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作戦④
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夜、私はランプを着けて、スケジュール用の小さな手帳を出す。
図書館の売店で購入した、シンプルな黒の手帳。
予定を書いたりしていたが、もしもの事があったらいけないから、色々メモしている。特にキャサリン関係はメモしている。あのジュエリーボックスの事は詳しく。あれからキャサリンが私の部屋に侵入はしないが、扉の向こうできゃんきゃん吠えている。内容はとんちんかんだけど、なるべく要点で書く。そして最後に意味分からない、と書き加える。本当に分からないだもん。なんでお出かけできないのが、私のせいのわけ? 身から出た錆じゃないの?
本日は萎びた花の件ね。もし、これがあの紙面上の婚約者からなら、失礼極まりない。何が誠実よ、って書き加える。
よし、いいかな?
はらり、と花びらが落ちる。
お花に罪はない。最後まで飾ろう。
それから更に数日後。
ほぼ毎日図書館通いしている。ナタリアのおかげでスムーズに進んでいる。
きっとウィンティアの地頭がいいんだね。
一度、生物学上の父親が、進捗状況を聞いてきた。
「ナタリアのおかげで、思ったより進んでいるかと」
「そうか。なら良かった」
ホッとしたような生物学上の父親。
娘が学力低いのは、体裁面で困るからだね。
「それと、レオナルド・キーファー殿から先触れが来た。予定通りにいらっしゃるそうだ。そんな顔をするんじゃない」
苦虫を噛み潰したようような顔をしたからね。
一応、紙面上の婚約者とは月に一回面会が組まれることになっている。
ただ、向こうはお仕事あるから、向こうの予定に合わせる。仕方ない、私はいま、無職だもんね。学園に入ったら休みのどこかになるらしい。
あの初顔合わせから、初めての面会だ。
正直、どうでもいいんだけど、絶対あのキャサリンが横槍を入れるはず。
私だって抵抗しましたよ。
どうせ、利用価値なくなったら捨てるはずだしね、って。生物学上の父親は、項垂れて言った。
「ウィンティア、レオナルド・キーファー殿はその様な事はなさならいから、そんな無用な心配はしなくてもいいんだよ。元々この婚約は」
「結構です、知りたくありません」
私は変わらず答える。
初めから説明しなかったのはそっちの落ち度だ。せめて、初顔合わせ前にいくらでも説明する機会があったはず。マルカさんがいた頃とかね。
「もう話はありませんよね? なら、失礼します」
私は書斎を出る。
「ウィンティアッ、レオナルド・キーファー殿はお前が思うような方ではっ」
「結構です」
数日後、紙面上の婚約者、レオナルド・キーファーがやってきた。
図書館の売店で購入した、シンプルな黒の手帳。
予定を書いたりしていたが、もしもの事があったらいけないから、色々メモしている。特にキャサリン関係はメモしている。あのジュエリーボックスの事は詳しく。あれからキャサリンが私の部屋に侵入はしないが、扉の向こうできゃんきゃん吠えている。内容はとんちんかんだけど、なるべく要点で書く。そして最後に意味分からない、と書き加える。本当に分からないだもん。なんでお出かけできないのが、私のせいのわけ? 身から出た錆じゃないの?
本日は萎びた花の件ね。もし、これがあの紙面上の婚約者からなら、失礼極まりない。何が誠実よ、って書き加える。
よし、いいかな?
はらり、と花びらが落ちる。
お花に罪はない。最後まで飾ろう。
それから更に数日後。
ほぼ毎日図書館通いしている。ナタリアのおかげでスムーズに進んでいる。
きっとウィンティアの地頭がいいんだね。
一度、生物学上の父親が、進捗状況を聞いてきた。
「ナタリアのおかげで、思ったより進んでいるかと」
「そうか。なら良かった」
ホッとしたような生物学上の父親。
娘が学力低いのは、体裁面で困るからだね。
「それと、レオナルド・キーファー殿から先触れが来た。予定通りにいらっしゃるそうだ。そんな顔をするんじゃない」
苦虫を噛み潰したようような顔をしたからね。
一応、紙面上の婚約者とは月に一回面会が組まれることになっている。
ただ、向こうはお仕事あるから、向こうの予定に合わせる。仕方ない、私はいま、無職だもんね。学園に入ったら休みのどこかになるらしい。
あの初顔合わせから、初めての面会だ。
正直、どうでもいいんだけど、絶対あのキャサリンが横槍を入れるはず。
私だって抵抗しましたよ。
どうせ、利用価値なくなったら捨てるはずだしね、って。生物学上の父親は、項垂れて言った。
「ウィンティア、レオナルド・キーファー殿はその様な事はなさならいから、そんな無用な心配はしなくてもいいんだよ。元々この婚約は」
「結構です、知りたくありません」
私は変わらず答える。
初めから説明しなかったのはそっちの落ち度だ。せめて、初顔合わせ前にいくらでも説明する機会があったはず。マルカさんがいた頃とかね。
「もう話はありませんよね? なら、失礼します」
私は書斎を出る。
「ウィンティアッ、レオナルド・キーファー殿はお前が思うような方ではっ」
「結構です」
数日後、紙面上の婚約者、レオナルド・キーファーがやってきた。
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