛けていたのが、白のフリルの着いたピンク帽子に、同系色のドレス。見た目お人形さんのキャサリンは、似合っている。
「まあっ、新しいドレスですのっ。もう、お父さんったらガーデンパーティーには新しいドレスは作らないっておっしゃったけど、私の為にやっぱり準備してくれたんですねっ」
一体どんな思考回路なんだろう?
てか、アンジェリカ嬢見えないの? 無表情で、扇で目元の下から隠している。
誰の許可もないのに、キャサリンは箱から出されたドレスを両手に一枚ずつかける。
バシッバシッ
「きゃっ」
え?
アンジェリカ嬢の扇が、強かにキャサリンの腕を打つ。
「な、何をなさいますのっ、ぐすっ、お父様っ、お母様っ」
わざとらしく、両親に駆け寄るキャサリンだが。
「申し訳ありませんウーヴァ公爵令嬢」
「申し訳ありません」
生物学上の父親が、キャサリンの空っぽ頭を掴んで、無理やり下げさせる。
アンジェリカ嬢は扇で再び口元を隠す。
「ローザ伯爵家のご長女様は、どうやら、何かが欠落しているご様子。私、こういった輩は嫌いですの。せめて最低限のマナーを身につけたらいらっしゃいな」
はい、出てけって意味だよね。
「酷いわっ、私にはドレスが、新しいドレスが必要なのにっ。ガーデンパーティーですのよっ」
「今あるドレスで何とかしなさい」
キャサリンを引きずる生物学上の父親。
「酷いっ、酷いわっ、一度袖を通したドレスでパーティーに出ろって仰るのっ? 私、私、惨めですわっ、恥ずかしいですわっ」
こいつの頭どうなってんだろう?
おさがり文化やレンタルドレスが根付いているこの地で、一度袖を通したら着ないって、悪趣味な成金のすることだよ。ルルディ王国の王室だって、そうなのに。
まるで悲劇のヒロインのようにわななくキャサリン。
「だったら小物や髪型を変えなさい。同じドレスでもガラッと印象が変わるわ。それをやりこなすのが、貴族女性の嗜みなのよ」
と、生物学上の母親が諭す。これが正論。
「だったらあのドレスはなにっ? 私の為に仕立ててくださったのでしょうっ」
「あれはウーヴァ公爵令嬢が、ウィンティアに譲って下さると、わざわざお持ちくださったのよ」
「譲る…………」
キャサリンが沈黙。すると、両親の腕を振り払う。
「まあっ、この私に中古品を譲るなんてっ。私はセーレ商会の広告塔なんですのよっ。誰かが着たような中古品なんて着れる訳がないでしょうっ」
文句言ってる、しかも意味不明。私、ウィンティアにって聞こえなかったの? 怒りの先は、ウーヴァ公爵令嬢だし、当のアンジェリカ嬢は冷たい目でキャサリンを見下す。いいわけ? そんなことして。
生物学上の父親が実力行使。キャサリンの腕を掴み、強制退場。
「地下に」
わあ、とうとう自室軟禁ではなく、地下になったよ。
ああ、やっと静かになったよ。
「さ、ウィンティア嬢、どれがいいかしら? 私的にはこのピンクがおすすめよ」
と、なんだか、ショッピングを楽しんでいるような感じで、アンジェリカ嬢が振り返った。
運び込まれる箱。あれにドレスが入っているんだろけど、数が多いなあ。
「あら、ウィンティア嬢、お久しぶりね」
「はい。ウーヴァ公爵令嬢様」
ぺこり。
「アンジェリカでいいのよ。早速で悪いけど、気に入ったドレスを選んでちょうだい。少し手直しするわ。もう、時間ギリギリだから、ちゃっちゃとやりましょう」
「あの、アンジェリカ様、お気遣いは光栄なのですが、私では、その足りない部分が…………」
特に背丈。アンジェリカ嬢と私は約二十センチ、でもってスタイル抜群ときたもんだ。私が来たら、ぶっかぶかだ。
「ふふっ、心配ないわよ。つてがあってね、そう言ったリメイク専門の工房に言えば、二週間もすれば出来上がるのよ」
「でも、私、あんまりお金持ってなくて…………」
「? 何を言ってるの? ローザ伯爵が出すに決まっているじゃない」
一応親だからかな。
「ウィンティア、心配いない。仕立てるよりずっと安くなるから」
「はぁ」
でもなあ。次々に出てくるドレスが、キラキラしてまぶしい。
バタバタ
あ、この足音はっ。
生物学上の両親の顔が、うげえ、と歪む。
バタンッ
はい、ノックなし。マナー違反女キャサリン登場。
今日もどっかに出掛けていたのが、白のフリルの着いたピンク帽子に、同系色のドレス。見た目お人形さんのキャサリンは、似合っている。
「まあっ、新しいドレスですのっ。もう、お父さんったらガーデンパーティーには新しいドレスは作らないっておっしゃったけど、私の為にやっぱり準備してくれたんですねっ」
一体どんな思考回路なんだろう?
てか、アンジェリカ嬢見えないの? 無表情で、扇で目元の下から隠している。
誰の許可もないのに、キャサリンは箱から出されたドレスを両手に一枚ずつかける。
バシッバシッ
「きゃっ」
え?
アンジェリカ嬢の扇が、強かにキャサリンの腕を打つ。
「な、何をなさいますのっ、ぐすっ、お父様っ、お母様っ」
わざとらしく、両親に駆け寄るキャサリンだが。
「申し訳ありませんウーヴァ公爵令嬢」
「申し訳ありません」
生物学上の父親が、キャサリンの空っぽ頭を掴んで、無理やり下げさせる。
アンジェリカ嬢は扇で再び口元を隠す。
「ローザ伯爵家のご長女様は、どうやら、何かが欠落しているご様子。私、こういった輩は嫌いですの。せめて最低限のマナーを身につけたらいらっしゃいな」
はい、出てけって意味だよね。
「酷いわっ、私にはドレスが、新しいドレスが必要なのにっ。ガーデンパーティーですのよっ」
「今あるドレスで何とかしなさい」
キャサリンを引きずる生物学上の父親。
「酷いっ、酷いわっ、一度袖を通したドレスでパーティーに出ろって仰るのっ? 私、私、惨めですわっ、恥ずかしいですわっ」
こいつの頭どうなってんだろう?
おさがり文化やレンタルドレスが根付いているこの地で、一度袖を通したら着ないって、悪趣味な成金のすることだよ。ルルディ王国の王室だって、そうなのに。
まるで悲劇のヒロインのようにわななくキャサリン。
「だったら小物や髪型を変えなさい。同じドレスでもガラッと印象が変わるわ。それをやりこなすのが、貴族女性の嗜みなのよ」
と、生物学上の母親が諭す。これが正論。
「だったらあのドレスはなにっ? 私の為に仕立ててくださったのでしょうっ」
「あれはウーヴァ公爵令嬢が、ウィンティアに譲って下さると、わざわざお持ちくださったのよ」
「譲る…………」
キャサリンが沈黙。すると、両親の腕を振り払う。
「まあっ、この私に中古品を譲るなんてっ。私はセーレ商会の広告塔なんですのよっ。誰かが着たような中古品なんて着れる訳がないでしょうっ」
文句言ってる、しかも意味不明。私、ウィンティアにって聞こえなかったの? 怒りの先は、ウーヴァ公爵令嬢だし、当のアンジェリカ嬢は冷たい目でキャサリンを見下す。いいわけ? そんなことして。
生物学上の父親が実力行使。キャサリンの腕を掴み、強制退場。
「地下に」
わあ、とうとう自室軟禁ではなく、地下になったよ。
ああ、やっと静かになったよ。
「さ、ウィンティア嬢、どれがいいかしら? 私的にはこのピンクがおすすめよ」
と、なんだか、ショッピングを楽しんでいるような感じで、アンジェリカ嬢が振り返った。
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