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帰る為に③
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「こ、こ、蒟蒻者? 私、私に蒟蒻者?」
え? 待ってよ、蒟蒻者って、結婚予定の相手よね。ウィンティア、蒟蒻者いたの? もしもし、ウィンティアちゃん、もしもし。もしもーし。
…………………………………………………返事なしっ。
いや、ちょっと待ってよ、顔も名前も歳も分からない蒟蒻者? 山岸まどかの時だって、好きになった人はいたけど、それで高校時代痛い目に合った。それはもう激苦の記憶。
それなのに、蒟蒻者?
山岸まどかのではない、ウィンティアの蒟蒻者だが、あの激苦の記憶と、いきなりの出現に、かなり奇妙な表情を浮かべていた。それを心配そうに院長先生とシスタースロウ。
「ウィンティア? 話すのを止めましょうか?」
「あ、いえ、続けてください。その蒟蒻者がいるなんて知らなくて…………」
顔を見合せる院長先生とシスタースロウ。
「こんにゃくではありませんよ、婚約者。やはり、ローザ伯爵家からの手紙は読んでいないのすね。貴女の気持ちを考えたら仕方ないこと」
手紙? あ、部屋にあった木箱に入っていた、たくさんの手紙と小包。すべて未開封で、差出人はローザ伯爵家だった。ジョアンナ夫人、世話してくれた年長の少女からの手紙はすべて読んであり、机の引き出しにしまってあった。
おそらく、未開封の手紙に蒟蒻、違う婚約者の話があったかも。あったかも知れないが、あの未開封の手紙を開けるつもりはない。
ただ、ひたすら動揺。
「本当に私のこ、こ、婚約者、なんているんですか? 私には、その傷があるし」
貴族女性にしたら、致命傷。貴族特有、家の都合でもあっても拒まれる程だ。
「私の口から説明するのは気が引けますが。それに婚約した詳しい経過は分かりませんし、本来なら婚約を決めたローザ伯爵当主から行われなくてはなりませんが」
「構いません。院長先生の知り得る限りで構いません。教えてください。すべて教えてください」
「それなら」
院長先生は説明を開始。
「ウィンティアとの婚約は二度目の保護の後。お相手は名前はレオナルド・キーファー。ウーヴァ公爵家が後見人されています」
ウーヴァ公爵家って。ウィンティアの記憶でもある。このコクーン修道院にも、定期的に寄付をしてくれ、ルルディ王国にある三公爵の一つのはず。領地は葡萄や林檎、果物の名産地で、ワインが有名だとかなんとか。毎年、果物の飴が贈られてきた。それから、すごくお金持ちくらいしか分からない。
「年齢はおそらく、二十歳。護衛騎士だそうです」
私、山岸まどかの享年。でも、ちょっと歳離れてない? 現在ウィンティアは十二で、婚約したのが八歳くらいなら、向こうは十六歳の時なら、嫌がらない? しかも家の都合なら尚更。
貴族同士の婚約に、個人の好き嫌いは関係ないか。
「婚約した経緯は私には分かりませんが、ウィンティアの事情をすべて知った上の婚約です。私宛にも手紙が来ました。レオナルド様当人とウーヴァ公爵家連名で」
ふう、と息を着き、院長先生は立ち上がり、机の引き出しから一通の手紙を取り出す。そっと、差し出してくれるが、他人が他人に宛てた手紙を読むのは抵抗感がある。
「あの、内容を簡単に教えてもらえませんか? 院長先生宛のお手紙ですし」
「そう。なら、簡単に。もしウィンティアが学園に通いたい意思があっても、ローザ伯爵家と関わらるのを拒み、二の足を踏むような状況なら、ウーヴァ公爵家が支援します、と。学費、寮、もしくは近隣のアパートメントの手配、日用品からすべて」
話が上手すぎる。絶対に何かしらの裏がある。ウィンティア、ウィンティア、どう思う? 問いかけると「うん」と返事がある。
「そして、貴方に、レオナルド様が会いたいそうよ」
その言葉には、ちょっとドキッとした。顔も知らない婚約者からの言葉。
しかし、すぐにドキッとした気持ちはなくなる。きっと義理で、仕方なく、義務で言ったはずだから。貴族同士の、本人の意思を無視した婚約のはず。そのレオナルドって人、言わされているんじゃない?
裏があるような内容だが、かなり魅力的な話だ。もしかしたら、本当に、ウィンティアを婚約者として大切にしたいのかも。傷があろうがなかろうか、ウィンティアは山岸まどかから見ても、かわいい少女だ。性格だって、あのカーナと言う少女がお姉ちゃんと慕うような性格だから、優しい性格なんだ。だから、ウィンティアを望んだんだ。
何より、ローザ伯爵家と関わらずに学園に行ける。魅力的だが、どうしても、裏があるように思えて仕方ない。
どうしよう。
「院長先生。一晩考えさせてください」
悩んで、結局その言葉を絞り出した。
え? 待ってよ、蒟蒻者って、結婚予定の相手よね。ウィンティア、蒟蒻者いたの? もしもし、ウィンティアちゃん、もしもし。もしもーし。
…………………………………………………返事なしっ。
いや、ちょっと待ってよ、顔も名前も歳も分からない蒟蒻者? 山岸まどかの時だって、好きになった人はいたけど、それで高校時代痛い目に合った。それはもう激苦の記憶。
それなのに、蒟蒻者?
山岸まどかのではない、ウィンティアの蒟蒻者だが、あの激苦の記憶と、いきなりの出現に、かなり奇妙な表情を浮かべていた。それを心配そうに院長先生とシスタースロウ。
「ウィンティア? 話すのを止めましょうか?」
「あ、いえ、続けてください。その蒟蒻者がいるなんて知らなくて…………」
顔を見合せる院長先生とシスタースロウ。
「こんにゃくではありませんよ、婚約者。やはり、ローザ伯爵家からの手紙は読んでいないのすね。貴女の気持ちを考えたら仕方ないこと」
手紙? あ、部屋にあった木箱に入っていた、たくさんの手紙と小包。すべて未開封で、差出人はローザ伯爵家だった。ジョアンナ夫人、世話してくれた年長の少女からの手紙はすべて読んであり、机の引き出しにしまってあった。
おそらく、未開封の手紙に蒟蒻、違う婚約者の話があったかも。あったかも知れないが、あの未開封の手紙を開けるつもりはない。
ただ、ひたすら動揺。
「本当に私のこ、こ、婚約者、なんているんですか? 私には、その傷があるし」
貴族女性にしたら、致命傷。貴族特有、家の都合でもあっても拒まれる程だ。
「私の口から説明するのは気が引けますが。それに婚約した詳しい経過は分かりませんし、本来なら婚約を決めたローザ伯爵当主から行われなくてはなりませんが」
「構いません。院長先生の知り得る限りで構いません。教えてください。すべて教えてください」
「それなら」
院長先生は説明を開始。
「ウィンティアとの婚約は二度目の保護の後。お相手は名前はレオナルド・キーファー。ウーヴァ公爵家が後見人されています」
ウーヴァ公爵家って。ウィンティアの記憶でもある。このコクーン修道院にも、定期的に寄付をしてくれ、ルルディ王国にある三公爵の一つのはず。領地は葡萄や林檎、果物の名産地で、ワインが有名だとかなんとか。毎年、果物の飴が贈られてきた。それから、すごくお金持ちくらいしか分からない。
「年齢はおそらく、二十歳。護衛騎士だそうです」
私、山岸まどかの享年。でも、ちょっと歳離れてない? 現在ウィンティアは十二で、婚約したのが八歳くらいなら、向こうは十六歳の時なら、嫌がらない? しかも家の都合なら尚更。
貴族同士の婚約に、個人の好き嫌いは関係ないか。
「婚約した経緯は私には分かりませんが、ウィンティアの事情をすべて知った上の婚約です。私宛にも手紙が来ました。レオナルド様当人とウーヴァ公爵家連名で」
ふう、と息を着き、院長先生は立ち上がり、机の引き出しから一通の手紙を取り出す。そっと、差し出してくれるが、他人が他人に宛てた手紙を読むのは抵抗感がある。
「あの、内容を簡単に教えてもらえませんか? 院長先生宛のお手紙ですし」
「そう。なら、簡単に。もしウィンティアが学園に通いたい意思があっても、ローザ伯爵家と関わらるのを拒み、二の足を踏むような状況なら、ウーヴァ公爵家が支援します、と。学費、寮、もしくは近隣のアパートメントの手配、日用品からすべて」
話が上手すぎる。絶対に何かしらの裏がある。ウィンティア、ウィンティア、どう思う? 問いかけると「うん」と返事がある。
「そして、貴方に、レオナルド様が会いたいそうよ」
その言葉には、ちょっとドキッとした。顔も知らない婚約者からの言葉。
しかし、すぐにドキッとした気持ちはなくなる。きっと義理で、仕方なく、義務で言ったはずだから。貴族同士の、本人の意思を無視した婚約のはず。そのレオナルドって人、言わされているんじゃない?
裏があるような内容だが、かなり魅力的な話だ。もしかしたら、本当に、ウィンティアを婚約者として大切にしたいのかも。傷があろうがなかろうか、ウィンティアは山岸まどかから見ても、かわいい少女だ。性格だって、あのカーナと言う少女がお姉ちゃんと慕うような性格だから、優しい性格なんだ。だから、ウィンティアを望んだんだ。
何より、ローザ伯爵家と関わらずに学園に行ける。魅力的だが、どうしても、裏があるように思えて仕方ない。
どうしよう。
「院長先生。一晩考えさせてください」
悩んで、結局その言葉を絞り出した。
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