ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

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伯爵家での生活①

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「ウィンティアさん、本当に大丈夫なんですか?」

「はい、ご心配おかけしました」

 あの神様と会っていた時間は、瞬くような時間で、まったく進んでなかった。ただ、気がついたら座っていたソファーから、落ちていたけどね。
 落ちた音に心配したマルカさんが慌てノックして来た。やっぱりノックするよね。さっきのあのキャサリンは、マナー違反よね。まさかと思うが、こちらではあれが正解なのだろうか?
 信用できる大人、マルカさんに聞いてみる。

「まさかっ。私も驚きましたよ。貴族として以前の問題ですよ。まったく、ローザ伯爵家では、キャサリン・ローザのデビュタント前の淑女教育は終わったと聞いていたのですが」

 デビュタントってのは、曰く成人式ね。
 ……………………………苦い、思い出。実は私、成人式をしていない。迎える前に事故死したわけではない、意地を張ってしまい、結局振り袖を着ることはなかった。
 準備してくれていた、伯母さん、振り袖を貸してくれるといった従姉のまさみちゃん、ごめんなさい。
 それは今はおいといて。
 で、デビュタントってのは、十五歳で行われる。貴族の場合ね。首都にいる場合、ほとんどがユミル学園に通っているので、学園でパーティーするんだって。へー、貴族ー。そのパーティーに出席したら、デビュタント終了。何かしらおうちの都合で、他国にいたり、地方にいたら、別日に教会の感謝祭で牧師さんからお言葉を頂く、もしくは伯爵クラスの大きなお茶会に出て、紹介してもらうんだって。
 教会の感謝祭って、あの感謝祭じゃないよね。
 一般の人は、その感謝祭だって。
 もし、あの騒動で、成人式の儀式に水を指したら申し訳ない気持ちになる。ウィンティアのせいでは絶対にないけどね。

「このパーティーには、王家からも出席があり、お言葉を頂けるんですよ」

「王様から?」

「その時々ですね。私の時には今は亡き、ビビアン王妃殿下からお言葉を頂きました」

 あ、再来年引退する王様の亡くなった奥さんね。
 このデビュタントを済ませたら、一人前の成人かって言われると少し違う。ちゃんとした成人は十八、ユミル学園を卒業してからになる。ただ、出きることが増えるだけ。例えばお茶会に一人で出席できる。そこそこの額のつけのお買い物ができる。ただし、その額は家の爵位によりけり。夜遅くまで行われる夜会には、親、もしくは親族や婚約者とかいれば出席できる。そう、婚約者。ルルディ王国では、十五のデビュタントで初めて婚約者の存在を発表する事ができる。完全秘密ではないので、仲良しのお友達にはこっそり教えたり、口の軽い親戚から漏れることがたまにあるそうだけど、罰則はない。ただ、幼い頃に組まれたものは、時折成長と共に互いが捻れた関係になり婚約解消になることがあるため、十五まではそっと秘密にしましょうね、って、暗黙のルールらしい。
 それくらいだけど、その一人で行ったお茶会等の場合は、その場での発言は責任を持たないといけない。よくある例として、自分の気にいらない相手の有りもしない悪口を、声高に言いふらすと、つま弾きもの。その言った人でない、その家の評価にも繋がる。
 なので、ニュアンス含めて、回りくどく、めんどくさく言って、そう思い込ませる。そして足を引っ張り合う。うわあ、めんどくさーい、貴族ー。
 ふう、とため息を心の中でつく。
 いくつか心配だったマナーについて聞く。主にさっきのあのキャサリンの行動だ。全部マナー違反だ、良かった、私の常識通じるようだ。
 ただ、めんどくさい貴族の仕組みは、一度聞いただけではわからない。
 私、山岸まどかは、あまり、頭はよくないしね。
 マルカさんの話を聞いていると、夕御飯の時間を迎えてしまう。
 そこで、私は、ウィンティアが殻に閉じ籠ってしまった、理由の一つを知ることになる。
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