ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

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やり直し?⑨

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 めちゃくちゃ嫌な予感。
 怒鳴りながら入って来たのは、くるくるとした茶色の巻き毛の女子生徒。きっと上級生だよね。私達はピカピカの制服で、まだ馴染んでない感があるけど。この女子生徒にはないからね。
 しかも、怒ってる。凄く怒ってる。
 スルーしたいけど、アンネがびっくりした顔で私を見てくる。
 私は無意識に寄った眉間のシワを指で伸ばす。隠れても仕方ない。後でトラブルになったら嫌だし。
 あー、もしかしたら、あの礼儀違反女キャサリンが、何かこの女子生徒の怒りを買ったんじゃないかなあ? 私はまったく関係ないのをしっかり説明しよう。
 私は大きくため息一つしてから、立ち上がる。

「一応、私ですが」

 認めたくないが、一応、私は生物学上妹。
 一斉に視線が集まる。ああ、やだなあ、こんな注目の仕方は。
 女子生徒の顔見たら、不味かったかも知れないと思った。だって、完全に頭に血が登ってるもん。
 女子生徒はずかずか入って来て、私に怒鳴り付ける、

「キャサリン・ローザの妹ねっ、謝りなさい、私に謝りなさいっ」

「はぁ?」

 いきなり、何?

「うるさいわねっ」

 って突き飛ばされた。
 私は後ろに尻餅を着きそうになり咄嗟に机に掴まり踏みとどまる、そして、悲鳴。

「みっともない傷女がっ、私にっ、私にっ、口答えするんじゃないわよっ。あんたの姉が、私からっ、マルク様を奪ったんだからっ」

 そう言うことね。
 おそらくあの礼儀違反女の毒牙に、そのマルクって人がかかったんだね。この女子生徒はマルクって人の彼女さんかな? いや、もしかしたら、婚約者かも。ゲスな恋は、キャサリンのレオナルドコースしかやってないから、この女子生徒は知らない。もしかしたら、まったく関係ない人物かも。
 でも、ここは冷静に、冷静に。
 私は体勢を整える。

「私には関係のない話です。そういう事は直接当人に言ってください」

 正論。
 だって、そうでしょう? なんで私に謝らせるわけ? やらかしたのはキャサリンでしょう? 当人に言うべきじゃない?
 近くの生徒がそんな顔している。

「伯爵のくせにっ、侯爵家の私に口答えするんじゃないわよっ、謝りなさいっ、伯爵のくせにっ」

「それは貴女が偉いんじゃないくて、ご両親では?」

 そりゃそうだわな、って顔が並ぶ。
 貴族って言っても、偉いのは当主とその伴侶、そして諸事情で代行している人。嫡子となれば、多少はってくらいだけど、小さな社交界でもあるルルディ学園で、こういったいざこざ起こしたら、良いわけがない。
 しかし、立場がなくても、貴族籍に身を置くのであれば、責任が着くまとう。当然、この女子生徒の行為はよろしくない。

「うるさいっ、妹ならっ、謝りなさいっ」

 この女子生徒むちゃくちゃだな。

「私、あの女を姉なんて毛程も思っていません。文句なら当人、もしくはローザ伯爵当主に直接言ってください」

「なんでよっ」

 それは、こっちがだよ。

「一緒に住んでいるんならっ、あんたが責任を取りなさいよっ」

「私、寮生なので」

 女子生徒の顔がますます赤くなる。元の顔が分からなくなるまで形相が変わる。まるで、鬼のようだ。

「私に、私に口答えを…………無礼者、無礼者、無礼者…………」

 不味いかも。

「無礼者ーっ」

 さらに突き飛ばそうと、手を伸ばしたが、ぴたり、と止まる。

「やめろってっ」

 男子生徒の一人が、女子生徒の腕を掴んでいる。

「何をしている」

 凄い低音の男性の声。
 あ、副担の男性教師、ダグラス先生だ。
 つかつかと、男性先生と女子生徒に近付く。

「この無礼者を摘まみ出しなさいっ」

「そうするとしよう」

 ダグラス先生は迷わず女子生徒の腕を掴む。

「無礼者っ、私を誰だと思っているのっ」

「初対面ですが」

 さすがの女子生徒も男性教師の力に勝てず、引きずり出され、教室の外に。

「ローザさん、大丈夫っ?」

 アンネが駆け寄ってきた。

「ええ、大丈夫。ありがとうアンネさん。それから、えっと」

 あの女子生徒の腕を掴んだ男性生徒、あ、私の後ろの席の生徒だ。

「あ、マーク・ベルグです」

 名字があるなら、貴族だね。貴族だろうがなんだろうが、お礼を言わないと。

「ありがとうございます、ベルグさん」

「い、いえ」

 照れてる。
 この男子生徒、一際背が高いなあ。
 なんて思っていると、ダグラス先生がマクガレル先生と共に戻って来た。

「一体何があったのですか?」
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