ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

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ゲスな③

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「キャサリンッ、そもそも今日は時間に遅れないようにってあれだけ言ってあったでしょうっ」

「だって、マルク様がもっとお話しましょうって、離して下さらないんですもの」

 ぽ、と頬を赤くするキャサリン。見た目がいいから、緩い男なら落ちそうだ。

「マルク? あなた、まさか」

「クラーラ夫人」

 底冷えのするマルカさんの声に、ローザ伯爵夫人が、青ざめた顔で振り替える。

「後退室願えませんか? そちらの方もね」

 マルカさんがキャサリンを視線で示す。

「まぁっ、使用人の身分でお母様に指図するなんてっ」

「キャサリン止めなさいっ。マルカ夫人、お見苦しい所をお見せしました」

「ええ、私もこんな場面に遭遇するなんて、初めてです。後で伯爵当主との面会を要求します」

 まるで最後通告のように、ローザ伯爵夫人が受け取る。

「わ、分かりました。主人と話をしておきますので、あの、ウィンティア、ごめんなさいね」

「何に?」

 今までローザ伯爵夫人に無言を貫き、言葉を放っていなかった私から出たのは、無機質な声だった。その声に僅かに怯む。

「ノックもしなかった事? 勝手に服を漁った事? 大した顔でないこと? ローザ伯爵には、一人娘しかいないって事? ウィンティアなんて知らないって事?」

 母親はぐうの音もない様子だが、ふんだっ。

「まあ、あなた、伯爵夫人であるお母様に対して不敬よっ」

「じゃあ、あんたはどうなのよ」

 反射的に言い返す。
 あれだけメイド達が制止したのに、ノックもせず部屋に入り、勝手に衣装部屋を漁った。

「礼儀って言葉知ってる?」

 思いっきりバカにしたように言ってやる。
 すると、キャサリンは驚いたようだが、何故か母親にすがりつく。

「お母様っ、あの子、怖いわっ。使用人の立場も知らないでっ、お父様に言ってすぐにあの子をっ、きゃっ」

 ローザ伯爵夫人はキャサリンの腕のワンピースを取り上げる。すぐに受け取るのは、ナタリアだ。

「キャサリン、来なさい」
 
 低音の冷たい声を響かせて、ローザ伯爵夫人はキャサリンを引きずるように退室。

「きゃあ、痛いですわ、お母様っ、どうなさったのっ」

 やっと、耳障りな声が聞こえなくなった。

「ウィンティアさん、座りましょうか?」

「はい、マルカさん」

 アイボリーのソファーに座る。ふう、と息をつく。

「すみません、一人になりたいです」

 マルカさんは少し考えて、判断を下す。

「分かりました。私は近くの部屋に控えましょう。何かあれば呼びなさい」

「はい」

「あ、あのウィンティアお嬢様、お茶をっ」

 ナタリアが腕に抱えた服を整えながら、言ってくれるが、断る。

「今は喉を通らないから」

 しゅん、と沈むナタリア。
 申し訳ない思いになるが、ナタリアにも退室してもらった。

 さあ、思い出したゲームの内容と現状を擦り合わせをしないと。
 ゲーム内のウィンティアには、傷なんてなかったのだから。
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