ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

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帰る為に⑩

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 お姫様の部屋かと思ったけど、シンプルは白い壁紙には、小さな花と葉があるくらい。家具は深い茶色の落ち着いた色の机、空の本棚、ソファーはアイボリー色。そして白と薄いピンクの布団が掛けられたベッドはシングルでない、セミダブルくらいある。鈴蘭の形をしたランプがおしゃれ。陽当たりよく、清潔感が溢れている。広さは山岸まどかが借りていた寮の最低二倍の広さがある。シンプルなホテルの部屋みたい。キャビネットにはエプロンを着けた青いウサギのぬいぐるみ。あれは確か、八歳の誕生日に、ジョアンナ夫人から贈られたぬいぐるみ。受け取って、ジョアンナ夫人が帰って、すぐに取り上げられた。ウサギの行く先はキャサリンだ。あの時のぬいぐるみだ。てっきりキャサリンが癇癪起こして壊されているとばかり。ウィンティアの持ち物を、キャサリンの元に行くと、ほとんどそのような結末だった。
 くたびれているが、ちょこん、と、ウサギがいる。
 良かったね、ウィンティア、あのウサギは寮に連れて行こうね。あれに取られる前に、ね。

「お嬢様、トランクはどちらに?」

「そこに置いて。大事なものだから、後で整理するから」

「はい」

 ナタリアは指示通りにトランクを置く。

「なかなか広い部屋ですね」
 
 マルカさんが見渡す。それを私は鼻で嗤う。きっと長女キャサリンの部屋は何倍もあるはず。

「お嬢様、お部屋の説明をよろしいですか? 終わりましたらお茶を」

「あー、そうね」

 部屋には入り口以外にドアが複数ある。まずはベランダ。

「こちらから庭が一望できます」
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