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伯爵家での生活③

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 言いたいことが山のようにあるが、あのマナー違反女と食卓なんて、真っ平ごめんだ。
 しかし、いくらなんでもおかしくない? ウィンティアの状況知らなすぎ。田舎って、確かに喉かな場所だったけど、保護されていたんだよ。そもそも妹知らないっておかしくない? 頭でも打ったの? あれのマナー違反はそのせいなわけ? 頭打ったなかったらなんなの?  生物学上の両親は、どう育てたのあれを。

「あ、お父様っ、ちゃんとごめんなさいしましたわっ、明日のお茶会っ」

「良いわけがないだろう。キャサリンを部屋に」

 メイドが二人で連れ出していく。

「きゃっ、お父様っ、どうしてですかっ、私、ちゃんと謝りましたわっ」

「あれを謝罪と言わないんだよ」

 ため息をつく、生物学上の父親。
 きゃあっ、とわざとらしい悲鳴を上げるキャサリンが、やっと退室。なんだろう、声を聞いただけで疲れた。

「ローザ伯爵家御当主」

 マルカさんから、地獄の底から沸き上がるような声が出てきた。

「後で御説明願えますか?」

 ひっ、怖いっ。
 生物学上の両親が神妙な顔しているが、私にはどうでもいい。

「お嬢様、お顔色が」

 ナタリアが心配している。
 さっき神様が見せてくれた赤い表紙の本に、彼女の未来の姿を見た。被害者の名前に彼女がいた。まだ未来の話だけど、ナタリアに関する情報があまりにもない。あったばかりの私に、身の上を全て晒すとは思えないし。
 まずは、彼女と信頼関係を築かないと。

「大丈夫よ」

 私は引いてあった椅子に腰かける。
 何本もフォークやナイフがあるけど、外から使うのよね? グラスもピカピカ、キラキラ。これ、今日だけよね。
 隣にマルカさんが座る。

「こほん」

 わざとらしい咳。

「帰って来てそうそう嫌な気分にさせたねウィンティア」

 私は言葉を発する事なく、一瞥。
 なんという子育てしてんだよ。未婚で出産経験もないけど、あれはいくらなんでも酷くない。
 使用人達が素早い動きを見せ始める。
 グラスに何やら入れてくれるが、警戒音がなる。とっさにマルカさんと同じものにする。
 この沸き上がるような不安、なんだろう。
 
「おかえり、ウィンティア。私達はこの日を迎えられて嬉しいんだよ」

「迷惑」

 ばっさり言ってやった。迎えるんなら、あのマナー違反女をどうにかしておくべきじゃないの。
 それに今回の事で、ウィンティアが内側に籠ったんだよ。
 だけど、ウィンティアが望むことを叶える為に、利用してやる。ものすごくせこいやり方でねっ。
 生物学上の両親は、私の反応をどう受け取ったのだろうか? 見ないようにしているから分からない。
 緊張感が走るが、知ったことないもんね。
 完全な沈黙の中で、食事が運ばれてきた。コースなんて、親戚の結婚式しか経験ないけど、これ、前菜よね?
 見た目は、すごくおしゃれだけど。なんで、こんなに不安になるの? 私の中で、おしゃれ前菜、食べ物を粗末にしない、沸き上がる不安が衝突している。
 生物学上の父親が、もう一度、おかえり、と言うが、耳に幕を張ったような音だ。
 
「ウィンティアさん?」

 隣のマルカさんが心配そうだ。

「無理はしなくていいのですよ」

 その気遣いが嬉しい。
 私は咄嗟に心配させないように、フォークを取る。
 好き嫌いはない。好き嫌いは、ないが。なんで、こんなに不安になるの?
 食べ物を粗末にしない主義だけど、食べるのが、不安。
 そうだ、このドレッシングのかかってない、多分レタスっぽいのを、ちょっと恐る恐る齧る。
 ごくん。
 あ、食べれた、なんだったんだ、あの不安。
 ……………………………………あら?
 ……………………………………あれ?
 ……………………………………なんか。なんか。なんか。
 お腹、変。
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