49 / 51
自分の仕事⑥
しおりを挟む
次の日。
朝から、モーリスが簡単だが、食事を作ってくれる。シェフ特製の丸型のパンに切り込みをいれて、燻製ベーコンを軽く炙って、やや酸っぱい青リンゴをスライスして挟んでいる。エミリアなら、一つも食べれないようなサイズだが、合計四つ平らげる。
「ご主人様、こちらのポーチに、いつものシリアルバーがございます」
加護を使って戦う際に、必ず口にするものを持参する。
使い捨ての水筒も腰から下げる。高確率で壊れるが。
支度を済ませて、皮鎧を身に纏う。マントは、おそらく森の中を移動するのに邪魔になるなら外している。すべての装備品を確認。
「フォン辺境伯様っ、ファランの準備が整いましたぞっ」
いつものようにガッズが呼びに来た。
よし、行こう。
さっさと、殴り殺して帰ろう。
エミリア、明日には帰るからな。
ドラゴンも秘境から出なければ、こんなことにはならなかったはず。お互いに住む世界がある。境界線から出たら、すぐに引き戻らなければ、討伐対象だ。
テントを出ると整然と並ぶ騎士達。そして、ファランの世話になれた騎士に手綱を引かれてやってきた。村長だけが見送りに来た。他の住人は、言いつけ通りに家の中だろう。
「ファラン、来い」
大人しくしたがっているようだが、その黒目は、爛々と輝いている。
ヤル気満々だ。
ファランに騎乗し、振り返る。
「仕留めたら合図を出す。もしくは、ファランのかけた加護の共鳴を解除を目安にしてくれ」
「「はっ」」
返事をするガッズとモーリス、そして騎士団に見送られて進む。
村を出て、森に近付き、ゆっくり息を吸う。キィィィ、と耳鳴りがする。
感覚が研ぎ澄まされて、徐々に広がっていく。
ファランの角、体躯が銀色に、目は青に染まる。
加護の共鳴。
一時的だが、他者に同じ力を与える事ができる。その際、相手は自分の色に染まる。
どんな攻撃も弾き返す絶対防御の鎧神の加護を得られるからいいこと尽くしと思われるが、当然負荷はかかる。
強烈な空腹だ。
以前、人間相手にやった事があるが、使い方を間違えたら、すぐに餓死寸前になってしまう。ファランは体質的に、かたりの耐性があるので、できるだけ。
ファランが軽く駆け出す。
馬だが、まるで鹿のように弾くように森の木々を抜けていく。
人間の足であれば数時間かかるが、数分で目的地に到着。
軽くファランが跳躍する。
眼下には、呑気に寝こけている、赤黒い鱗を持つ、ドラゴンだ。
その体積は、大型の幌馬車数台分。寝息が出る度に、口の端しから覗く牙は、鋭く、巨大だ。
あの狩人は、咄嗟に息子の口を塞いだ。勲章ものだ。息子が悲鳴を上げて、ドラゴンを起こしたら、あのヒズ村は壊滅していたはず。
ドラゴンが起きて、ヒズ村に気がつくのは、時間の問題だろうが、狩人が作った僅かな時間で、我々が来た。
この時間を作った狩人に、褒美をやらないとな。
「ファラン、離脱しろ」
跳躍したファランから飛び降りる。そのままドラゴンの頭に着地する。
朝から、モーリスが簡単だが、食事を作ってくれる。シェフ特製の丸型のパンに切り込みをいれて、燻製ベーコンを軽く炙って、やや酸っぱい青リンゴをスライスして挟んでいる。エミリアなら、一つも食べれないようなサイズだが、合計四つ平らげる。
「ご主人様、こちらのポーチに、いつものシリアルバーがございます」
加護を使って戦う際に、必ず口にするものを持参する。
使い捨ての水筒も腰から下げる。高確率で壊れるが。
支度を済ませて、皮鎧を身に纏う。マントは、おそらく森の中を移動するのに邪魔になるなら外している。すべての装備品を確認。
「フォン辺境伯様っ、ファランの準備が整いましたぞっ」
いつものようにガッズが呼びに来た。
よし、行こう。
さっさと、殴り殺して帰ろう。
エミリア、明日には帰るからな。
ドラゴンも秘境から出なければ、こんなことにはならなかったはず。お互いに住む世界がある。境界線から出たら、すぐに引き戻らなければ、討伐対象だ。
テントを出ると整然と並ぶ騎士達。そして、ファランの世話になれた騎士に手綱を引かれてやってきた。村長だけが見送りに来た。他の住人は、言いつけ通りに家の中だろう。
「ファラン、来い」
大人しくしたがっているようだが、その黒目は、爛々と輝いている。
ヤル気満々だ。
ファランに騎乗し、振り返る。
「仕留めたら合図を出す。もしくは、ファランのかけた加護の共鳴を解除を目安にしてくれ」
「「はっ」」
返事をするガッズとモーリス、そして騎士団に見送られて進む。
村を出て、森に近付き、ゆっくり息を吸う。キィィィ、と耳鳴りがする。
感覚が研ぎ澄まされて、徐々に広がっていく。
ファランの角、体躯が銀色に、目は青に染まる。
加護の共鳴。
一時的だが、他者に同じ力を与える事ができる。その際、相手は自分の色に染まる。
どんな攻撃も弾き返す絶対防御の鎧神の加護を得られるからいいこと尽くしと思われるが、当然負荷はかかる。
強烈な空腹だ。
以前、人間相手にやった事があるが、使い方を間違えたら、すぐに餓死寸前になってしまう。ファランは体質的に、かたりの耐性があるので、できるだけ。
ファランが軽く駆け出す。
馬だが、まるで鹿のように弾くように森の木々を抜けていく。
人間の足であれば数時間かかるが、数分で目的地に到着。
軽くファランが跳躍する。
眼下には、呑気に寝こけている、赤黒い鱗を持つ、ドラゴンだ。
その体積は、大型の幌馬車数台分。寝息が出る度に、口の端しから覗く牙は、鋭く、巨大だ。
あの狩人は、咄嗟に息子の口を塞いだ。勲章ものだ。息子が悲鳴を上げて、ドラゴンを起こしたら、あのヒズ村は壊滅していたはず。
ドラゴンが起きて、ヒズ村に気がつくのは、時間の問題だろうが、狩人が作った僅かな時間で、我々が来た。
この時間を作った狩人に、褒美をやらないとな。
「ファラン、離脱しろ」
跳躍したファランから飛び降りる。そのままドラゴンの頭に着地する。
212
お気に入りに追加
177
あなたにおすすめの小説
敗戦して嫁ぎましたが、存在を忘れ去られてしまったので自給自足で頑張ります!
桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。
※※※※※※※※※※※※※
魔族 vs 人間。
冷戦を経ながらくすぶり続けた長い戦いは、人間側の敗戦に近い状況で、ついに終止符が打たれた。
名ばかりの王族リュシェラは、和平の証として、魔王イヴァシグスに第7王妃として嫁ぐ事になる。だけど、嫁いだ夫には魔人の妻との間に、すでに皇子も皇女も何人も居るのだ。
人間のリュシェラが、ここで王妃として求められる事は何もない。和平とは名ばかりの、敗戦国の隷妃として、リュシェラはただ静かに命が潰えていくのを待つばかり……なんて、殊勝な性格でもなく、与えられた宮でのんびり自給自足の生活を楽しんでいく。
そんなリュシェラには、実は誰にも言えない秘密があった。
※※※※※※※※※※※※※
短編は難しいな…と痛感したので、慣れた文字数、文体で書いてみました。
お付き合い頂けたら嬉しいです!
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
バッドエンド確定の悪役令嬢に転生してしまったので、好き勝手しようと思います
新野乃花(大舟)
恋愛
日本で普通の生活を送っていた私は、気が付いたらアリシラ・アーレントという名前の悪役令嬢になってしまっていた。過去には気に入らない他の貴族令嬢に嫌がらせをしたり、国中の女性たちから大人気の第一王子を誘惑しにかかったりと、調べれば調べるほど最後には正ヒロインからざまぁされる結末しか見えない今の私。なので私はそういう人たちとの接点を絶って、一人で自由にのびのびスローライフを楽しむことにした……はずだったのに、それでも私の事をざまぁさせるべく色々な負けフラグが勝手に立っていく…。行くも戻るもバッドエンド確定な私は、この世界で生き抜くことができるのでしょうか…?
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる