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会議と味方⑥

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「前々からベルド伯爵に対して、バージェット侯爵は思うところはあったのよ。学生時代から不出来で婚約者から愛想が着かされて破棄されて、前伯爵が困っていたのを、バージェット侯爵が、レミリア嬢を見込んで縁を繋いだのに、そのエミリア嬢の母親、レミリア様と婚姻中に、あのフランシスをこさえたのがきっかけで、エルゴス・ベルドはバージェット侯爵から見放されていたのよ。まだ、エミリア嬢が幼いから繋ぎで伯爵に着いていたけど、成人と共に伯爵位から引きずり下ろすつもりだったのよ」

 へー。

「興味なさそうね」

「はい、ないですね。その内自滅させようと思っていますから」

 エミリアが案じていたベルド伯爵家の使用人達をどうにかしてやって、エミリアの憂いがなくなれば、潰せばいい。そうなれば、エミリアは救える。問題は、フランシスを操っていた奴が、別の令嬢を使えばベルギッタ侯爵令嬢達を救えないが。別の手段を考える必要がある。

「殺しはしませんよ。ベルギッタ侯爵が、誰も死なすなって言ってました。命は取りませんが、やりようはあるでしょう?」

「本当に変わったわね。あなたが物理に頼らないなんて」

「ですから、やり方教えてください」

 きっと自分では思い付かないエグイやり方を知っているはず。
 自分的に真面目に聞いているつもりなのに、母はあきれ顔。

「そんなことあなたは学ばなくて結構、教える身にもなって頂戴。あなたの役目はエミリア嬢を大事にすればいいの。甘やかして、たくさん笑顔にしなさい」

「え、いいんですか?」

「そうよ。同時に領主教育を開始するわよ。それから、ある程度の情報が集まるまで、ベルド伯爵はしばらく泳がせるわ。ベルド伯爵とナンシー夫人はフランシスをどうにかして跡継ぎに着けたいようだったそうだから、そこを狙われるんじゃないかしら」

 どういう事だろう?

「フランシスはベルド伯爵には着けないのでは?」

「バージェット侯爵はそのつもりだろうけど。もし、よ、もしも、よ、侯爵より高位な方にフランシスが見初められたら?」

「あっ、だからカシアン王子に取り入った」

「そう」

 母が音もなく、カップを置く。

「王子を篭絡すれば、フランシスがベルド伯爵位につける可能性があるわ。国王から特別に許可が得られる可能性があるわ、あくまで可能性よ」

「可能性、ですか」

「ほぼ不可能よ。フランシス達はそれにいいように使われ、事を起こしたんじゃないかしら」

 なるほどなあ。
 最後のサンドイッチを食べる。燻製された鳥の肉と、甘酢に浸けられた玉ねぎのスライスが少し入っている。

「『影』の指示はしばらく私が行います。よろしいですか旦那様?」

 母が父に確認。

「構わないよ。君に任せた方がいいだろうからな」

「ありがとうございます旦那様」

 ちゃきん。

「さ、バルド、今風の感じになりなさい」
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