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自分の仕事⑥

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 次の日。
 朝から、モーリスが簡単だが、食事を作ってくれる。シェフ特製の丸型のパンに切り込みをいれて、燻製ベーコンを軽く炙って、やや酸っぱい青リンゴをスライスして挟んでいる。エミリアなら、一つも食べれないようなサイズだが、合計四つ平らげる。

「ご主人様、こちらのポーチに、いつものシリアルバーがございます」

 加護を使って戦う際に、必ず口にするものを持参する。
 使い捨ての水筒も腰から下げる。高確率で壊れるが。

 支度を済ませて、皮鎧を身に纏う。マントは、おそらく森の中を移動するのに邪魔になるなら外している。すべての装備品を確認。

「フォン辺境伯様っ、ファランの準備が整いましたぞっ」

 いつものようにガッズが呼びに来た。
 よし、行こう。
 さっさと、殴り殺して帰ろう。
 エミリア、明日には帰るからな。
 ドラゴンも秘境から出なければ、こんなことにはならなかったはず。お互いに住む世界がある。境界線から出たら、すぐに引き戻らなければ、討伐対象だ。

 テントを出ると整然と並ぶ騎士達。そして、ファランの世話になれた騎士に手綱を引かれてやってきた。村長だけが見送りに来た。他の住人は、言いつけ通りに家の中だろう。

「ファラン、来い」

 大人しくしたがっているようだが、その黒目は、爛々と輝いている。
 ヤル気満々だ。
 ファランに騎乗し、振り返る。

「仕留めたら合図を出す。もしくは、ファランのかけた加護の共鳴を解除を目安にしてくれ」

「「はっ」」

 返事をするガッズとモーリス、そして騎士団に見送られて進む。
 村を出て、森に近付き、ゆっくり息を吸う。キィィィ、と耳鳴りがする。
 感覚が研ぎ澄まされて、徐々に広がっていく。
 ファランの角、体躯が銀色に、目は青に染まる。

 加護の共鳴。

 一時的だが、他者に同じ力を与える事ができる。その際、相手は自分の色に染まる。
 どんな攻撃も弾き返す絶対防御の鎧神アーマーヘッドの加護を得られるからいいこと尽くしと思われるが、当然負荷はかかる。

 強烈な空腹だ。

 以前、人間相手にやった事があるが、使い方を間違えたら、すぐに餓死寸前になってしまう。ファランは体質的に、かたりの耐性があるので、できるだけ。

 ファランが軽く駆け出す。
 馬だが、まるで鹿のように弾くように森の木々を抜けていく。
 人間の足であれば数時間かかるが、数分で目的地に到着。
 軽くファランが跳躍する。
 眼下には、呑気に寝こけている、赤黒い鱗を持つ、ドラゴンだ。
 その体積は、大型の幌馬車数台分。寝息が出る度に、口の端しから覗く牙は、鋭く、巨大だ。
 あの狩人は、咄嗟に息子の口を塞いだ。勲章ものだ。息子が悲鳴を上げて、ドラゴンを起こしたら、あのヒズ村は壊滅していたはず。
 ドラゴンが起きて、ヒズ村に気がつくのは、時間の問題だろうが、狩人が作った僅かな時間で、我々が来た。
 この時間を作った狩人に、褒美をやらないとな。

「ファラン、離脱しろ」

 跳躍したファランから飛び降りる。そのままドラゴンの頭に着地する。
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