13 / 338
帰る為に③
しおりを挟む
「こ、こ、蒟蒻者? 私、私に蒟蒻者?」
え? 待ってよ、蒟蒻者って、結婚予定の相手よね。ウィンティア、蒟蒻者いたの? もしもし、ウィンティアちゃん、もしもし。もしもーし。
…………………………………………………返事なしっ。
いや、ちょっと待ってよ、顔も名前も歳も分からない蒟蒻者? 山岸まどかの時だって、好きになった人はいたけど、それで高校時代痛い目に合った。それはもう激苦の記憶。
それなのに、蒟蒻者?
山岸まどかのではない、ウィンティアの蒟蒻者だが、あの激苦の記憶と、いきなりの出現に、かなり奇妙な表情を浮かべていた。それを心配そうに院長先生とシスタースロウ。
「ウィンティア? 話すのを止めましょうか?」
「あ、いえ、続けてください。その蒟蒻者がいるなんて知らなくて…………」
顔を見合せる院長先生とシスタースロウ。
「こんにゃくではありませんよ、婚約者。やはり、ローザ伯爵家からの手紙は読んでいないのすね。貴女の気持ちを考えたら仕方ないこと」
手紙? あ、部屋にあった木箱に入っていた、たくさんの手紙と小包。すべて未開封で、差出人はローザ伯爵家だった。ジョアンナ夫人、世話してくれた年長の少女からの手紙はすべて読んであり、机の引き出しにしまってあった。
おそらく、未開封の手紙に蒟蒻、違う婚約者の話があったかも。あったかも知れないが、あの未開封の手紙を開けるつもりはない。
ただ、ひたすら動揺。
「本当に私のこ、こ、婚約者、なんているんですか? 私には、その傷があるし」
貴族女性にしたら、致命傷。貴族特有、家の都合でもあっても拒まれる程だ。
「私の口から説明するのは気が引けますが。それに婚約した詳しい経過は分かりませんし、本来なら婚約を決めたローザ伯爵当主から行われなくてはなりませんが」
「構いません。院長先生の知り得る限りで構いません。教えてください。すべて教えてください」
「それなら」
院長先生は説明を開始。
「ウィンティアとの婚約は二度目の保護の後。お相手は名前はレオナルド・キーファー。ウーヴァ公爵家が後見人されています」
ウーヴァ公爵家って。ウィンティアの記憶でもある。このコクーン修道院にも、定期的に寄付をしてくれ、ルルディ王国にある三公爵の一つのはず。領地は葡萄や林檎、果物の名産地で、ワインが有名だとかなんとか。毎年、果物の飴が贈られてきた。それから、すごくお金持ちくらいしか分からない。
「年齢はおそらく、二十歳。護衛騎士だそうです」
私、山岸まどかの享年。でも、ちょっと歳離れてない? 現在ウィンティアは十二で、婚約したのが八歳くらいなら、向こうは十六歳の時なら、嫌がらない? しかも家の都合なら尚更。
貴族同士の婚約に、個人の好き嫌いは関係ないか。
「婚約した経緯は私には分かりませんが、ウィンティアの事情をすべて知った上の婚約です。私宛にも手紙が来ました。レオナルド様当人とウーヴァ公爵家連名で」
ふう、と息を着き、院長先生は立ち上がり、机の引き出しから一通の手紙を取り出す。そっと、差し出してくれるが、他人が他人に宛てた手紙を読むのは抵抗感がある。
「あの、内容を簡単に教えてもらえませんか? 院長先生宛のお手紙ですし」
「そう。なら、簡単に。もしウィンティアが学園に通いたい意思があっても、ローザ伯爵家と関わらるのを拒み、二の足を踏むような状況なら、ウーヴァ公爵家が支援します、と。学費、寮、もしくは近隣のアパートメントの手配、日用品からすべて」
話が上手すぎる。絶対に何かしらの裏がある。ウィンティア、ウィンティア、どう思う? 問いかけると「うん」と返事がある。
「そして、貴方に、レオナルド様が会いたいそうよ」
その言葉には、ちょっとドキッとした。顔も知らない婚約者からの言葉。
しかし、すぐにドキッとした気持ちはなくなる。きっと義理で、仕方なく、義務で言ったはずだから。貴族同士の、本人の意思を無視した婚約のはず。そのレオナルドって人、言わされているんじゃない?
裏があるような内容だが、かなり魅力的な話だ。もしかしたら、本当に、ウィンティアを婚約者として大切にしたいのかも。傷があろうがなかろうか、ウィンティアは山岸まどかから見ても、かわいい少女だ。性格だって、あのカーナと言う少女がお姉ちゃんと慕うような性格だから、優しい性格なんだ。だから、ウィンティアを望んだんだ。
何より、ローザ伯爵家と関わらずに学園に行ける。魅力的だが、どうしても、裏があるように思えて仕方ない。
どうしよう。
「院長先生。一晩考えさせてください」
悩んで、結局その言葉を絞り出した。
え? 待ってよ、蒟蒻者って、結婚予定の相手よね。ウィンティア、蒟蒻者いたの? もしもし、ウィンティアちゃん、もしもし。もしもーし。
…………………………………………………返事なしっ。
いや、ちょっと待ってよ、顔も名前も歳も分からない蒟蒻者? 山岸まどかの時だって、好きになった人はいたけど、それで高校時代痛い目に合った。それはもう激苦の記憶。
それなのに、蒟蒻者?
山岸まどかのではない、ウィンティアの蒟蒻者だが、あの激苦の記憶と、いきなりの出現に、かなり奇妙な表情を浮かべていた。それを心配そうに院長先生とシスタースロウ。
「ウィンティア? 話すのを止めましょうか?」
「あ、いえ、続けてください。その蒟蒻者がいるなんて知らなくて…………」
顔を見合せる院長先生とシスタースロウ。
「こんにゃくではありませんよ、婚約者。やはり、ローザ伯爵家からの手紙は読んでいないのすね。貴女の気持ちを考えたら仕方ないこと」
手紙? あ、部屋にあった木箱に入っていた、たくさんの手紙と小包。すべて未開封で、差出人はローザ伯爵家だった。ジョアンナ夫人、世話してくれた年長の少女からの手紙はすべて読んであり、机の引き出しにしまってあった。
おそらく、未開封の手紙に蒟蒻、違う婚約者の話があったかも。あったかも知れないが、あの未開封の手紙を開けるつもりはない。
ただ、ひたすら動揺。
「本当に私のこ、こ、婚約者、なんているんですか? 私には、その傷があるし」
貴族女性にしたら、致命傷。貴族特有、家の都合でもあっても拒まれる程だ。
「私の口から説明するのは気が引けますが。それに婚約した詳しい経過は分かりませんし、本来なら婚約を決めたローザ伯爵当主から行われなくてはなりませんが」
「構いません。院長先生の知り得る限りで構いません。教えてください。すべて教えてください」
「それなら」
院長先生は説明を開始。
「ウィンティアとの婚約は二度目の保護の後。お相手は名前はレオナルド・キーファー。ウーヴァ公爵家が後見人されています」
ウーヴァ公爵家って。ウィンティアの記憶でもある。このコクーン修道院にも、定期的に寄付をしてくれ、ルルディ王国にある三公爵の一つのはず。領地は葡萄や林檎、果物の名産地で、ワインが有名だとかなんとか。毎年、果物の飴が贈られてきた。それから、すごくお金持ちくらいしか分からない。
「年齢はおそらく、二十歳。護衛騎士だそうです」
私、山岸まどかの享年。でも、ちょっと歳離れてない? 現在ウィンティアは十二で、婚約したのが八歳くらいなら、向こうは十六歳の時なら、嫌がらない? しかも家の都合なら尚更。
貴族同士の婚約に、個人の好き嫌いは関係ないか。
「婚約した経緯は私には分かりませんが、ウィンティアの事情をすべて知った上の婚約です。私宛にも手紙が来ました。レオナルド様当人とウーヴァ公爵家連名で」
ふう、と息を着き、院長先生は立ち上がり、机の引き出しから一通の手紙を取り出す。そっと、差し出してくれるが、他人が他人に宛てた手紙を読むのは抵抗感がある。
「あの、内容を簡単に教えてもらえませんか? 院長先生宛のお手紙ですし」
「そう。なら、簡単に。もしウィンティアが学園に通いたい意思があっても、ローザ伯爵家と関わらるのを拒み、二の足を踏むような状況なら、ウーヴァ公爵家が支援します、と。学費、寮、もしくは近隣のアパートメントの手配、日用品からすべて」
話が上手すぎる。絶対に何かしらの裏がある。ウィンティア、ウィンティア、どう思う? 問いかけると「うん」と返事がある。
「そして、貴方に、レオナルド様が会いたいそうよ」
その言葉には、ちょっとドキッとした。顔も知らない婚約者からの言葉。
しかし、すぐにドキッとした気持ちはなくなる。きっと義理で、仕方なく、義務で言ったはずだから。貴族同士の、本人の意思を無視した婚約のはず。そのレオナルドって人、言わされているんじゃない?
裏があるような内容だが、かなり魅力的な話だ。もしかしたら、本当に、ウィンティアを婚約者として大切にしたいのかも。傷があろうがなかろうか、ウィンティアは山岸まどかから見ても、かわいい少女だ。性格だって、あのカーナと言う少女がお姉ちゃんと慕うような性格だから、優しい性格なんだ。だから、ウィンティアを望んだんだ。
何より、ローザ伯爵家と関わらずに学園に行ける。魅力的だが、どうしても、裏があるように思えて仕方ない。
どうしよう。
「院長先生。一晩考えさせてください」
悩んで、結局その言葉を絞り出した。
110
お気に入りに追加
552
あなたにおすすめの小説
『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる