ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

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婚約者と被害者③

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 ナタリアと玄関に向かう。
 ローザ伯爵家総出でお出迎えだ。
 しっかり身支度を整えた私に、生物学上の両親は、ほっとした表情だ。

「よく似合うよ、ウィンティア」

「ええ、本当に」

 よく言うよ、散々ウィンティアの尊厳を踏みにじって来たくせに。
 私は無言を貫く。
 だいだい、このドレスだって、ウーヴァ公爵家がくるから、ローザ伯爵家の印象をよくするために、最低限のものでしょうよ。

「キャサリンはどうしたの? もうお見えになるのに」

 そう言えばいない。あのマナー違反女キャサリン。
 向こうは公爵なんだから、ずっと身分は上だから、お出迎えしないといけないんじゃない?
 なんて思っていると、バタバタとやって来た。
 …………………………………………

「キャサリンッ、なんて格好なのっ」

 生物学上の母親が金切り声をあげる。
 上げたくもなるか、だって、テレビでしか見たことないけど、夜会とかで着るロングドレスでやって来たんだから。いや、いま、真っ昼間。しかもフリフリ、キラキラ、容姿がお人形さんだから、似合うは似合うけどさ。しっかりヘアメイクして、ばっちりキラキラなアクセサリーで固めている。
 伯爵夫人である、生物学上の母親ですら、膝下スカート丈のワンピースで、あんなに派手な装飾はない。
 まだ、貴族世界の知識が浅いけど、一応今日私が主役よ、あんた目立ったらダメじゃないの? 数人の使用人がぽかん、としているから間違ってないと思う。

「だって、ウーヴァ公爵家の皆様がいらっしゃるんでしょう? ちゃんとしなきゃって」

 小首を傾げるキャサリンの姿は可憐そのもの。場面がこうじゃなければ、それは通るがいまはそうじゃない。
 キャサリンの後ろにいるメイド達が疲れはてている。
 生物学上の父親も額を押さえている。

「旦那様、いらっしゃいましたっ」

 執事が告げる。

「仕方ない、並びなさい」

「お嬢様、こちらに」

 派手に着飾ったキャサリンの登場に、改めて色々思うがあるが、口に出しても絶対こいつに響かない。
 私は執事の指示された場所に立とうとすると、何故かキャサリンが競りだすようにして立つ。
 私は完全にキャサリンの影だ。
 おい、今執事は、私に向かって「お嬢様」って言ったし、その場合に誘導されていたんだけど。当の執事も呆気に取られている。
 まさか、こいつ、分かってやってる?
 そうこうしていると、立派な馬車がローザ伯爵家敷地内に入ってきた。
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