29 / 51
会議と味方③
しおりを挟む
「あ、やっぱり」
そうじゃないかと思っていた。
自分が王家は男児をすべて切り殺してしまった。城に詰めていたかなりの数の騎士達もだ。
それに、ミュンヘナー王国でも大貴族のベルギッタ侯爵、そしてうちフォン辺境伯、マトデ将軍家まで敵に回した。
それだけではない、フランシスに熱を挙げて、それぞれの婚約者を蔑ろにして、ありもしない罪をでっち上げた。フランシスの虐められた、この言葉だけで、エミリア達を拘束し地下牢に。本来ならあり得ない。エミリアはフォン辺境夫人だし、レイナ・ベルギッタ侯爵令嬢は跡取り娘。マトデ将軍の娘だって、溺愛されていた。そんな彼女達を証言だけで地下牢なんて入れるか? 事情を聞くために、城の客間に国王達が帰って来るまで軟禁か、自宅待機だろうに。
地下牢に繋ぎ、女性の尊厳を踏みにじった。しかも、複数の人間を、わざわざけしかけて。
王家の威信うんぬんではない。
確実に暴動が起きる。
「そんなこと、貴族学校に通えば、少し考えれば分かるでしょう。しかも、カシアン王子は王族。自分とレイナ嬢との婚約は、王家が望んだこと。ベルギッタ侯爵との強いパイプ作りのための婚約よ。王族なら、理解しているはず」
貴族での結婚は、政略が多いが、それによる恩恵もある。我々貴族は、いい暮らしができるのは、それを支える人達がいるから。その人達の生活を守るための結婚なのだ。
「もしかしたらですが、フランシスは誰かにいいように手駒にされたのではないかと、思っています」
「もしかしたらでもなくそうでしょうね。ベルド伯爵にそんな知力はないでしょう。問題は、誰がフランシスやベルド伯爵を誑かしたかよ。そして、何故それが見逃されていたか、よ」
言わんとする事は分かる。
カシアン王子がフランシスに傾倒したのなら、誰かがストッパーをしたはず。まともなやつなら、地下牢になんかエミリア達を拘束させない。
「それに留守を預かっていた第二王子もだ。確かにニシアル殿下は幼い頃はよく体調は崩されたが、今は騎士団の訓練にも参加しているほどだぞ。バルド、ニシアル殿下の最後の様子は?」
父が聞いてくる。
「あー、えーっと」
頭に血が登り過ぎて、記憶が。
「えーっと、確か、あ、そうだっ」
思い出した。
外は阿鼻叫喚な様子なのに、ニシアル王子は、ベッドの上で微動だにしなかった。虚ろな目、干からびた唇、青ざめた顔、枕周囲にはずいぶん抜けた髪が散らばっていた。微かに開いた口から覗いた口の中は、血がこびりついていた。剣を突き刺しても、微動だにしなかった。そうだ、ニシアル王子から噴き出した血が、妙な臭いがした。鉄臭いより先に来た臭い。甘ったるい臭い。
「はあ、ニシアル王子は、毒を盛られていたのね」
母が自分の説明を聞いてため息ついた。
そうじゃないかと思っていた。
自分が王家は男児をすべて切り殺してしまった。城に詰めていたかなりの数の騎士達もだ。
それに、ミュンヘナー王国でも大貴族のベルギッタ侯爵、そしてうちフォン辺境伯、マトデ将軍家まで敵に回した。
それだけではない、フランシスに熱を挙げて、それぞれの婚約者を蔑ろにして、ありもしない罪をでっち上げた。フランシスの虐められた、この言葉だけで、エミリア達を拘束し地下牢に。本来ならあり得ない。エミリアはフォン辺境夫人だし、レイナ・ベルギッタ侯爵令嬢は跡取り娘。マトデ将軍の娘だって、溺愛されていた。そんな彼女達を証言だけで地下牢なんて入れるか? 事情を聞くために、城の客間に国王達が帰って来るまで軟禁か、自宅待機だろうに。
地下牢に繋ぎ、女性の尊厳を踏みにじった。しかも、複数の人間を、わざわざけしかけて。
王家の威信うんぬんではない。
確実に暴動が起きる。
「そんなこと、貴族学校に通えば、少し考えれば分かるでしょう。しかも、カシアン王子は王族。自分とレイナ嬢との婚約は、王家が望んだこと。ベルギッタ侯爵との強いパイプ作りのための婚約よ。王族なら、理解しているはず」
貴族での結婚は、政略が多いが、それによる恩恵もある。我々貴族は、いい暮らしができるのは、それを支える人達がいるから。その人達の生活を守るための結婚なのだ。
「もしかしたらですが、フランシスは誰かにいいように手駒にされたのではないかと、思っています」
「もしかしたらでもなくそうでしょうね。ベルド伯爵にそんな知力はないでしょう。問題は、誰がフランシスやベルド伯爵を誑かしたかよ。そして、何故それが見逃されていたか、よ」
言わんとする事は分かる。
カシアン王子がフランシスに傾倒したのなら、誰かがストッパーをしたはず。まともなやつなら、地下牢になんかエミリア達を拘束させない。
「それに留守を預かっていた第二王子もだ。確かにニシアル殿下は幼い頃はよく体調は崩されたが、今は騎士団の訓練にも参加しているほどだぞ。バルド、ニシアル殿下の最後の様子は?」
父が聞いてくる。
「あー、えーっと」
頭に血が登り過ぎて、記憶が。
「えーっと、確か、あ、そうだっ」
思い出した。
外は阿鼻叫喚な様子なのに、ニシアル王子は、ベッドの上で微動だにしなかった。虚ろな目、干からびた唇、青ざめた顔、枕周囲にはずいぶん抜けた髪が散らばっていた。微かに開いた口から覗いた口の中は、血がこびりついていた。剣を突き刺しても、微動だにしなかった。そうだ、ニシアル王子から噴き出した血が、妙な臭いがした。鉄臭いより先に来た臭い。甘ったるい臭い。
「はあ、ニシアル王子は、毒を盛られていたのね」
母が自分の説明を聞いてため息ついた。
206
お気に入りに追加
188
あなたにおすすめの小説

子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。


罪なき令嬢 (11話作成済み)
京月
恋愛
無実の罪で塔に幽閉されてしまったレレイナ公爵令嬢。
5年間、誰も来ない塔での生活は死刑宣告。
5年の月日が経ち、その塔へと足を運んだ衛兵が見たのは、
見る者の心を奪う美女だった。
※完結済みです。

婚約者の不倫相手は妹で?
岡暁舟
恋愛
公爵令嬢マリーの婚約者は第一王子のエルヴィンであった。しかし、エルヴィンが本当に愛していたのはマリーの妹であるアンナで…。一方、マリーは幼馴染のアランと親しくなり…。

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。

元婚約者が「俺の子を育てろ」と言って来たのでボコろうと思います。
音爽(ネソウ)
恋愛
結婚間近だった彼が使用人の娘と駆け落ちをしてしまった、私は傷心の日々を過ごしたがなんとか前を向くことに。しかし、裏切り行為から3年が経ったある日……
*体調を崩し絶不調につきリハビリ作品です。長い目でお読みいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる