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エミリアとベルド伯爵家の実情①
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数日かけて記憶を掘り起こす。
それをすべて時系列で整理。
「早急に対応するべきは西の街道だな」
「私、ナギア夫人に手紙を書きますわ。地質学ではミュンヘナー王国ではトップですから」
「だが、夫人はもう第一線を退いたのでは?」
「もう問題ありませんわ。夫人が退いた理由のお姑様の介護問題が去年片付いたと聞いております」
「なら、君に任せるよ」
両親が次々に指示を出す。
てきぱきとそれの処理を行うセバスとマギー。
その間にも、エミリアと良好な関係を築こうと、周囲のフォローを得ながら、何とかやっている。街も案内した。髪を切ったせいか、誰にも自分がバルド・フォンだと気付かれなかった。
「可愛い娘さんですねー」
なんて、何度言われたか。
エミリアに必要な物も揃い、マチル先生とも面会もした。
母がエミリアの学力を計り、適切な家庭教師の手配もして、順調に進んでいる。
結婚式から一ヶ月後。
ベルド伯爵家を調べた『影』からの報告書に目を落とす。
あらかた分かっていたが、やっぱりカスだな、あの現在のベルド伯爵夫妻は。
ベルド伯爵家は、まだ伯爵家としてはエルゴス・ベルドの祖母が始まりだ。現バージェット侯爵の実姉だ。現バージェット侯爵、ウルゴ・バージェット侯爵と、エルゴス・ベルドの祖母、マルゴ・ベルドはとても良好な関係で、それでエルゴスが婚約者に愛想をつかされた時に、エミリアの母親、レミリア・ゼズ子爵令嬢との中を取り持った。その時点で、後妻のナタリー・ニールプ子爵令嬢と関係があった。
どうやら、学生時代からナタリー・ニールプと関係があり、もともとの婚約者にもその関係がバレたのも大きかった。なんとナタリー・ニールプも婚約者がいて、エルゴスと同時期に婚約破棄となっていた。なら、始めっからエルゴス・ベルドとナタリー・ニールプを一緒にさせれば、と自分は思ったが、そうなるとエミリアが生まれない。当時のベルド伯爵もニールプ子爵も、この二人の婚約は認めなかった。貴族は血筋を重んじる。正当な婚約者がいながら、他の異性に現を抜かす。貞節を重んじるには、その血筋を重んじる貴族に課せられた責務だ。特に女性は、婚約者以外の他と通ずるなんて言語道断だ。そんな女から生まれた子供を、嫁ぎ先の血筋を引いているかなんて、当然疑われるに決まっている。
結局、エルゴスとナタリーの結婚は認められず、ナタリーはニールプ子爵家から、他の男と通じたふしだらな娘の烙印を押し、家から放逐。ただ、ナタリーはニールプ子爵家では溺愛されており、親戚の手前放逐したが、僅かに援助を行っていた。そして、エルゴスの愛人になり、何とナタリーは働かずに生活できていた。
エルゴスは本家のバージェット侯爵が見つけてきたレミリア・ゼズ子爵令嬢を拒絶。レミリア・ゼズはベルド伯爵家が運営している不動産管理会社で優秀な社員として勤めていた。そこをバージェット侯爵と、当時のベルド伯爵が目を付けた。ただ、エルゴスより6つも年上で、貴族令嬢としては完全に行き遅れだった。エルゴスは拒否したそうだが、両親とバージェット侯爵に、抱えている不動産管理業務が一定以上出来れば、ナタリーとの結婚を認めると言われたが、結果散々だった。いい結果を出そうと、うまい話にのり、ベルド伯爵家の家屋敷、管理している貴重な収入源の別荘地のレンタルコテージを手放す寸前になった。それを止めたのがレミリア・ゼズだった。
それをすべて時系列で整理。
「早急に対応するべきは西の街道だな」
「私、ナギア夫人に手紙を書きますわ。地質学ではミュンヘナー王国ではトップですから」
「だが、夫人はもう第一線を退いたのでは?」
「もう問題ありませんわ。夫人が退いた理由のお姑様の介護問題が去年片付いたと聞いております」
「なら、君に任せるよ」
両親が次々に指示を出す。
てきぱきとそれの処理を行うセバスとマギー。
その間にも、エミリアと良好な関係を築こうと、周囲のフォローを得ながら、何とかやっている。街も案内した。髪を切ったせいか、誰にも自分がバルド・フォンだと気付かれなかった。
「可愛い娘さんですねー」
なんて、何度言われたか。
エミリアに必要な物も揃い、マチル先生とも面会もした。
母がエミリアの学力を計り、適切な家庭教師の手配もして、順調に進んでいる。
結婚式から一ヶ月後。
ベルド伯爵家を調べた『影』からの報告書に目を落とす。
あらかた分かっていたが、やっぱりカスだな、あの現在のベルド伯爵夫妻は。
ベルド伯爵家は、まだ伯爵家としてはエルゴス・ベルドの祖母が始まりだ。現バージェット侯爵の実姉だ。現バージェット侯爵、ウルゴ・バージェット侯爵と、エルゴス・ベルドの祖母、マルゴ・ベルドはとても良好な関係で、それでエルゴスが婚約者に愛想をつかされた時に、エミリアの母親、レミリア・ゼズ子爵令嬢との中を取り持った。その時点で、後妻のナタリー・ニールプ子爵令嬢と関係があった。
どうやら、学生時代からナタリー・ニールプと関係があり、もともとの婚約者にもその関係がバレたのも大きかった。なんとナタリー・ニールプも婚約者がいて、エルゴスと同時期に婚約破棄となっていた。なら、始めっからエルゴス・ベルドとナタリー・ニールプを一緒にさせれば、と自分は思ったが、そうなるとエミリアが生まれない。当時のベルド伯爵もニールプ子爵も、この二人の婚約は認めなかった。貴族は血筋を重んじる。正当な婚約者がいながら、他の異性に現を抜かす。貞節を重んじるには、その血筋を重んじる貴族に課せられた責務だ。特に女性は、婚約者以外の他と通ずるなんて言語道断だ。そんな女から生まれた子供を、嫁ぎ先の血筋を引いているかなんて、当然疑われるに決まっている。
結局、エルゴスとナタリーの結婚は認められず、ナタリーはニールプ子爵家から、他の男と通じたふしだらな娘の烙印を押し、家から放逐。ただ、ナタリーはニールプ子爵家では溺愛されており、親戚の手前放逐したが、僅かに援助を行っていた。そして、エルゴスの愛人になり、何とナタリーは働かずに生活できていた。
エルゴスは本家のバージェット侯爵が見つけてきたレミリア・ゼズ子爵令嬢を拒絶。レミリア・ゼズはベルド伯爵家が運営している不動産管理会社で優秀な社員として勤めていた。そこをバージェット侯爵と、当時のベルド伯爵が目を付けた。ただ、エルゴスより6つも年上で、貴族令嬢としては完全に行き遅れだった。エルゴスは拒否したそうだが、両親とバージェット侯爵に、抱えている不動産管理業務が一定以上出来れば、ナタリーとの結婚を認めると言われたが、結果散々だった。いい結果を出そうと、うまい話にのり、ベルド伯爵家の家屋敷、管理している貴重な収入源の別荘地のレンタルコテージを手放す寸前になった。それを止めたのがレミリア・ゼズだった。
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