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作戦⑤
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「それで、その、キーファー様は三十分程遅れるそうです」
いきなりの遅刻。
しかもそれを伝えて来たのは、キャサリンのメイドだ。メイドはそれだけ言ってそそくさと去っていく。
「お嬢様、どう思いますか?」
「嘘の可能性あるわね。まあ、いいわ、会う時間短くなるし」
本日ヴァレリーは別部隊として動いてもらっている。玄関先で草むしりしているだけだけど。どんな様子か見て、気になるような事を言っていたら、記録してもらうように言ってある。
ナタリア曰く、貴族の家特有の婚約の場合。相手のおうちに行くとき、婚約者には何かしら持って来るんだって。ただ、無収入の学生さんとかなら、親からある程度の予算もらってから、それを遣り繰りして準備する。紙面上の婚約者レオナルド・キーファーはしっかりした社会人だから、自腹のはず。さて、何を持って来るかな。また、萎びた花持って来たら、蹴ってやる。ダメージ入らないだろうけど。
私は昨日図書館で勉強したノートをペラペラ捲る。時間が来るまで、復習しよう。ナタリアが風通しで窓を開けてくれる。
すると、賑やかな声が流れてくる。
「あっ」
小さなナタリアの声。
「どうしたの?」
ナタリアは口を押さえて、私に小さな動作で外を指し示す。
ある予感がしたが、私が覗くと、いたよ、やっぱり。
楽しそうに笑顔を振り撒くキャサリンと、微笑み返す紙面上の婚約者が。庭先で、それは楽しそうに話している。
やっぱりこうなるか。
覚悟はしていたが、やっぱり嫌な気分になる。
私はナタリアの腕を引き、外から見えない位置に。
「お嬢様…………」
「やっぱり仕掛けて来たわね」
私は吐き捨てる。
何も、ウィンティアの部屋から見える位置で会わなくもって思うが、あのキャサリンの事だ、無意識にやってるはず。
それに、今日は私との面会のはずなのに、先に姉の方に会うなんて、常識的にどうなのよ。しかも遅れるなんて、嘘ついて。置き時計を見ると、本来の面会時間だ。
「きゃっ」
「おっと、大丈夫ですか?」
「はいっ、ありがとうございますっ、レオナルド様っ」
わざとらしい会話が続く。
どうやら、躓いたキャサリンを支えたみたいね。本当にイライラする。
私は復習する気にならず、ナタリアのお茶で気持ちを落ち着かせる。
落ち着きながらイライラ。あ、いいこと考えた。
きっかり三十分待ち、ノックがある。
『ウィンティアお嬢様、キーファー様がお見えになっています』
三十分前からね。
私は立ち上がる。
「行きましょう」
「はい、お嬢様」
私はナタリアを伴い、部屋を出る。
「えっ? ウィンティアお嬢様…………」
呼びに来たのは、さっき三十分遅れると告げたメイドだ。私の姿に驚いている。さっきはローザ伯爵が準備した、仕立てのよいワンピースだったが、コクーン修道院から持ってきた褪せた色でくたくたのワンピースになっているからだ。
ぶっちゃけ、このワンピースの方が着やすいんだけどね。
「あのっ、お着替えくださいっ」
「なんで? 遅刻したやつの為に」
ぐ、と詰まるメイド。
私はメイドを無視して、さっさと廊下を歩いた。
いきなりの遅刻。
しかもそれを伝えて来たのは、キャサリンのメイドだ。メイドはそれだけ言ってそそくさと去っていく。
「お嬢様、どう思いますか?」
「嘘の可能性あるわね。まあ、いいわ、会う時間短くなるし」
本日ヴァレリーは別部隊として動いてもらっている。玄関先で草むしりしているだけだけど。どんな様子か見て、気になるような事を言っていたら、記録してもらうように言ってある。
ナタリア曰く、貴族の家特有の婚約の場合。相手のおうちに行くとき、婚約者には何かしら持って来るんだって。ただ、無収入の学生さんとかなら、親からある程度の予算もらってから、それを遣り繰りして準備する。紙面上の婚約者レオナルド・キーファーはしっかりした社会人だから、自腹のはず。さて、何を持って来るかな。また、萎びた花持って来たら、蹴ってやる。ダメージ入らないだろうけど。
私は昨日図書館で勉強したノートをペラペラ捲る。時間が来るまで、復習しよう。ナタリアが風通しで窓を開けてくれる。
すると、賑やかな声が流れてくる。
「あっ」
小さなナタリアの声。
「どうしたの?」
ナタリアは口を押さえて、私に小さな動作で外を指し示す。
ある予感がしたが、私が覗くと、いたよ、やっぱり。
楽しそうに笑顔を振り撒くキャサリンと、微笑み返す紙面上の婚約者が。庭先で、それは楽しそうに話している。
やっぱりこうなるか。
覚悟はしていたが、やっぱり嫌な気分になる。
私はナタリアの腕を引き、外から見えない位置に。
「お嬢様…………」
「やっぱり仕掛けて来たわね」
私は吐き捨てる。
何も、ウィンティアの部屋から見える位置で会わなくもって思うが、あのキャサリンの事だ、無意識にやってるはず。
それに、今日は私との面会のはずなのに、先に姉の方に会うなんて、常識的にどうなのよ。しかも遅れるなんて、嘘ついて。置き時計を見ると、本来の面会時間だ。
「きゃっ」
「おっと、大丈夫ですか?」
「はいっ、ありがとうございますっ、レオナルド様っ」
わざとらしい会話が続く。
どうやら、躓いたキャサリンを支えたみたいね。本当にイライラする。
私は復習する気にならず、ナタリアのお茶で気持ちを落ち着かせる。
落ち着きながらイライラ。あ、いいこと考えた。
きっかり三十分待ち、ノックがある。
『ウィンティアお嬢様、キーファー様がお見えになっています』
三十分前からね。
私は立ち上がる。
「行きましょう」
「はい、お嬢様」
私はナタリアを伴い、部屋を出る。
「えっ? ウィンティアお嬢様…………」
呼びに来たのは、さっき三十分遅れると告げたメイドだ。私の姿に驚いている。さっきはローザ伯爵が準備した、仕立てのよいワンピースだったが、コクーン修道院から持ってきた褪せた色でくたくたのワンピースになっているからだ。
ぶっちゃけ、このワンピースの方が着やすいんだけどね。
「あのっ、お着替えくださいっ」
「なんで? 遅刻したやつの為に」
ぐ、と詰まるメイド。
私はメイドを無視して、さっさと廊下を歩いた。
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