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自分の仕事②
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領主教育が進むなか、ドラゴン討伐の準備がすすむ。討伐の準備って言っても、特別何かをするわけない。常日頃使用する鎧やマントの整備だ。こちらは安心して任せられる専用使用人がいるから、渡している。
エミリアと会える短い時間を大事にする。できるだけ、朝食を一緒に取り、領主教育状況次第で夕食を一緒に取る。エミリアのテーブルマナーは、10歳の伯爵令嬢としてのそれとしてはギリギリ妥協点だったそうだが、母の教えがいいのか、順調に進んでいる。時折、マナー無視の休息日を設けている。これが自分にしたら助かる、実は自分はテーブルマナーが大の苦手、誰かと会食なんて基本的にしないし、晩餐会にも出ない、何より平均的成人男性の五倍を食べるので、マナーもへったくれもない。骨付き肉なんて、手掴みで食べては、母の扇を何本折ったか。だが、エミリアが頑張っているんだ、自分も頑張らないと。
今も大事なエミリアとの時間だ。
「バルド様、今日はお義母様の学舎にアマリアと行ってきました」
「ああ、母上の。どうだった?」
「たくさんの方がいて、中にはバルド様より歳上の方もいらっしゃいました」
「そうだな。母上は学びたいと言う姿勢があれば、歳も性別も関係ないといっているからな」
母上のやっている学舎は、年齢性別関係ない。齢一桁から還暦過ぎのじいさんまで来ているそうだ。
「はい、お義母様から、読み書き計算が出来るようななれば、職探しの選択肢がたくさん出来て、夢が広がるって」
エミリアが楽しそうに話している。自分はその姿を見ているだけで幸せだ。
そこにモーリスがやってきて、耳打ち。
はあ、来たか。
「エミリア、すまない、ちょっと所用ができた。しばらくここを開けるが、父上と母上がいるから心配ないからね」
「えっ? バルド様、どちらに?」
「東の森にドラゴンが出た。討伐に行ってくる」
「え?」
さー、とエミリアの顔色が悪くない。
「どうしたエミリア?」
「だって、だって、ドラゴンなんて…………」
ぷるぷると震えるエミリア。
ああ、確か何年か前に、ここではない別の地域でドラゴンが出た。かなりの死傷者が出て、小さな村が壊滅状態だったはず。
エミリアは、恐いんだな。
自分はエミリアの前に膝をつく。
「エミリア、何の心配はないよ。ここにドラゴンを近付けたりしないから」
ぷるぷるとエミリア。どうしたんだ?
「ご主人様、エミリア様はご主人様の身を案じておられるんです?」
なぜ? 自分で言うのもなんだか、かなり丈夫だぞ。
「エミリア様が、ご主人様が、鋼より硬い身体だとはご存知ありませんよっ」
「あ、そうか」
自分が異常だと自覚がなかった。通常の人間は、脆いんだった。
「エミリア、もしかして、自分の心配をしてくれているのか?」
こくん、と頷くエミリア。な、な、な、なんて優しいんだっ。木槌で殴られても平気な顔して、殴った木槌を粉砕するような頭なのに。
エミリアと会える短い時間を大事にする。できるだけ、朝食を一緒に取り、領主教育状況次第で夕食を一緒に取る。エミリアのテーブルマナーは、10歳の伯爵令嬢としてのそれとしてはギリギリ妥協点だったそうだが、母の教えがいいのか、順調に進んでいる。時折、マナー無視の休息日を設けている。これが自分にしたら助かる、実は自分はテーブルマナーが大の苦手、誰かと会食なんて基本的にしないし、晩餐会にも出ない、何より平均的成人男性の五倍を食べるので、マナーもへったくれもない。骨付き肉なんて、手掴みで食べては、母の扇を何本折ったか。だが、エミリアが頑張っているんだ、自分も頑張らないと。
今も大事なエミリアとの時間だ。
「バルド様、今日はお義母様の学舎にアマリアと行ってきました」
「ああ、母上の。どうだった?」
「たくさんの方がいて、中にはバルド様より歳上の方もいらっしゃいました」
「そうだな。母上は学びたいと言う姿勢があれば、歳も性別も関係ないといっているからな」
母上のやっている学舎は、年齢性別関係ない。齢一桁から還暦過ぎのじいさんまで来ているそうだ。
「はい、お義母様から、読み書き計算が出来るようななれば、職探しの選択肢がたくさん出来て、夢が広がるって」
エミリアが楽しそうに話している。自分はその姿を見ているだけで幸せだ。
そこにモーリスがやってきて、耳打ち。
はあ、来たか。
「エミリア、すまない、ちょっと所用ができた。しばらくここを開けるが、父上と母上がいるから心配ないからね」
「えっ? バルド様、どちらに?」
「東の森にドラゴンが出た。討伐に行ってくる」
「え?」
さー、とエミリアの顔色が悪くない。
「どうしたエミリア?」
「だって、だって、ドラゴンなんて…………」
ぷるぷると震えるエミリア。
ああ、確か何年か前に、ここではない別の地域でドラゴンが出た。かなりの死傷者が出て、小さな村が壊滅状態だったはず。
エミリアは、恐いんだな。
自分はエミリアの前に膝をつく。
「エミリア、何の心配はないよ。ここにドラゴンを近付けたりしないから」
ぷるぷるとエミリア。どうしたんだ?
「ご主人様、エミリア様はご主人様の身を案じておられるんです?」
なぜ? 自分で言うのもなんだか、かなり丈夫だぞ。
「エミリア様が、ご主人様が、鋼より硬い身体だとはご存知ありませんよっ」
「あ、そうか」
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「エミリア、もしかして、自分の心配をしてくれているのか?」
こくん、と頷くエミリア。な、な、な、なんて優しいんだっ。木槌で殴られても平気な顔して、殴った木槌を粉砕するような頭なのに。
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