51 / 51
自分の仕事⑧
しおりを挟む
モーリスが持ってきた食料を全部食い尽くす。エミリアがお手伝いしたレーズンバターサンドを大事に食べた。帰ったら、美味しかったと言わないと。
後ろで、ドラゴンの解体作業が始まっている。ある程度解体しないと運べないからだ。ズタズタになった皮鎧を脱ぐ。
「立てますか?」
「辺境伯様、どうぞ」
モーリスとガッズの手を借りて、立ち上がる。
前回もぐらぐらしたが、やはり今回も足がぐらぐらだ。なんとか手を借りて、ファランに乗る。
「先に離脱する、後は頼むぞ」
と、解体に走り回る面々に伝えると、ゴーグル、マスクと手袋を装着し、血塗れの手を振ってくる。絵面はかなり、えぐい事になっているけどな。
悪いが先に離脱する。正直くたくただ、腹もまだ食物をほっしている。賢いファランは体に響かない様に闊歩する。
ゆっくり進み、到着したのは夕方だ。
村には新しい人員が派遣されていて、次々に物資が運び込まれてくる。しばらく、ヒズ村は騒がしくなるはずだ。森の奥で解体されたドラゴンは、更にここで処理されて運び出される。しばらくドラゴンの素材欲しさに、各地から様々な人間が集まり、フォン辺境伯は賑わう。
「辺境伯様っ」
ヒズ村の代表マイスが走ってくる。他の村人は、まだ家の中だ。
「ドラゴンは無事に討伐した。しばらくヒズ村は騒がしくなるが、しばらくだ。時期に収まる」
「はっ、はいっ」
すると、家の中から歓声が上がる。
「何か不満がある場合、こちらも代表者を立てる」
「はいっ」
「それから、ドラゴンを発見した狩人を呼べ」
「は、はいっ」
マイスが慌てて走り去り、直ぐにあの狩人を連れて帰って来た。狩人の顔に緊張の色が浮かぶ。
「名は?」
「ハンス、と申します」
頭を下げて、やや強ばった声を出すハンス。
「ならばハンス。そなたに今回は褒美を与えよう」
「え?」
と、下げていた顔をあげる。戸惑いの顔だ。
「ドラゴンを前にしての咄嗟の判断は見事だ。今、ヒズ村が無事であるのは、そなたの功績である。いずれフォン辺境伯より、ふさわしい褒賞を与えよう」
自分の言葉に、震えるハンス。
「あ、あ、ありがとう、ございます」
さて、そろそろ限界だ、自分が。
「私は休む、ガッズ、後の指揮を任せる」
「お任せを」
ファランは慣れた騎士が連れていく。
自分用のテントに入るとまずズタズタになった服を脱ぎ、軽く身体を拭き上げて、着なれたラフな格好になる。
「ご主人様、さあ、どうぞ、お召し上がりください」
と、パンの籠と、葉野菜と肉の鍋ごときた。おそらく成人男性の五人分の食事を平らげる。ああ、落ち着いてきた。すると次は眠気がくる。
「モーリス」
「はい、ご主人様」
「休む」
「はい」
そのまま横に倒れると、意識を飛ばした。
後ろで、ドラゴンの解体作業が始まっている。ある程度解体しないと運べないからだ。ズタズタになった皮鎧を脱ぐ。
「立てますか?」
「辺境伯様、どうぞ」
モーリスとガッズの手を借りて、立ち上がる。
前回もぐらぐらしたが、やはり今回も足がぐらぐらだ。なんとか手を借りて、ファランに乗る。
「先に離脱する、後は頼むぞ」
と、解体に走り回る面々に伝えると、ゴーグル、マスクと手袋を装着し、血塗れの手を振ってくる。絵面はかなり、えぐい事になっているけどな。
悪いが先に離脱する。正直くたくただ、腹もまだ食物をほっしている。賢いファランは体に響かない様に闊歩する。
ゆっくり進み、到着したのは夕方だ。
村には新しい人員が派遣されていて、次々に物資が運び込まれてくる。しばらく、ヒズ村は騒がしくなるはずだ。森の奥で解体されたドラゴンは、更にここで処理されて運び出される。しばらくドラゴンの素材欲しさに、各地から様々な人間が集まり、フォン辺境伯は賑わう。
「辺境伯様っ」
ヒズ村の代表マイスが走ってくる。他の村人は、まだ家の中だ。
「ドラゴンは無事に討伐した。しばらくヒズ村は騒がしくなるが、しばらくだ。時期に収まる」
「はっ、はいっ」
すると、家の中から歓声が上がる。
「何か不満がある場合、こちらも代表者を立てる」
「はいっ」
「それから、ドラゴンを発見した狩人を呼べ」
「は、はいっ」
マイスが慌てて走り去り、直ぐにあの狩人を連れて帰って来た。狩人の顔に緊張の色が浮かぶ。
「名は?」
「ハンス、と申します」
頭を下げて、やや強ばった声を出すハンス。
「ならばハンス。そなたに今回は褒美を与えよう」
「え?」
と、下げていた顔をあげる。戸惑いの顔だ。
「ドラゴンを前にしての咄嗟の判断は見事だ。今、ヒズ村が無事であるのは、そなたの功績である。いずれフォン辺境伯より、ふさわしい褒賞を与えよう」
自分の言葉に、震えるハンス。
「あ、あ、ありがとう、ございます」
さて、そろそろ限界だ、自分が。
「私は休む、ガッズ、後の指揮を任せる」
「お任せを」
ファランは慣れた騎士が連れていく。
自分用のテントに入るとまずズタズタになった服を脱ぎ、軽く身体を拭き上げて、着なれたラフな格好になる。
「ご主人様、さあ、どうぞ、お召し上がりください」
と、パンの籠と、葉野菜と肉の鍋ごときた。おそらく成人男性の五人分の食事を平らげる。ああ、落ち着いてきた。すると次は眠気がくる。
「モーリス」
「はい、ご主人様」
「休む」
「はい」
そのまま横に倒れると、意識を飛ばした。
248
お気に入りに追加
188
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

婚約解消は君の方から
みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。
しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。
私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、
嫌がらせをやめるよう呼び出したのに……
どうしてこうなったんだろう?
2020.2.17より、カレンの話を始めました。
小説家になろうさんにも掲載しています。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中
夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども
神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」
と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。
大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。
文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

寡黙な貴方は今も彼女を想う
MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。
ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。
シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。
言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。
※設定はゆるいです。
※溺愛タグ追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる