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ゲスな⑤
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そして、婚約者。
キャサリンを選ぶと何人かのルートがあるが、特別ルートに入るには、ウィンティアの婚約者を攻略する事、ウィンティアが自殺の二つが揃わないと解放されない。
婚約者もゲームと違うのは、レオナルドと言う名前以外すべて違う。まだ、学生の身分でユミル学園で騎士科に所属していた。そして名字がキーファーでなく、ウーヴァだった。そう公爵家ウーヴァ家の近い血筋、いや、正統なウーヴァ公爵家当主になるはずだったが、父親が問題を起こして後継者から外された。そんな設定だった。
特別ルートに入る為の攻略キャラクターの為、困難なキャラクターだった。
ゲーム内のレオナルド・ウーヴァは爽やかなスポーツ青年な容姿で、とても真面目。家同士の、貴族特有のお互いの家の為の政略婚約者になったウィンティアとはそこそこに関係が良好だった。義務としてだけど、寄り添おうとしていたはずだった。
そう、だった。
あの手この手で、邪魔をするのは当然キャサリン。そして、絶対的に味方の両親、使用人達の援護で会瀬を楽しんだ。
やり方は簡単。
ローザ伯爵家でのウィンティアとのお茶会。寮にいるウィンティアを迎えに行った御者がわざと遅れる。その間、キャサリンがレオナルドの相手をする。
遠乗り、観劇、カフェすべて行くのはキャサリン。どうやったか? ウィンティアにはレオナルドの都合が悪くなった、レオナルドにはウィンティアの体調不良、学園の補習授業で来れないと言い含めて。当然嘘だ。珍しく国立公園でのデートに行けたが、その最中に割り込んで来た可憐に着飾ったキャサリンにレオナルドを奪われる。最後にはウィンティアをベンチに残していく。レオナルドはキャサリンをローザ伯爵家に送った後に、やっとウィンティアの存在を思い出す。しかも迎えに行かない、レオナルドの従者が公園のベンチにいたウィンティアを迎えに行った。
そして、レオナルドがウィンティアに贈った花やアクセサリーは、ウィンティアには渡さずキャサリンの元に。ウィンティアが嫌いは花だとか、趣味に合わないから捨てていたのを拾っただの言い訳して。当のウィンティアは、そんな贈り物があることすら知らず、徐々にイライラするレオナルドにどうしていいか分からず、おどおどしていた。
ウィンティアはレオナルドを愛していたと思う。数少ないデートやお茶会で見せる笑顔が、今となれば痛々しい。きっと、ウィンティアはレオナルドに希望を見ていた。居心地の悪いローザ伯爵家から、救いだしてくれると信じていた。
だが、キャサリンやその他諸々の邪魔により、レオナルドとの距離が離れていくばかり。
最終的には、あるダンスパーティーに、初めてレオナルドの婚約者として出席した。公の場で、初めて婚約者としての出席。レオナルドからドレスが贈られてきた。くすんだ色の、古ぼけたドレスだったが、ウィンティアには嬉しくて、嬉々として身に纏った。
華やかなダンスパーティーで、あまりにもみすぼらしいウィンティアは、恥ずかしかった、嘲笑にも必死に耐えた。
レオナルドとのダンスだけが、ウィンティアの支えだった。
そのファーストダンスを、レオナルドは適当に終わらせてしまった。
ファーストダンスが終わった頃に現れたのは、レオナルドと対になるような緑色の鮮やかなドレスを纏ったキャサリン。
当然ダンス会場ばざわついた。
キャサリンは眩いばかりに美しかったから。
レオナルドは婚約者のウィンティアを放置して、キャサリンに駆け寄り、膝を着いた。
「美しい方、私と一曲踊っていただけませんか?」
「はい、喜んで」
そして、周囲が見惚れる程見事なダンスを披露するのだ。
「まあ、なんてお似合いな二人」
「まるで美しい絵を見ているようだ」
「でも、彼の婚約者って、彼女ではないの? ファーストダンス、彼女だったわ」
「あれがダンス? 途中で放り出したじゃないか」
「くすくすっ、見て、呆然としているわ」
「あれをバカ面って言うのよ」
「でも、あれじゃあ、彼もあっちを選びたいだろうな」
ウィンティアは顔を覆って逃げ出した。
それがゲームでの最後に見たウィンティアの姿だ。
キャサリンを選ぶと何人かのルートがあるが、特別ルートに入るには、ウィンティアの婚約者を攻略する事、ウィンティアが自殺の二つが揃わないと解放されない。
婚約者もゲームと違うのは、レオナルドと言う名前以外すべて違う。まだ、学生の身分でユミル学園で騎士科に所属していた。そして名字がキーファーでなく、ウーヴァだった。そう公爵家ウーヴァ家の近い血筋、いや、正統なウーヴァ公爵家当主になるはずだったが、父親が問題を起こして後継者から外された。そんな設定だった。
特別ルートに入る為の攻略キャラクターの為、困難なキャラクターだった。
ゲーム内のレオナルド・ウーヴァは爽やかなスポーツ青年な容姿で、とても真面目。家同士の、貴族特有のお互いの家の為の政略婚約者になったウィンティアとはそこそこに関係が良好だった。義務としてだけど、寄り添おうとしていたはずだった。
そう、だった。
あの手この手で、邪魔をするのは当然キャサリン。そして、絶対的に味方の両親、使用人達の援護で会瀬を楽しんだ。
やり方は簡単。
ローザ伯爵家でのウィンティアとのお茶会。寮にいるウィンティアを迎えに行った御者がわざと遅れる。その間、キャサリンがレオナルドの相手をする。
遠乗り、観劇、カフェすべて行くのはキャサリン。どうやったか? ウィンティアにはレオナルドの都合が悪くなった、レオナルドにはウィンティアの体調不良、学園の補習授業で来れないと言い含めて。当然嘘だ。珍しく国立公園でのデートに行けたが、その最中に割り込んで来た可憐に着飾ったキャサリンにレオナルドを奪われる。最後にはウィンティアをベンチに残していく。レオナルドはキャサリンをローザ伯爵家に送った後に、やっとウィンティアの存在を思い出す。しかも迎えに行かない、レオナルドの従者が公園のベンチにいたウィンティアを迎えに行った。
そして、レオナルドがウィンティアに贈った花やアクセサリーは、ウィンティアには渡さずキャサリンの元に。ウィンティアが嫌いは花だとか、趣味に合わないから捨てていたのを拾っただの言い訳して。当のウィンティアは、そんな贈り物があることすら知らず、徐々にイライラするレオナルドにどうしていいか分からず、おどおどしていた。
ウィンティアはレオナルドを愛していたと思う。数少ないデートやお茶会で見せる笑顔が、今となれば痛々しい。きっと、ウィンティアはレオナルドに希望を見ていた。居心地の悪いローザ伯爵家から、救いだしてくれると信じていた。
だが、キャサリンやその他諸々の邪魔により、レオナルドとの距離が離れていくばかり。
最終的には、あるダンスパーティーに、初めてレオナルドの婚約者として出席した。公の場で、初めて婚約者としての出席。レオナルドからドレスが贈られてきた。くすんだ色の、古ぼけたドレスだったが、ウィンティアには嬉しくて、嬉々として身に纏った。
華やかなダンスパーティーで、あまりにもみすぼらしいウィンティアは、恥ずかしかった、嘲笑にも必死に耐えた。
レオナルドとのダンスだけが、ウィンティアの支えだった。
そのファーストダンスを、レオナルドは適当に終わらせてしまった。
ファーストダンスが終わった頃に現れたのは、レオナルドと対になるような緑色の鮮やかなドレスを纏ったキャサリン。
当然ダンス会場ばざわついた。
キャサリンは眩いばかりに美しかったから。
レオナルドは婚約者のウィンティアを放置して、キャサリンに駆け寄り、膝を着いた。
「美しい方、私と一曲踊っていただけませんか?」
「はい、喜んで」
そして、周囲が見惚れる程見事なダンスを披露するのだ。
「まあ、なんてお似合いな二人」
「まるで美しい絵を見ているようだ」
「でも、彼の婚約者って、彼女ではないの? ファーストダンス、彼女だったわ」
「あれがダンス? 途中で放り出したじゃないか」
「くすくすっ、見て、呆然としているわ」
「あれをバカ面って言うのよ」
「でも、あれじゃあ、彼もあっちを選びたいだろうな」
ウィンティアは顔を覆って逃げ出した。
それがゲームでの最後に見たウィンティアの姿だ。
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