ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
上 下
25 / 338

ゲスな⑤

しおりを挟む
 そして、婚約者。
 キャサリンを選ぶと何人かのルートがあるが、特別ルートに入るには、ウィンティアの婚約者を攻略する事、ウィンティアが自殺の二つが揃わないと解放されない。
 婚約者もゲームと違うのは、レオナルドと言う名前以外すべて違う。まだ、学生の身分でユミル学園で騎士科に所属していた。そして名字がキーファーでなく、ウーヴァだった。そう公爵家ウーヴァ家の近い血筋、いや、正統なウーヴァ公爵家当主になるはずだったが、父親が問題を起こして後継者から外された。そんな設定だった。
 特別ルートに入る為の攻略キャラクターの為、困難なキャラクターだった。
 ゲーム内のレオナルド・ウーヴァは爽やかなスポーツ青年な容姿で、とても真面目。家同士の、貴族特有のお互いの家の為の政略婚約者になったウィンティアとはそこそこに関係が良好だった。義務としてだけど、寄り添おうとしていたはずだった。
 そう、だった。
 あの手この手で、邪魔をするのは当然キャサリン。そして、絶対的に味方の両親、使用人達の援護で会瀬を楽しんだ。
 やり方は簡単。
 ローザ伯爵家でのウィンティアとのお茶会。寮にいるウィンティアを迎えに行った御者がわざと遅れる。その間、キャサリンがレオナルドの相手をする。
 遠乗り、観劇、カフェすべて行くのはキャサリン。どうやったか? ウィンティアにはレオナルドの都合が悪くなった、レオナルドにはウィンティアの体調不良、学園の補習授業で来れないと言い含めて。当然嘘だ。珍しく国立公園でのデートに行けたが、その最中に割り込んで来た可憐に着飾ったキャサリンにレオナルドを奪われる。最後にはウィンティアをベンチに残していく。レオナルドはキャサリンをローザ伯爵家に送った後に、やっとウィンティアの存在を思い出す。しかも迎えに行かない、レオナルドの従者が公園のベンチにいたウィンティアを迎えに行った。
 そして、レオナルドがウィンティアに贈った花やアクセサリーは、ウィンティアには渡さずキャサリンの元に。ウィンティアが嫌いは花だとか、趣味に合わないから捨てていたのを拾っただの言い訳して。当のウィンティアは、そんな贈り物があることすら知らず、徐々にイライラするレオナルドにどうしていいか分からず、おどおどしていた。
 ウィンティアはレオナルドを愛していたと思う。数少ないデートやお茶会で見せる笑顔が、今となれば痛々しい。きっと、ウィンティアはレオナルドに希望を見ていた。居心地の悪いローザ伯爵家から、救いだしてくれると信じていた。
 だが、キャサリンやその他諸々の邪魔により、レオナルドとの距離が離れていくばかり。
 最終的には、あるダンスパーティーに、初めてレオナルドの婚約者として出席した。公の場で、初めて婚約者としての出席。レオナルドからドレスが贈られてきた。くすんだ色の、古ぼけたドレスだったが、ウィンティアには嬉しくて、嬉々として身に纏った。
 華やかなダンスパーティーで、あまりにもみすぼらしいウィンティアは、恥ずかしかった、嘲笑にも必死に耐えた。
 レオナルドとのダンスだけが、ウィンティアの支えだった。
 そのファーストダンスを、レオナルドは適当に終わらせてしまった。
 ファーストダンスが終わった頃に現れたのは、レオナルドと対になるような緑色の鮮やかなドレスを纏ったキャサリン。
 当然ダンス会場ばざわついた。
 キャサリンは眩いばかりに美しかったから。
 レオナルドは婚約者のウィンティアを放置して、キャサリンに駆け寄り、膝を着いた。

「美しい方、私と一曲踊っていただけませんか?」

「はい、喜んで」

 そして、周囲が見惚れる程見事なダンスを披露するのだ。

「まあ、なんてお似合いな二人」

「まるで美しい絵を見ているようだ」

「でも、彼の婚約者って、彼女ではないの? ファーストダンス、彼女だったわ」

「あれがダンス? 途中で放り出したじゃないか」

「くすくすっ、見て、呆然としているわ」

「あれをバカ面って言うのよ」

「でも、あれじゃあ、彼もあっちを選びたいだろうな」

 ウィンティアは顔を覆って逃げ出した。
 それがゲームでの最後に見たウィンティアの姿だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

冤罪で追放された令嬢〜周囲の人間達は追放した大国に激怒しました〜

影茸
恋愛
王国アレスターレが強国となった立役者とされる公爵令嬢マーセリア・ラスレリア。 けれどもマーセリアはその知名度を危険視され、国王に冤罪をかけられ王国から追放されることになってしまう。 そしてアレスターレを強国にするため、必死に動き回っていたマーセリアは休暇気分で抵抗せず王国を去る。 ーーー だが、マーセリアの追放を周囲の人間は許さなかった。 ※一人称ですが、視点はころころ変わる予定です。視点が変わる時には題名にその人物の名前を書かせていただきます。

処理中です...