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エミリアとベルド伯爵家の実情③

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 レミリア・ゼズには、エルゴスとの結婚前に懇意にしている異性はいなかった。ゼズ子爵は、家庭事情で爵位返上待ったなしの状態で、長女のレミリアが働きに出て子爵家を支えていた。ゼズ子爵には跡取りとなる男児がいたが、レミリアとは歳が7つ離れていた。しかも、その男児は後妻の子。だが、それでも家族の仲は悪くなかったようだ。後妻とレミリアはまるで姉妹のように仲が良く、歳が離れていた生まれた弟妹達をレミリアは可愛がっていた。ただ、このレミリアの父親がいかんやつで、母親べったりマザコンだ。レミリアを生んだ妻に、母親が男児を生まなければ追い出せと言われて盲目にしたがい、離縁。当然向こうも黙ってない。跡取りが男児でなくてはならないなんて、時代錯誤もいいところだ。しかも、男児を望んでいたのに、レミリアだけは引き取ると言ったものだから、壮絶な裁判になった。結果ゼズ子爵は相当額の慰謝料を支払い、レミリアに対する態度を改めることや、冷遇しないことを、特殊な制約魔法を使い宣誓。この慰謝料や裁判がのちのちゼズ子爵の首を締めていった。血筋となる嫡子を生んだ妻を、性別の理由で離縁、しかも望んでいないといいながら子供だけは置いていけといったゼズ子爵家は信頼がた落ちだ。徐々にゼズ子爵が困窮するなか嫁いできたのは、元レミリアの母親のメイドだ。どうもかなり豪傑な性格らしく、嫁いできたのはレミリアの為だと、真っ正直からいい放ち、ゼズ子爵親子と真っ向対決を日々繰り返していたそうだ。レミリアは後妻に守られながら成長、生まれた弟妹も可愛がっていた。貴族学園の成績もよく、狭き門の奨学金を得ていた。エミリアの母親だから、美しい女性だが、どうも父親が祖母にべったりなのを見て、男性には距離を置いていた。貴族学園卒業間近に後妻が縁談を持ちかけた頃、ゼズ子爵の母親が亡くなり、それによりゼズ子爵は酒浸りの生活となった。暴力まで奮い出した。ゼズ子爵家にはレミリア嬢、そしてまだ幼い弟妹達がいたため、使用人達が必死に守っていた。何度も通報された挙げ句に、ゼズ子爵は飲み屋の帰りに溝に落ちて冷たくなっていた。
 レミリア嬢の縁談はなくなり、没落寸前までに落ちた。このままでは弟妹達の進学まで諦めなくてはならない。それをどうにかしようと奮起したのがレミリア嬢だ。学園卒業して直ぐにベルド伯爵の不動産管理会社に就職。もともと父親の性で男性不振気味のレミリア嬢だったが、才覚があり、会社でも一目置かれていた。そこに目をつけられたわけだ。
 美しく賢く、頼りないエルゴスに変わり、伯爵家を回すだけの手腕があると結婚を持ち込まれた。
 レミリア嬢は最初は渋ったそうだ。年齢もそうだが、やはり男性不信、そして実際エルゴスは不義理を働き、元婚約者から捨てられている。
 たが、諦めなかったのが前ベルド伯爵。ゼズ子爵への返済不要の多額の資金を支度金として提出したため、レミリア嬢はまだ幼い弟妹達の為に首を縦に振った。
 その先代ベルド伯爵は、レミリア嬢がなくなった半年後に亡くなった。
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