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今、排するべきか?⑨
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エミリアが幸せらそうに食事をしている。
前回、ベルド伯爵家での待遇をエミリアの口から聞いたのは、ほんの触りだ。
母親、そして先代のベルド伯爵夫妻が健在の頃は、まともに食事を取っていたそうだが、先代のベルド伯爵夫妻と母親が立て続けてなくなってから、継母達が来てからエミリアは疎外された。
それでもエミリアがまともに育ったのは、ベルド伯爵家の使用人達のおかげだ。エミリアは詳しくは話さなかったが、ベルド伯爵家に残った彼らを案じていた。
「エミリア、美味しいかい? お口に合ったかな?」
「はいっ、とっても美味しいですっ」
心配したが、エミリアは朝食を全て食べきった。幸せそうに笑うエミリアの後方の植え込みから、両親がプラカードを出している。
頼むから、やめて欲しい、いい歳してるんだから。
「エミリア、今日なんだか、これから仕立て屋が来る」
「仕立て屋?」
こてん、と首を傾げるエミリア。
「ああ、足りないだろう?」
向こうがある程度準備すると言っていたが、交渉した両親がベルド伯爵家でのエミリアの待遇を知らないわけない。だが、念のために、準備した部屋着と寝間着が役に立つとは。
「で、でも、こんなに素敵なお洋服があるのに」
ん? エミリアの様子がおかしい。僅かにだが、強ばった顔だ。
すると、母が新しいプラカードを出す。
「エミリア、私が準備したいんだ? ダメだろうか?」
「そんなことないですっ、でもっ、お部屋にはまだお洋服あるしっ」
「エミリア」
そっと、エミリアの肩に触れる。びくっ、と震えるエミリア。
「どうか、君にドレスを贈らせてもらうないだろうか? 君を妻として迎え入れたのに、ドレスの一枚も贈らない甲斐性なしにしないでおくれ」
「バルド様…………」
ぽわあ、と赤くなるエミリア、小さく、はい、と頷いてくれた。
次のプラカードが提示される。
「とりあえず、不足分を数着。それから、エミリア、君を我が領を案内したいんだ。その為の外歩き用をまず一着だな。準備出来たら、君を連れていきたい場所が沢山あるんだ」
「はい、バルド様」
花丸のプラカードが掲げられる。
「それからエミリア、これから私は両親と小難しい話をしなくてはならない。仕立て屋が終わったら、休んでもいいし、屋敷内をゆっくり見て回るといい」
「はい。あのバルド様、私、お、お義父様とお義母様に、朝のご挨拶も出来ていません」
一応、別館で休んでいる体裁なんだが。それに一応新婚なわけだ、義理になる両親は朝は遠慮するもんだ。
エミリアの後ろの植え込みから、両親が高速移動開始。何やってんだよ。
「別館で休んでいるんだよ。まあ、歳だし」
共に五十を過ぎているけどな。
「そ、そうなんですか? お疲れなんですね」
優しいなあ、エミリアは。なんで前回の自分は、こんなに優しいエミリアを無下にしたんだ?
「ご主人様、大旦那様と大奥様です」
と、セバス。
分かっているよ、さっきまでそこの植え込みにいたんだから。
慌てて、エミリアが椅子から降りてる。自分も椅子から立ち上がると、両親がテラスに。さっきまで植え込みからプラカードを出していた両親が、今来ました、と言った顔でやってきた。
前回、ベルド伯爵家での待遇をエミリアの口から聞いたのは、ほんの触りだ。
母親、そして先代のベルド伯爵夫妻が健在の頃は、まともに食事を取っていたそうだが、先代のベルド伯爵夫妻と母親が立て続けてなくなってから、継母達が来てからエミリアは疎外された。
それでもエミリアがまともに育ったのは、ベルド伯爵家の使用人達のおかげだ。エミリアは詳しくは話さなかったが、ベルド伯爵家に残った彼らを案じていた。
「エミリア、美味しいかい? お口に合ったかな?」
「はいっ、とっても美味しいですっ」
心配したが、エミリアは朝食を全て食べきった。幸せそうに笑うエミリアの後方の植え込みから、両親がプラカードを出している。
頼むから、やめて欲しい、いい歳してるんだから。
「エミリア、今日なんだか、これから仕立て屋が来る」
「仕立て屋?」
こてん、と首を傾げるエミリア。
「ああ、足りないだろう?」
向こうがある程度準備すると言っていたが、交渉した両親がベルド伯爵家でのエミリアの待遇を知らないわけない。だが、念のために、準備した部屋着と寝間着が役に立つとは。
「で、でも、こんなに素敵なお洋服があるのに」
ん? エミリアの様子がおかしい。僅かにだが、強ばった顔だ。
すると、母が新しいプラカードを出す。
「エミリア、私が準備したいんだ? ダメだろうか?」
「そんなことないですっ、でもっ、お部屋にはまだお洋服あるしっ」
「エミリア」
そっと、エミリアの肩に触れる。びくっ、と震えるエミリア。
「どうか、君にドレスを贈らせてもらうないだろうか? 君を妻として迎え入れたのに、ドレスの一枚も贈らない甲斐性なしにしないでおくれ」
「バルド様…………」
ぽわあ、と赤くなるエミリア、小さく、はい、と頷いてくれた。
次のプラカードが提示される。
「とりあえず、不足分を数着。それから、エミリア、君を我が領を案内したいんだ。その為の外歩き用をまず一着だな。準備出来たら、君を連れていきたい場所が沢山あるんだ」
「はい、バルド様」
花丸のプラカードが掲げられる。
「それからエミリア、これから私は両親と小難しい話をしなくてはならない。仕立て屋が終わったら、休んでもいいし、屋敷内をゆっくり見て回るといい」
「はい。あのバルド様、私、お、お義父様とお義母様に、朝のご挨拶も出来ていません」
一応、別館で休んでいる体裁なんだが。それに一応新婚なわけだ、義理になる両親は朝は遠慮するもんだ。
エミリアの後ろの植え込みから、両親が高速移動開始。何やってんだよ。
「別館で休んでいるんだよ。まあ、歳だし」
共に五十を過ぎているけどな。
「そ、そうなんですか? お疲れなんですね」
優しいなあ、エミリアは。なんで前回の自分は、こんなに優しいエミリアを無下にしたんだ?
「ご主人様、大旦那様と大奥様です」
と、セバス。
分かっているよ、さっきまでそこの植え込みにいたんだから。
慌てて、エミリアが椅子から降りてる。自分も椅子から立ち上がると、両親がテラスに。さっきまで植え込みからプラカードを出していた両親が、今来ました、と言った顔でやってきた。
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