ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

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帰る為に⑦

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 とうとう、ウィンティアがローザ伯爵家に帰る日を迎えた。

「ティアお姉ちゃん、元気でね」

 あれから出来るだけの準備した。シスタースロウから譲り受けた古いトランクに荷物をぎゅうぎゅうに詰め込んだ。持ち帰るのはこのトランク一つと、ローザ伯爵家から送られて未開封のままの手紙と小包だけ。
 カーナが泣きそうになりながら、ウィンティアにさようならとキスをしてくれた。

「院長先生、シスタースロウ、皆さん、お世話になりました」

 ひしっ、としがみついたカーナを撫でながら、私は頭を下げる。
 たくさんのコクーン修道院の皆さんに見送ってくれる。

「ウィンティア、必ず手紙を送るのですよ。ローザ伯爵家では最初の二週間は国から、こちらの調査官が付きます」

 院長先生が紹介してくれたのは、生真面目そうな女性だ。かちっとした服装で眼鏡をかけている。

「マルカです。ウィンティアさん、よろしくお願いいたします」

 丁寧に挨拶してくれるので、こちらもお辞儀してご挨拶。
 それがコクーン修道院からのローザ伯爵家の、ウィンティアを返す条件だった。
 もし、手紙が途切れたり、代筆だったは、すぐさまローザ伯爵家に捜査がはいるそうだ。
 手紙の代金は、ローザ伯爵家。
 
「カーナ、いい子でね」

「うん」

 私は馬車に乗り込む。マルカさんもだ。
 色んな人が手を振ってくれから、私も手を振る。カーナが必死に手を振る姿に、込み上げてくるのがあったけど、必死に耐える。こっそり、袖で拭った。


 コクーン修道院から、首都のローザ伯爵家本邸まで、六日間かかる。馬車に揺られて、窓からの景色を眺めて過ごす。マルカさんとの会話はない。静かに過ごす。もともとおしゃべりな方ではないので、馬車内は沈黙が続いたが、心地よい。ただ、朝晩必ず体調確認だけはされるが、それだけ。
 馬車の旅は無事に終わり、ルルディ王国首都、クノスベに到着した。
 首都に入るのに、少し待たされたが、無事に入る。
 多分ヨーロッパな雰囲気な感じかな。歩く人達は当然日本人ではない。窓の向こうは、まるでドキュメント番組だ。いまいち実感が沸かないが、石畳の道を抜けると、露店や商店がならび、人々は活気に溢れている。時間があったら、歩きたいなあと思う。
 街並みは商店街から、住宅街に差し掛かる。

「ウィンティアさん」

「あ、はい」

 外の景色に目を奪われてしまい、返事に遅くなる。

「気分は?」

「問題はないです」

「そうですか。もうじき、ローザ伯爵家に到着します」

 もうじき、か。
 ウィンティアを散々傷付けてきた、魔窟であるローザ伯爵家。
 大丈夫よ。ウィンティア。
 私が、いるからね。
 胸に手を当てると、「うん」と返事があり。

「着きましたよ」

 顔を上げる。
 鉄柵に囲まれた、青い屋根のお屋敷が見えてきた。
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