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婚約者と被害者⑤

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「はっきり言って迷惑しています」

 この話がなければ、ウィンティアはまだコクーン修道院にいて、温かく生きていけた。
 院長先生が私を戻すと判断したウーヴァ公爵家のあの提案。あれはパフォーマンスだったんだ。やっぱり、ウィンティアをいいように使いたいだけだ。そして、利用価値がなくなれば、道端に転がっている石のように捨てるんだ。赤い本の通りだ。
 こっちも突き放すように返すと、驚いた顔をしていた。自分が言い返されるって思ってなかったんだ。公爵だもん、誰も逆らえないわな。
 ウィンティアの悪い印象与えないようにしていたけど、無駄になっちゃった。張り切ってくれたナタリアに申し訳ない。そのナタリアは立場上、奥に引っ込んでいる。

「まあっ、ウィンティアッ、なんて失礼なっ」

「やかましい」

 存在事態が迷惑キャサリンが、やや高い声をあげるが、私は低音でやり返す。

「ウィンティア…………」

 少し空間を空けて座っていた生物学上の母親が、肩に触れようとして、あの感謝祭の記憶が甦る。

「触らないでっ」

 力一杯、叩き落とす。途端に傷付いたような顔をするが、ウィンティアを散々傷付いてきたのはそっちだろうに。
 ああ、空気が悪いけど、私のせいではない。

「あの、少しウィンティア嬢と話をしたいのですが」

 空気を変えようとして、沈黙していたレオナルドが手を上げる。
 結局、庭先、軒下のテーブルで話をすることに。
 私もこの空間にいたくないし、私は席を立つ。メイド達が急いで準備に入ってる。男性使用人、フットマンが先導する。
 す、とレオナルドが私の前に手を差し出す。何?

「どうぞ、手を」

 だって。
 ……………あ、エスコートってやつか。

「結構です。一人で歩けます」

 と、突き放す。
 さっきのウーヴァ公爵夫人の様子からして、このレオナルドも同じようになる可能性がある。穏便に解消なんて、考えが甘かった。どうせウィンティアを捨てるなら、始めから親しくする必要はない。
 軒下のテーブルなら、場所は知ってるから、ずいずい進む。レオナルド? 置いてきた、誰か連れてくるでしょ。先に到着して、まだ準備中だけど、自分で椅子を引いて座る。それから、案内されたレオナルドがやって来て、向かい合うように座った。
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