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作戦⑩
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「お嬢様、やっぱりこっちのドレスが…………」
「これでいいでしょ。どうせ向こうも分かっているはずだし」
ナタリアが薄い緑色に、ピンクのお花がついたドレスを出すが、よれよれワンピースにした。
「ウィンティア、着替えなさい」
「嫌です」
やっぱり言われたけど拒絶。だって、向こうだって着るものに関して言って来たからね。
これだけは、私のって、言えるもん。ウィンティアが色々お手伝いしてゲットしたワンピースだもん。
胸を張る。
「両極端な姉妹ね」
ってあのウーヴァ公爵夫人に、言われたけど、構わない。本日は婿養子の旦那さんはいないね。
「ウィンティア嬢っ」
でも、紙面上の婚約者は来ていた、お仕事、忙しくないの?
「名前で呼ばないで頂けます?」
ガックリしている。
「あなた頑固ね。分からなくはないけど」
って言ったのは、ウーヴァ公爵令嬢の、名前は確か、アンジェリカ・ウーヴァ。ナタリア情報です。
爵位の低いものから、高いものによほど用がない限り声をかけないんだって。ぺこりしとこう。
それから応接室に移動。
でもって、長い挨拶が始まるけど、私の準特進クラス合格おめでとうが含まれていたので、やっぱり嬉しい。
こ難しい話が続いて、あくび出そう。
「では、ウーヴァ公爵家より、この度の」
要は、私の入学祝いね。
向こうのいぶし銀な執事さんが、私に渡してくれる。
な、なんだろ? 綺麗にラッピングされてるけど。
「あ、ありがとうございます」
礼儀として、言わないとね。
開けた方がいいのかな?
とりあえず開けてみる。
「と、時計っ」
そう、懐中時計。
私が欲しかったやつ。こちらにスマホはないし、腕時計なんてそうない。あっても、すごく高い。
ナタリアと時計屋さんで見たら、最低額、十万はした。お祝いの品にしては高価過ぎるよ。しかもこれ、店頭に並んでいたやつにそっくりだ。確か、三十万近くしなかったっけ?
「い、頂けませんっ、こんな高い物っ」
私は慌てて押し返す。
ウーヴァ公爵夫人は、扇で口元を隠す。
「本当に彼女達は姉妹なのかしら? こうも反応が違うなんて」
な、なんの事だろう?
あのキャサリンと比べられているのは分かるけど、あれはあれよ、別の生物よ。
試されているようだ。
「お祝いなら消耗品にしてください。鉛筆一ダースでいいです。赤鉛筆と青鉛筆つけてください」
欲しいのはそういうの。はあ、とため息。
「お母様、きちんと、説明なさって」
娘、アンジェリカ嬢にせっつかれて、ウーヴァ公爵夫人がはあ、と話し出す。
「これはあの初顔合わせに渡す予定だったものよ」
「はあ?」
なんでも、初顔合わせする際に、こう言ったお祝いを渡すものなんだって。両家が話し合い、準備するんだけど、あの初顔合わせがああなったし、あのキャサリンが目ざとく自分が渡すなんて言ったみたい。
盗る気満々じゃん。
ウーヴァ公爵夫人もキャサリンの滲み出るのが分かったようで、今日になったみたい。
ちなみに紙面上の婚約者とペアだって。
オーダーメイド? ますます高価じゃんっ。
「で、こちらが、入学祝いよ」
次に来たの箱には、鮮やか青のリボンが着いたヘアゴム。あ、可愛い。実用的。
「これだけ頂きます。ありがとうございます」
青のリボンだけ手元に。
ため息が漏れる。
「あなた、レオナルドのどこが嫌なの? 確かに、あなたのお姉さんの計略にまんまとのせられた、誰にでもいい顔する優柔不断だけど」
アンジェリカ嬢が出す言葉に、紙面上の婚約者が沈む。
キャサリンは私の支度が時間がかかると、その間、お庭を案内するなんて言ってたらしい。で、流石に三度目になると、おかしいと思い、断ったら、なら、ウィンティアの部屋の下から声をかけては? と、言われたそうだ。移動していると、
「ああ、目眩がっ」
と、キャサリンのわざとらしく倒れたのを支えた瞬間を、私とナタリアが目撃した。その時もわざとらしくレオナルドにしなだれかかるので、近くのメイドに渡すのに一苦労したそうだ。
そんなこったろうとは思ったけど、見せつけられた私にしてはいい気分ではない。
それに関しては弁解しようはないって、素直に謝罪された。この人は、確かに誰にでも言い顔っていわれたけど、波風立てないように穏便に対応したんだ。倒れたキャサリンを支えたのも、人柄なんだろうなあ。
「顔は悪くはないでしょう?」
まあ、総合的イケメン。
「稼ぎも悪くはないわよ」
王子様を守る護衛騎士だけど、院長先生いわく、優秀だって。
「ちゃんと別収入としての不動産もあるわ、子供五人はゆっくり育てられるわよ」
ぶはあっ。
「あら、まだ早かったかしら?」
「姉上、やめてください…………」
細やかに抵抗する紙面上の婚約者。
「お黙りなさいっ。あなたがしっかりしないから、ウィンティア嬢が気を許さないのよっ」
撃沈。
しかし、アンジェリカ嬢、それって個人情報じゃないの?
「基本的には真面目なのよ。食べ物で好き嫌いはないわ。貴族特有の婚約でも、浮気はしないわ。あなたのお姉さんのせいで、勘違いしているようだけど、本当に違うのよ。勘違いさせたこれが悪いの、叩き直すわ、嫌な所はどこ? 滝行させてでも修正させるわよ」
滝行って。
「アンジェリカ、落ち着きなさい」
「最初にこじらせたのはお母様でしょうっ」
強っ、アンジェリカ嬢、強っ。
嫌な理由かあ。
嫌なって言うより、そうなりたくないって言うか。
「私」
ぽつり。
被害者 ウィンティア・ローザ 首吊り自殺 享年十六
絶対、死にたくない。
一斉に視線が集まる。
「死にたくないです」
「これでいいでしょ。どうせ向こうも分かっているはずだし」
ナタリアが薄い緑色に、ピンクのお花がついたドレスを出すが、よれよれワンピースにした。
「ウィンティア、着替えなさい」
「嫌です」
やっぱり言われたけど拒絶。だって、向こうだって着るものに関して言って来たからね。
これだけは、私のって、言えるもん。ウィンティアが色々お手伝いしてゲットしたワンピースだもん。
胸を張る。
「両極端な姉妹ね」
ってあのウーヴァ公爵夫人に、言われたけど、構わない。本日は婿養子の旦那さんはいないね。
「ウィンティア嬢っ」
でも、紙面上の婚約者は来ていた、お仕事、忙しくないの?
「名前で呼ばないで頂けます?」
ガックリしている。
「あなた頑固ね。分からなくはないけど」
って言ったのは、ウーヴァ公爵令嬢の、名前は確か、アンジェリカ・ウーヴァ。ナタリア情報です。
爵位の低いものから、高いものによほど用がない限り声をかけないんだって。ぺこりしとこう。
それから応接室に移動。
でもって、長い挨拶が始まるけど、私の準特進クラス合格おめでとうが含まれていたので、やっぱり嬉しい。
こ難しい話が続いて、あくび出そう。
「では、ウーヴァ公爵家より、この度の」
要は、私の入学祝いね。
向こうのいぶし銀な執事さんが、私に渡してくれる。
な、なんだろ? 綺麗にラッピングされてるけど。
「あ、ありがとうございます」
礼儀として、言わないとね。
開けた方がいいのかな?
とりあえず開けてみる。
「と、時計っ」
そう、懐中時計。
私が欲しかったやつ。こちらにスマホはないし、腕時計なんてそうない。あっても、すごく高い。
ナタリアと時計屋さんで見たら、最低額、十万はした。お祝いの品にしては高価過ぎるよ。しかもこれ、店頭に並んでいたやつにそっくりだ。確か、三十万近くしなかったっけ?
「い、頂けませんっ、こんな高い物っ」
私は慌てて押し返す。
ウーヴァ公爵夫人は、扇で口元を隠す。
「本当に彼女達は姉妹なのかしら? こうも反応が違うなんて」
な、なんの事だろう?
あのキャサリンと比べられているのは分かるけど、あれはあれよ、別の生物よ。
試されているようだ。
「お祝いなら消耗品にしてください。鉛筆一ダースでいいです。赤鉛筆と青鉛筆つけてください」
欲しいのはそういうの。はあ、とため息。
「お母様、きちんと、説明なさって」
娘、アンジェリカ嬢にせっつかれて、ウーヴァ公爵夫人がはあ、と話し出す。
「これはあの初顔合わせに渡す予定だったものよ」
「はあ?」
なんでも、初顔合わせする際に、こう言ったお祝いを渡すものなんだって。両家が話し合い、準備するんだけど、あの初顔合わせがああなったし、あのキャサリンが目ざとく自分が渡すなんて言ったみたい。
盗る気満々じゃん。
ウーヴァ公爵夫人もキャサリンの滲み出るのが分かったようで、今日になったみたい。
ちなみに紙面上の婚約者とペアだって。
オーダーメイド? ますます高価じゃんっ。
「で、こちらが、入学祝いよ」
次に来たの箱には、鮮やか青のリボンが着いたヘアゴム。あ、可愛い。実用的。
「これだけ頂きます。ありがとうございます」
青のリボンだけ手元に。
ため息が漏れる。
「あなた、レオナルドのどこが嫌なの? 確かに、あなたのお姉さんの計略にまんまとのせられた、誰にでもいい顔する優柔不断だけど」
アンジェリカ嬢が出す言葉に、紙面上の婚約者が沈む。
キャサリンは私の支度が時間がかかると、その間、お庭を案内するなんて言ってたらしい。で、流石に三度目になると、おかしいと思い、断ったら、なら、ウィンティアの部屋の下から声をかけては? と、言われたそうだ。移動していると、
「ああ、目眩がっ」
と、キャサリンのわざとらしく倒れたのを支えた瞬間を、私とナタリアが目撃した。その時もわざとらしくレオナルドにしなだれかかるので、近くのメイドに渡すのに一苦労したそうだ。
そんなこったろうとは思ったけど、見せつけられた私にしてはいい気分ではない。
それに関しては弁解しようはないって、素直に謝罪された。この人は、確かに誰にでも言い顔っていわれたけど、波風立てないように穏便に対応したんだ。倒れたキャサリンを支えたのも、人柄なんだろうなあ。
「顔は悪くはないでしょう?」
まあ、総合的イケメン。
「稼ぎも悪くはないわよ」
王子様を守る護衛騎士だけど、院長先生いわく、優秀だって。
「ちゃんと別収入としての不動産もあるわ、子供五人はゆっくり育てられるわよ」
ぶはあっ。
「あら、まだ早かったかしら?」
「姉上、やめてください…………」
細やかに抵抗する紙面上の婚約者。
「お黙りなさいっ。あなたがしっかりしないから、ウィンティア嬢が気を許さないのよっ」
撃沈。
しかし、アンジェリカ嬢、それって個人情報じゃないの?
「基本的には真面目なのよ。食べ物で好き嫌いはないわ。貴族特有の婚約でも、浮気はしないわ。あなたのお姉さんのせいで、勘違いしているようだけど、本当に違うのよ。勘違いさせたこれが悪いの、叩き直すわ、嫌な所はどこ? 滝行させてでも修正させるわよ」
滝行って。
「アンジェリカ、落ち着きなさい」
「最初にこじらせたのはお母様でしょうっ」
強っ、アンジェリカ嬢、強っ。
嫌な理由かあ。
嫌なって言うより、そうなりたくないって言うか。
「私」
ぽつり。
被害者 ウィンティア・ローザ 首吊り自殺 享年十六
絶対、死にたくない。
一斉に視線が集まる。
「死にたくないです」
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